国内最大級の“内陸直下型地震” 名古屋市内でも「震度7相当」の揺れ 地盤の違いでわかれた被害【濃尾地震】

日本で震度7を観測した地震は能登半島地震も含め、7回。しかし、134年前に名古屋でも「震度7相当」の揺れが。それが1891年10月の濃尾地震です。この地震は大量の被害写真が残された最初の地震と言われ、写真から私たちへの教訓が見えてきました。
のどかな風景の中に現れた、崖のような断層。地面を約6メートルも隆起させた濃尾地震はマグニチュード8.0、国内最大級の内陸直下型地震です。
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岐阜県本巣市の震源から約70キロ離れた名古屋でも「震度7相当」の揺れで190人が死亡しました。中村区にある住宅は、当時の農家では一般的な構造で倒壊は免れましたが、いまも濃尾地震の痕跡が。
(この家に住む 筧清澄さん)「(床下に)結構深い地割れができていた、針金が30センチくらい突き刺さった」
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明治中期に起きた濃尾地震は、大量の写真で被害が記録された最初の地震でもあります。写真から濃尾地震の被害を分析する名古屋大学の西澤泰彦教授と、名古屋市内をめぐりました。(佐藤楠大アナ)「ここ、名古屋市熱田区は濃尾地震と何か関係のある場所ですか?」(名古屋大学 西澤泰彦教授)「1か所で亡くなった方の数を考えると、被害が1番大きな場所」
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名古屋市内では、当時最新だった紡績工場が地震で崩れ、39人が下敷きになって死亡しました。当時の写真を見てみると。(佐藤アナ)「大きく建物が倒れてしまっている。レンガ造りですかね、手前にはレンガ一つ一つが見える」
文明開化の象徴、レンガ造りの倒壊は大きな衝撃を与えました。
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そして、中区栄の広小路通り沿いで撮影された写真は…
(佐藤アナ)「これもレンガ造りの建物ですかね。大きく2階の部分が壊れて、つぶれてしまっているのがみられる」地震の4年前に建てられた「名古屋郵便電信局」が倒壊し、ここでも4人が死亡しました。しかし。(西澤教授)「こういう写真を見ると、レンガ造りの建物が地震に弱いと勘違いする。実際は、レンガ造りの建物で愛知県で被災したのはわずかに7棟。あと8万棟くらいの木造の建物が被災」
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当時の一般住宅はほぼすべて木造。名古屋市内で倒壊したのは、約1250棟にのぼります。木造の建物の被害を伝える写真は熱田神宮の参道近くで撮影されました。(佐藤アナ)「家があったのか、わからないくらい跡形もなくつぶれてしまっている」
しかし、この写真をよく見ると…(佐藤アナ)「写真の半分より上はほぼ残っている」(西澤教授)「南側が緩い地盤、北側は熱田神宮につながる固い地盤」(佐藤アナ)「線が引けそうなくらい境目がはっきりしている。地盤の違いだけで、ここまでくっきり建物が壊れる壊れないが分かれるのはすごい」
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木造の建物を倒壊から守った「地盤の強さ」。それは、巨大な木造建築・名古屋城にも当てはまることでした。地震のあとの写真を見てみると…(西澤教授)「無傷ではないが、倒壊するような状態ではない。城の敷地は熱田台地という地盤の良い台地の上にある」
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名古屋城天守閣は地盤の良さに加え、正方形に近いバランスの良い構造や、厚い壁といった要素で、倒壊を免れたと考えられています。
こうした状況に当時の人たちは…(西澤教授)「木造建築が被災して、人がたくさん亡くなったのは非常に大きなダメージだった。普通の人が住んでいる木造建築を耐震化しないといけないと気付いて耐震基準を作る動きにつながっている」
濃尾地震をきっかけに動き始めた“耐震化”。その名残は、濃尾地震を耐えた愛知県一宮市の建物に。当時の宿場町にあった「湊屋文右衛門邸」です。この建物は低い構造や太い柱や梁、それに地盤の強さで倒壊を免れたとみられています。濃尾地震の後に施された「対策」は1階の玄関近くにありました。(西澤教授)「この戸は特別な戸、筋交い」
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木造住宅は柱を組み合わせただけだと揺れに弱い一方で、筋交いを入れることで揺れに強さが増すことが知られています。こうした筋交いを使って耐震化を進めるきっかけになったのが、濃尾地震だったのです。(西澤教授)「難しいことをしなくても耐震化できる」しかし、その後、耐震化の基準が厳格化されても、震度7を記録した阪神・淡路大震災、そして能登半島地震でも住宅の倒壊で多くの命が失われました。南海トラフ巨大地震で予想される、名古屋市の最大震度は「7」。名古屋市は無料の耐震診断や、耐震工事に補助していますが、耐震化できていない建物は、5万4000戸以上にのぼります。
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(西澤教授)「濃尾地震の例をみても、全壊しなければある程度の命は救えた。全壊しないことを考えるのが重要」134年前の写真は、身近な場所の地盤を知り、耐震化の備えはできているか、私たちに問いかけています。CBCテレビ「チャント!」2024年8月5日放送より

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