『トップガン マーヴェリック』の地上波初放送が決まりましたが、同作序盤に搭乗する「ダークスター」はデザインの良さもあり、かなり印象に残る機体です。
映画『トップガン マーヴェリック』の劇中序盤、トム・クルーズ演じる主人公「マーヴェリック」が漆黒の機体に搭乗します。
同機は音速の5倍以上である「極超音速」に到達するために開発されたという設定の有人機で、劇中ではスクラムジェットエンジンによって、なんと最高速度マッハ10という驚異的な速さで飛行します。
中国の諜報機関も騙された!?『トップガン』に登場した “漆黒…の画像はこちら >>『トップガン マーヴェリック』に登場した「ダークスター」の機首部分(画像:ロッキード・マーチン)。
映画を見た人に強烈なインパクトを残すこの機体、名称は「ダークスター」といいます。一見すると、過去アメリカが開発した各種実験機をほうふつとさせる外観のため実在するように思えますが、実は映画のために作られた架空の機体です。とはいえ、極めてリアリティの高いデザインであることは間違いありません。
それもそのはず、同機の撮影用モックアップの製作には、軍用機の開発企業で知られるロッキード・マーチンの開発部門「スカンク・ワークス」が協力しているからです。
スカンク・ワークスは、最高速度マッハ3を出し実用機として世界最速のギネス記録を持つ偵察機SR-71「ブラックバード」や、世界初のステルス戦闘機F-117「ナイトホーク」を開発した部門です。スカンク・ワークスの『トップガン マーヴェリック』への協力はかなり本格的なもので、整備士、製造監督、実物モデルを作るエンジニアなど、まるで新型機を作るような布陣だったといわれています。
撮影用のモックアップとはいえ、トム・クルーズが乗り込むカットを撮る予定もあったため、実寸大の軍用機を想定したもので、細部もかなり作り込まれた精巧なものでした。そのため、携わったスタッフの実力も相まって製作風景は本当の実験機を開発するかのようだったとか。
その影響なのか、中国の諜報機関はこの機体を本物の新型機と誤認し、宇宙から偵察するために、撮影が行われていた海軍の兵器試験場に人工衛星のルートを変えたという逸話まであります。 この件に関しては、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー氏がWeb媒体のインタービューで話したこともあり「(中国の人工衛星が)この機体を撮影するために方向転換して別のルートに向かったって海軍から聞きました。本物だと思ったみたいです。それくらいリアルですからね」と話しています。
なお、2024年現在、同機はロッキード・マーチンが所有しており、一般公開は行われていません。ただ、アメリカ国内の航空祭や航空博物館のイベントなどで特別展示される機会はあるようです。