地方の宝を再発見 伝統食材の新たな可能性

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きょうは、昔からある「地域の特産物」を、新しい形に生まれ変わらせるというお話です。特に地方では高齢化や後継者不足の影響で、農業をやめる人が増えている状況ですが、そんな課題を解決しようという取り組みを取材しました。
まずは、山形県で果物の「柿」を育てている、1Blue(ワンブルー)株式会社の佐久間 麻都香さんに伺いました。
1Blue株式会社・佐久間 麻都香さん
干し柿を使った「エナジーバー」を開発しました。
手軽に栄養補給ができるスナックといいますか、お菓子のようなもので、アーモンドとか、クルミとかナッツ類を砕いて、ドライフルーツ=干し柿、さらに発芽玄米=お米の粉も入ってたりするので、
ギュッと凝縮されてるので、味は、噛めば噛むほど甘くなる。
農家さんは「なんだこれ?」って最初おっしゃってました。
でも最近はもうエナジーバーってわかって、「こんなおしゃれなものに入ってるんだね」みたいな、 「嬉しいの~いいの~」って言ってました。
佐久間さんがいる山形の庄内地方は「干し柿」が特産品。それを使って開発したのが「KAKI ENERGY BAR(カキエナジーバー)」。エナジーバーは、お腹が空いたときや元気がほしいときに食べるおやつのようなもの。朝ごはん替わりや、勉強で集中したいときに食べるとエネルギーを手軽に補給できます。
<「KAKI ENERGY BAR」。ゆずイチジク味(左)と、シートソルトチョコレート味(右)。砂糖不使用ですが、干し柿でほんのり甘い(税込350円)>
<しっとりやわらかい>
およそ2年前に売り出し始めて、現在は全国のナチュラルローソンなどで販売され始ています。
頼りになったのは、地域の柿農家の方々。水分が抜けすぎて固くなってしまった干し柿を、安価に提供してもらうことで、これまで売り物にならなかった固い干し柿が新しい価値を持つようになったそうです。
今では、毎月、6000~7000個作って販売していて、海外からも引き合いがきていて日本を飛び出す勢いだとか。
このような、地域の特産品の新たな魅力を引き出す取り組みは、ほかにもありました。それは「干し椎茸」です。宮崎県で「干し椎茸」の卸販売をしている、「杉本商店」の杉本 和英さんのお話。
「杉本商店」 杉本 和英さん
僕たち「干し椎茸」を扱ってるんですけど、今ですね「干し椎茸の粉」が非常によく売れてるんです。「九州産本格椎茸粉」っていう商品です。
残念なぐらい椎茸の味はしないんですよ、ペロッと舐めても。だから僕たちの中で「これは失敗した」と、「こんなもん売れるわけねえよ」と思ってアメリカに送ったら売れるわけですよ。実は僕ら大きな販売先っていうのはアメリカのAmazonなんですね。最初は確か200パックだったかな、送ったんですよアメリカのAmazonに。
で、販売しました。そしたら、1週間持たなかったですね。そしたらアメリカの展示会に行った時に、「私、あなたのコレ、いつも買ってるわよ」って人がやってきたんですよ。「どうやって使ってるんですか?」って聞いたら、「お肉にかけるのよ」っていうわけですよ。
全然椎茸の味しないのに、かけた方と、かけてない方は、別物のお肉になっちゃうんですよ。そっからですよ慌ててやり始めて、今ですね23カ国で販売をしてますね。
宮崎の高千穂地域でとれた、原木栽培の椎茸の「パウダー」が売れているそうです。
椎茸はアメリカでも「SHIITAKE」で通じるそうですが、手間のかかる原木栽培の椎茸は品質が高い分、お値段も高い。これが、アメリカで売れてます。
<「九州産本格椎茸粉」。40グラムで、税込およそ700円。日本のAmazonでも販売されています>
<お肉だけでなく、バニラアイスにも合うそうです。たしかにコクが増している気がする…>
お肉や魚、野菜、バニラアイスにかけると美味しくなる。椎茸の「うまみ成分」が、食材の美味しさをアップ。椎茸が持つ成分の「グアニル酸」などの効果だそうです。
日本では「干し椎茸」というと、前の晩から水に戻して煮物にしたりしますが、こうした料理をする家庭も減って、売り上げが低迷。レトルトカレーに入れてみたり試行錯誤したそうですが、「粉にするだけでこんなに売れるとは」と驚いていました。
じつは今回の取材時、杉本さんはニューヨークへ出張中だったんですが、最近はパウダーだけではない新しいニーズも出てきたということです。
「杉本商店」 杉本 和英さん
初めて行ったドイツの展示会で試食を出したてらですね「わ、すごい美味しい、何これ」って。
必ず言うのが「ミーティ」って言うんですよ。「お肉みたい」って言い方をするんですよ。「ああそうか、ベジタリアンの人がいるんだな」っていうことに気づいて、聞いたことはあっても僕らの田舎の界隈にはいないわけですよ。
で、その翌年のアメリカの展示会から「椎茸の煮物」を、鰹節を使わない、昆布と大豆それから干瓢で出汁を取って、それと椎茸の出汁を合わせてやるっていう作業なんですけど、まさに昨日から僕はそれを仕込みにここ(ニューヨーク)に来てるわけなんですけど、それでやったら大成功したんですね。大成功っていうかすごい人だかりになっちゃうんですよ展示会で。
やっぱり僕たち「椎茸屋なので椎茸として売ろう」とばかり考えてたんですけど、使い方なんてどうだっていいわけですよね。自由な発想でどんどんどんどん使う国が広がっていけば、作り続けられるだろうなと思います。
<杉本商店 九州産しいたけ冬菇(どんこ)70g>
パウダーではなく、干し椎茸そのものも販売。植物由来の食材だけを使って、肉や魚を食べないベジタリアンやビーガンの人たちにも需要があることがわかってきたそうです。
各国の需要に合わせた所品開発を続けていき、昔ながらの特産品の文化をつないでいきたいと話していました。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:田中ひとみ)

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