共和党のトランプ次期米大統領は、来年1月の新政権発足に向け高官人事の調整を本格化させた。
世界最強の軍事力を持つ米国の大統領にトランプ氏が復帰することで、沖縄の基地問題にどのような変化が生じるのか。
新政権の安全保障政策はまだ示されていないが、日本に対して軍備増強や防衛費増額を求める可能性が高いといわれる。
それが、沖縄の負担増に結び付く懸念がある。
トランプ政権は1期目の2019年、在日米軍駐留費の日本側負担(思いやり予算)について、4倍の大幅増を求めた。バイデン政権に替わり、微増で決着したものの、トランプ氏の再任後には27年度以降の負担を巡る交渉が始まる。
中国の軍備増強のスピードに対抗するため、日本も防衛力増強のスピードを加速するべきだと、次期政権入りに名前が挙がる側近は指摘している。
トランプ氏は「米国第一」を掲げ、安全保障においても2国間のディール(取引)を重視した対応を取るだろう。中国からの輸入品には関税を60%課すと主張、東アジアに新たな緊張をもたらす可能性がある。
米中対立がさらにエスカレートすれば、沖縄の基地機能が強化されかねない。中国などの弾道ミサイルの技術の発達で沖縄への基地の集中が脆弱(ぜいじゃく)化をもたらしている。県外へ分散し、危険性と過重な基地負担軽減の議論こそ始めるべきだ。
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日本の外交戦略と日米関係の在り方が問われる。
石破茂首相は、緊張が高まる東アジアや世界全体の平和と安定に向け、慎重なかじ取りが求められる。
トランプ氏がウクライナや中東の紛争でロシアやイスラエルに偏る政策を示した時、米追従ではなく、民主主義と法の支配という日本の立場を主張できる関係性と外交戦略が重要だ。
同時に、石破首相が意欲を示す日米地位協定改定も、沖縄側の考えを聞いた上で、取り組んでもらいたい。米軍基地と隣り合わせに住民が生活する沖縄では、米軍人らの犯罪や事故、環境問題は生活に直結する人権問題でもあるからだ。
玉城デニー知事は、辺野古新基地建設などの基地負担に関心を寄せてほしいとする談話を発表した。訪米で培った共和党関係者とのパイプなど、県もあらゆるルートで地域外交を進める必要がある。
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沖縄は戦後一貫して米国のアジア戦略を最前線で担い続けた。しかし「敵意に囲まれた基地は機能しない」。負担軽減は日米共通の認識であり、トランプ氏の剛腕で今こそ実現するべきた。
戦争を起こさない、起こさせないために何ができるか。米国は抑止力を増強するしかないという考えで、日本もこれに同調し、評価する国民が増えているのも確かだ。だが、軍拡競争を招くのは極めて危険である。抑止力は「対話による外交」が機能して初めて効果を発揮する。首脳同士の対話の窓口は常に開けておくべきである。