全国で注目の都市は? 不動産投資、値上がり益を狙えるエリアと選び方

国土交通省はは9月17日、2024年の基準地価を公表しました。そこで今回は地価上昇という観点から、不動産投資において注目のエリアはどこなのか、それぞれの目的に合わせてどのエリアを選ぶべきなのか、不動産投資サービスINVASEを運営する、不動産ナビゲーターの渕ノ上弘和さんが解説します。

○不動産投資のタイプによってエリアの選び方は変わる

まず、不動産投資には2タイプがあることを理解しておきましょう。一つは「自己居住用不動産投資」、ご自身で購入し自己居住用不動産として値上がり益・賃料収益相当額を自己消費するというスタイルです。

そしてもう一つは「賃貸用不動産投資」、購入した物件を賃貸に出し、値上がり益、賃料収入を得る方法です。

いずれも不動産の値上がり益は非常に重要ですが、ここでは地価上昇という観点から、注目のエリアがどこか、またそのエリアの中でご自身の目的に合わせてどのエリアを選ぶべきかについて、お話しします。
○不動産投資、注目のエリアは?

2024年の基準地価データによれば、「都道府県別対前年平均変動率」では三大都市圏で2.2倍、東京圏でも2.6倍と、大幅に地価が上昇している状況でないことは明確です。

また、「特徴的な地価動向が見られた各地点の状況」の住宅地にフォーカスし、基準地価上昇率順位一覧表と比較してみても、最高価格と上昇率が必ずしもリンクしていないことがわかります。

これは、30数年前のいわゆる”バブル”と異なり、「全ての土地評価が上がっている」状況ではないことが想定され、仮説としては著しい二極化が発生していることを示していると言えます。

そして、2009年からの賃料上昇率も含めて状況を見ると、やはり東京都区部はもちろん、大阪府大阪市、愛知県名古屋市にはフォーカスせざるを得ないでしょう。
○東京23区

東京エリアの再開発は東京駅近辺の再開発が既に完了している丸の内・大手町、現在進行形の八重洲、向こう20年間の計画が決定している日本橋はもちろん、東京駅~大井町の駅までのラインは虎ノ門等のエリアも含め、大規模開発には枚挙にいとまがないほどです。
それにも関わらず総合指標で見た際に賃料上昇率の順位が6位となっていることは違和感を禁じ得ないのが実際です。

そして「街」レベルで見た際、21位の代々木ですら7.9%しか賃料が上昇していないことを勘案すると、ここに表現されていない他エリアはかなり賃料上昇率が低いことが想定されます。つまり一部のエリアが全体を引き上げており、これは後述の大阪市、名古屋市も同様の状況であることが想定されます。

○大阪市

いわゆる「うめきた」のグランフロントまわりの再開発を軸に、福島区、北区等、南に向かい物件価格・賃料価格が伸びていることは新築物件等の動きをピックアップすると明確です。

ただ、直近の大阪万博及びまだ先が長い「なにわ筋線」、新大阪駅再開発と言ったインパクトが物件価格に影響を与えているか否かは明確に計りかねるのが実際です。

物件価格はそこに住む人が増える、そこに金銭的な価値を見出す方が増える等の条件があって初めて上昇します。再開発がそういった点に本当に影響を与えているのか……個別エリアごとに見ていく必要があります。

尚、余談ですが個人的には既に地下鉄路線が近隣にあるなにわ筋線のインパクト以上に、新大阪駅~十三駅を軸に展開される予定の「なにわ筋連絡線」に注目しています。10年以上のスパンでの発展になることは想定されますが、新大阪駅と十三駅の盛り上がりの可能性を感じさせます。
○名古屋市

地価としては好調なエリアが見えつつも、賃料は下がり続けています。今回の注目エリアは中区丸の内、千種区本山駅です。前者はオフィス系マンション住宅地、後者は交通アクセスが優れている住宅地と、比較的明確な強みがありますが、特に物件価格が上がっているエリアと、それ以外のエリア、そして需給のバランスが悪く供給過多となっているエリアが背後に控えており、賃料がマイナスになっているエリアが多くあることには注意が必要です。

これらの事象は全て「より細かいエリアでの2極化」「賃料の2極化」「自己居住用物件として人気のあるエリアの物件価格の上昇」に起因しています。この状況は、より一層投資ゲームを複雑にしています。

そもそも、日本の住宅政策は自己居住用物件購入を促す形で進んでおり、現状もそれは変わりません。そうすると賃料が上がっていないにも関わらず物件価格が上がる、という状況が「賃貸用不動産投資」とは違った観点から発生します。

これがバブルを発生させてしまう原因ともなるのですが、基本である「賃料」に立ち返り、賃料が上がっている、上がる可能性がある物件を選んでいただければそうそう負けることはありません。

尚、自己居住用物件としての人気と賃貸用不動産投資のバランスが比較的とれているのが東京湾岸エリアのタワーマンションであり、晴海フラッグをはじめとした新築物件のお祭り状況を生み出しています。
○どのエリアを選ぶべきか

物件価格の安定性、街の大きさ、人口動態、開発案件の数と規模、そして”わかりやすさ”を勘案すると、「東京」が圧倒的に強いと言えます。

土地(街)、建物、管理の観点から賃料を上げうる街を選ぶべきですが、大阪や名古屋等については、人口減少に比して主要エリアへアクセスするのに30分というエリアが多く、見た目の強さはあくまでスポットごとに限定されている傾向があります。

もちろん、エリア選定の大前提として、ご自身の目的をどのように設定するか、と言う課題があります。どれだけの期間保有し、どれだけのリスクをとり、どれだけの収益を上げたいのか、これが目的設定です。

この目的設定を行った上で、ご自身のお持ちの情報で街ごとの「ムラ」が見え、東京よりも値上がりする仮説設定がしやすい、という個々人の理由があれば各都市、いわんや郊外エリアを狙うのも、もちろん「アリ」です。

そのため2022年は博多を狙うトレンドが強かったのですが、現状では踊り場と言えるのではないでしょうか。

物件価格の安定性を考えると、街の大きさ、人口動態、開発案件の数と規模を勘案しても、東京にかなうものはないのが実際です。

ぜひ「自分の強いエリア」を今一度振り返ってみてください。

○渕ノ上弘和(ふちのうえ・ひろかず)/不動産ナビゲーター

2000年に立教大学法学部法学科卒業後、コンサルタントとしてECサイト運営会社を起業すると同時に不動産コンサルタントとしても業務を開始。区分所有建物の資産価値マネジメントに従事するため、2008年より住友不動産建物サービス株式会社、2013年より株式会社東急コミュニティーにて区分所有建物の共用部分・専有部分のマネジメントに従事した後、不動産の資産性を流通の側面から評価するために、2018年にコンドミニアム・アセットマネジメント株式会社の設立代表に就任。2022年2月より株式会社MFS不動産投資事業部執行役員として不動産投資総合プラットフォームサービス・INVASEの事業責任者に就任。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする