「高齢者の筋トレは腹筋より背筋を」谷本道哉氏が示す運動習慣の付け方

今回のゲストは順天堂大学スポーツ健康科学部教授の谷本道哉氏。 谷本氏は大学で教鞭をとる傍らメディアで筋トレに関する情報を発信し、NHK「みんなで筋肉体操」では筋トレでの前向き過ぎるセリフが話題を呼んだ。そんな谷本氏に、高齢者が実践すべき筋トレや骨密度の高め方、健康効果が高まる運動量などを伺った。
―― 谷本先生と言えば、「みんなで筋肉体操」での「筋肉は裏切らない!」というセリフが印象的です。なぜ、力強いセリフを筋トレにたくさん取り入れるようになったのですか?
谷本 言葉はメンタルに大きな影響を与えます。「疲れた」「もうこれ以上できない」という思いになる状況で、筋トレのリズムに合わせてプラスの言葉がけをすると、エネルギーが出てきます。
ですので「みんなで筋肉体操」では、メトロノームのリズムに合わせて前向きな言葉をかけているんです。リズムに乗ってセリフを言わないと、筋トレの動きの邪魔になってしまいますから。
―― トレーニングに合わせて、かける言葉は変化していくのでしょうか。
谷本 「みんなで筋肉体操」では、まずは体の動きそのものを説明します。その後、トレーニングの注意点を伝え、終盤には「出し切ってください」などの“煽るセリフ”を入れています。
これが思いのほかウケたことで、多くの方が番組でのセリフを覚えてくださるようになりました。
―― 「あと5秒しかできません」「もっと出し切ってもいいですよ!」「頑張るか超頑張るかの二択で考えてください」……などが印象的ですね。番組で語るセリフの多くは先生の提案だそうですが。
谷本 ええ。「筋肉は裏切らない!」はディレクターが考えたものなのですが、そのほかの大部分は私が考えていました。
最初は、番組のディレクターがテレビ用の台本をつくってくれる予定だったのですが、僕につくらせてくれと提案しました。体の動きに合わせて、トレーニングのポイントや注意点を伝える必要がありますから。
その提案が認められてから、台本は僕がつくるのが定番になっていったんです。

取材に答える谷本氏
―― 「みんなで筋肉体操」は、俳優・庭師・弁護士・歯科医師など、出演者の顔ぶれもユニークでした。もともとどのような経緯で生まれた番組なのでしょうか。
谷本 「みんなで筋肉体操」は、「世間が驚くような本格的な筋トレ番組をつくりたい」というNHK側からの提案によって生まれました。
最初は1度だけ放送する予定だったのですが、ありがたいことにその後も番組が続きまして。
もともとは上級者向けのハードな筋トレを想定していたのですが、視聴者が増えるに伴って、みんなが取り組みやすい筋トレも考えるようになったんです。
―― 先生が筋肉に詳しいだけではなく、印象的なキャッチコピーをつくれる人であったことが、番組をより面白くしていますね。
谷本 実は小学生の頃、コピーライターになりたいと思っていたんです。糸井重里さんがキャッチコピー1本で何千万円も稼いだ話を聞いて、「僕にもできるんじゃないか」なんて考えたことがありました。
現在は、筋肉体操のセリフを毎週作っているので、コピーライターになる夢の一部が叶っています。

取材に答える谷本氏
―― 健康のためには運動が大事だと言われていますが、年齢を重ねてから運動を始めても、筋肉はつくものなのでしょうか。
谷本 何歳からでも体は鍛えられます。なぜかと言えば、筋肉を含む運動機能は非常に適応能力が高いからです。
適切な筋トレを行うことで持久力・筋肉・骨密度が高まり、さまざまな疾患の罹患率や死亡率が低下することがわかっています。
―― 骨密度は、食事や栄養素からの影響が強いイメージがあります。
谷本 骨密度を上げるためには、食事と運動の両方が大切なんです。
まず、材料がなければ骨は強くならないので、カルシウムをしっかり摂ること。骨はカルシウムとタンパク質(コラーゲン)で構成されていますので、特にコラーゲンをしっかり摂りましょう。コラーゲンは、ゼラチンからでも摂ることができます。
また、「納豆を食べると骨密度が上がる」と言われるのは、ビタミンKが骨の形成に大きく関わっているからです。さらに、日光を浴びるとビタミンDが生成されるので、カルシウムの吸収が良くなります。
―― カルシウムをベースに幅広く摂取する必要がありますね。
もう一つの要素は運動で、骨に強い負荷がかかると、体がその負荷に適応するために骨を強くするんです。
なぜかと言えば、骨に力が加わるとわずかに変形しているのですが、その際に電位が発生するんです。この電位は「骨がたわんでいる」という信号になるため、その信号を受けて骨が強化され、骨密度が上がるのです。
例えば、僕が習っていた空手の世界では、ベテラン選手の攻撃は鉄で殴られたような強度があります。それだけ日々の練習で電位が発信されていて、骨が固くなっているということですね。
僕も空手を辞めてすぐの時期に前腕(腕の手首から肘までの部分)の骨密度を測ったら、測定グラフの範囲を超えるほど、骨が強くなっていましたよ(笑)。

取材に答える谷本氏
―― 骨に負荷をかけるのは、筋肉に負荷をかけるのと同じイメージで良いのでしょうか。
谷本 筋トレを含む運動全般は、骨に負荷をかけることができています。例えば、ウォーキングの歩数を増やすだけでも、半年後には骨密度の上昇が期待できます。
よく学生に出すクイズですが、右利きのサッカー選手は、右足と左足のどちらの骨密度が上がると思いますか?
―― ……右足でしょうか?
谷本 だと思いますよね。でも実は、左足なんです。蹴る足よりも蹴る際に踏ん張る軸足の方が強い力が加わるため、左足の骨密度が上がります。骨に強い力をかけることによって骨密度は上がるんです。
―― 長年運動習慣がなかった人のなかには「今から体を鍛えても無理だ」となかなか行動に移せない人もいるかと思います。
谷本 運動をしてこなかった人ほど、実は「伸びしろ」が大きいんです。
―― そうなのですか?
谷本 介護施設で筋トレを始めたことで、入居者の筋肉が驚くほど強くなったというお話もあります。それに80代を過ぎても筋肉がしっかりとある方やフルマラソンを走れる方もいます。
「年齢を重ねると運動機能が衰える」というのは、あくまでも平均値に基づくお話でしかありません。
高齢者が体を鍛えることは、下り坂に向かう体力をゆるやかにするのではなく、下りに向かっていた坂が再び上り坂になるように変わるのです。マラソンで例えると「少しずつ走れるようになる」のではなく「また走れるようになる」という感じですね。
―― まずは、どんなトレーニングから始めれば良いでしょうか。
谷本 前提として、筋トレに適した負荷は個々に違います。腹筋を10回行うのが精一杯の人なら10回、15回が限界の人なら15回という具合に、それぞれの体力レベルに合わせて筋トレを行うことが重要です。
取り組みやすいのは、自重(自分の体重)を使ったスクワットです。スクワットは体を支える筋肉を鍛えるのにとても効果的なので、優先して取り組んでいただきたいメニューですね。
―― トレーニングは週に何回行うのが理想でしょうか。
谷本 回復期間が必要になるので、毎日ではなく週に2~3回が理想的です。少しだけトレーニングする方であれば毎日でも良いですが、それなりに頑張る人は週3回、ボディビルダーのように徹底的に取り組む人であれば週1回でも十分です。
―― 一日のなかでトレーニングの時間と回数を決めて取り組むのが良いですか?
谷本 取り組みやすい時間に行うので良いです。「夜に運動すると効果が高い」という研究結果もありますが、個人差があるうえ体調によっても効果が変わります。自分が運動したいタイミングで行うのがベストです。
それに「夜の方が良い」と言われると、朝に運動したくなっても躊躇してしまいます。運動しないまま一日が終わってしまうこともありますから。
それから筋トレの回数に関しては「RIR(Repetitions in reserve)」という指標があります。自分の限界まであと何回筋トレできるかを表す指標です。
完全に追い込む(限界の少し先まで取り組むこと)ほど筋トレの効果は高いですが、RIRが1~2くらいでも十分効果があります。ただし、RIRが3~4になると効果が薄れるので、「もうきついな」と感じるまで筋トレを行うのがベストです。

取材に答える谷本氏
―― 高齢者の場合、あまり動いていない方が運動すると、心臓などに負担がかからないでしょうか。
谷本 筋トレは心肺機能に関してはあまり大きな負担をかけません。局所的な運動ですので換気量や心拍数もそれほど上がらない。例えるならば、早歩きするくらいの負担です。
しかし、血圧には注意が必要です。息をこらえるような力の入れ方をすると、血圧が上がりやすくなるからです。力を入れるときは、息を止めず、吐きながら行うのが良いです。
―― ウォーミングアップは必要ですか?
谷本 ウォーミングアップは、してもしなくても大きな違いはありません。自重によってトレーニングを始めると、自然に体が温まってきますので。
―― ちなみに、筋肉がしっかりしている方は、健康寿命が長くなるのでしょうか?
谷本 そこが難しいところなんですよね……。実は、熱心に筋トレに取り組んでいる人の疫学研究データを見ると、必ずしも良い結果が出ているわけではありません。
筋肉に成長を促す刺激を与えることは大切ですが、全身に過度な負担がかかると、むしろマイナスになる可能性があります。
糖尿病のリスクに関しては、筋トレをたくさんするほど下がります。しかし、心疾患やがんに関しては、筋トレに取り組んでいない人より、筋トレを過度に行っている人の方が、リスクが高いことがわかっているんです。
―― ということは、やはり自分にとって“少しハードだ”と感じるくらいの筋トレがベストということですね。
谷本 そうですね。ハード過ぎる筋トレは、逆効果になります。例えば、負荷の重さにこだわって少ない回数で重い物を持ち上げようとすると、血圧が上がったり負担が大きくなったりします。
一方、1回5分~10分の筋トレであっても、しっかり、丁寧に行うことで筋力低下のリスクを下げられます。
効果的な筋トレを、時間で評価するのが正しいかどうかは議論がありますが、現状では時間を基準に評価している研究が多いです。一般的には、週に2時間程度がベストな筋トレの目安とされています。
これを超えると、やりすぎになる可能性がある。例えば、1回1時間の筋トレを週2回行うと、それだけでベストな筋トレの目安に達してしまうんです。
大切なことは、筋トレに時間をかけて筋肉をつけるよりも、しっかり・適度に・丁寧に筋トレを行うことです。

取材に答える谷本氏
―― 高齢者の場合、特に「ここを鍛えると良い」という筋肉はありますか?
谷本 あります。もちろん全身を鍛えることが大切ですが、そのなかでも生活機能に直結する筋肉は鍛える必要があります。特に衰えやすいのは、太ももとお尻の筋肉です。太ももとお尻の筋肉を鍛えるためにはスクワットが効果的です。
さらに、ふくらはぎの筋肉が弱くなると、足首のスナップ力も弱くなり、歩行速度が落ちます。ふくらはぎの筋肉を鍛えるにはカーフレイズという運動(直立した状態でかかとの上げ下げを繰り返す運動)がおすすめです。
腸腰筋のトレーニングも推奨します。腸腰筋は腰椎から大腿骨までをつないでいる筋肉で、足を前に踏み出すときに動かします。腸腰筋が衰えると歩幅が狭くなるので、こちらも歩行速度が遅くなる原因になる。
また、足を前に踏み出せなくなるとつまずきやすくなり、歩くのが怖くなって外出が減る悪循環に陥ります。そのため、腸腰筋を鍛えるための腹筋運動やイスに座った状態で足を上げるレッグレイズも重要です。
まとめると、次の3点は最低限押さえておきたいポイントです。
・スクワットで太ももとお尻を鍛えること・カーフレイズでふくらはぎを鍛えること・レッグレイズで腸腰筋を鍛えること
どこでも手軽にできる運動なので、日常生活に取り入れていただければと思います。
―― 加齢に伴って嚥下機能の低下に悩む人も増加傾向にあります。嚥下機能にも筋肉が関わっているのでしょうか。
谷本 嚥下機能においても筋肉は重要な役割をします。頭部挙上訓練という、嚥下能力を向上させる筋トレもあるぐらいです。寝転んだ状態で頭から体を起こし、首を前に倒す動きをするのが頭部挙上訓練です。飲み込む力を鍛えてくれます。
―― 高齢の方は、日頃から頭部挙上訓練に取り組んでおくべきですか?
谷本 普段からしっかり固形物を食べていれば、それがトレーニングになります。しかし、固形物を食べなくなると筋肉が弱ってくる。そのときは、頭部挙上訓練で飲み込みの力を鍛えるのが効果的です。
―― 介護者の方からは、要介護者を持ち上げる動作が原因で腰を痛める話をよく聞きます。
谷本 介護ではできるだけ相手に近付いて体を持ち上げることで、力のベクトルと腰の位置が近くなり、腰への負担が少なくなります。
また、物理的な距離は気持ちの距離にも影響を与えます。例えば、介護をしている親子が喧嘩して気まずいとき、いつもより体を離したくなるかもしれません。
しかし、そんなときこそ体を近付けて介護すると、わだかまりが解消されやすくなるのではないでしょうか。言葉にしなくても気持ちが通じ合う瞬間などもあるでしょう。
それから、介護者の基礎的な筋力を高めることも必要です。

取材に答える谷本氏
―― 腰痛を防ぐためには、どこの筋肉を鍛えるべきなのでしょうか。
谷本 腰痛予防には背筋を鍛えることが大切です。腹筋はとても人気があるのでみなさん一生懸命鍛えます。しかし、背筋は驚くほど人気がないんですよね。
腰痛対策でも「腹筋を鍛えましょう」と言われることが多いですが、本当は背筋を鍛えるべきです。
人間の体は、基本的に少し前かがみになっています。座っているときは膝が前に出て、立っているときはつま先が前に出る。後ろで体を支えているのは背筋なのです。
日常生活で腹筋を使うことはほとんどないですが、背筋はかなり使われています。マッサージで「腰が凝っていますね」と言われても、「お腹が凝っていますね」とは言われないですよね。
先ほど、おすすめの筋トレにスクワット、カーフレイズ、レッグレイズの3つを挙げましたが、4つ目を追加するとしたら、背筋のトレーニングです。腹筋よりも背筋を鍛えることが10倍大事です。
―― 介護者だけではなく高齢者含めて全員鍛えるべきですね。
谷本 その通りです。日常生活においても大切な役割を持つ筋肉ですので、全員が鍛えるべきです。
背筋は一時期注目されたこともありましたが、定着しませんでした。腕立て伏せやスクワットは、鍛えた効果が見た目に現れやすいですが、背筋はわかりにくい。そのような点も、人気のなさにつながっているのかもしれません。
―― 背筋のトレーニング方法を教えてください。
谷本 簡単な方法では「寝そべった状態で顔から背中までを持ち上げる運動」がありますが、この運動は動きが小さくて効果が限定的です。それよりも良い方法があります。
椅子に座った状態で肩幅ぐらいに足を開きます。
両肩に手を乗せた状態で肘を顔の前で近付けます。こうすると肩甲骨が広がって背中が丸まるんです。反対に両肘の先を肩に向かって移動させると肩甲骨が寄ってきて背骨が反ります。
この動きを繰り返すことで、背骨を丸めたり反らせたりできます。背筋を鍛えるためには、背中を丸めて反らせる動きを、自体重で行う運動にするのが効果的です。
この運動であれば簡単に背筋を鍛えやすいので、もっと広めたいと思っています。

背筋のトレーニング方法を示す谷本氏
―― ちなみに、腰が曲がってしまうのも背筋が関係しているのでしょうか。
谷本 そうですね。背筋が弱くなると、後ろから支える力が不足してくるので、猫背の姿勢になりがちです。そのまま姿勢の悪さを治さなかった場合、次第にその姿勢が固定され、背骨や椎間板が変形していってしまうんです。
昔は畳に座るなど、床での生活が一般的でしたので、前かがみで腰が曲がっている人が多かったです。しかし、現代は椅子に座る生活が主流になりました。その影響で、背中が曲がった方は減少傾向にありますね。
―― 毎日の生活でどんなことを意識しておくべきですか?
谷本 日常的に肩を引いて背筋を伸ばす癖をつけることです。ラジオ体操なども背筋をしっかり動かせる運動です。背筋をしっかり使って姿勢を支えることが、腰が曲がるのを防ぐことにつながります。
もう一つの原因として、高齢になると脊柱管狭窄症が起こりやすくなります。脊柱管狭窄症は、背骨の後ろ側にある脊髄を通るスペースが圧迫されて痛みが生じるため、自然と前かがみの姿勢を取るようになる。前かがみになることで脊髄のスペースが広がり、痛みを和らげられるからです。
脊柱管狭窄症になったあとは筋トレでの解決は難しいですが、日常的に背筋を鍛えていれば、脊柱管狭窄症の予防にもつながります。
―― 運動習慣がない方に対して、家族がいくら「運動することは大事だよ」と伝えても、「動きたくない」という反応が返ってくることがあると思います。そのような場合、谷本さんならどんな言葉をかけますか?
谷本 難しい問題ですよね。僕も、日々アイディアを探し続けています。しかし、まずは楽しんで取り組める運動を見つけることが大切です。散歩が好きなら散歩を、テニスやゴルフが好きならそれらを続けるのが良いです。運動そのものが持久力や筋力を上げるのに効果的ですから。

取材に答える谷本氏
―― “楽しい”という思いが何よりの原動力になるのですね。
谷本 ええ。ゴルフが好きな男性は、言われなくても早起きしてゴルフの練習に行きます。それから筋トレに関して言えば、ランナーズハイのように運動を通じて気持ちよくなれる瞬間があります。
筋トレをすると乳酸が出て、その乳酸がホルモンの分泌を促進する。特にノルアドレナリンが分泌されると、体が“みなぎる”ような感覚になります。だからこそ、筋トレには取り組んでほしいのです。
僕は、「まずは1セットだけ、本気でやってみてください」と言っています。1セットでも本気で取り組めば、ノルアドレナリンが分泌されて気分が高まります。それに、脳の血流も増えて頭がすっきりする。これが運動のスイッチを入れるきっかけになるんです。
―― まず1セットからですね。
谷本 そうです。1セットやってみると、2セット、3セットと続けたくなる。5分でも10分でも運動すれば、体は確実に変わっていくんです。取り組んでみて「こんなに気持ちいいんだ」と言ってくださる方も多いです。
学生時代に無理やり運動させられた方なんかは、運動に対する苦手意識を持っているかもしれません。でも、1セットでも本気でやってみると、気持ち良さがわかると思いますよ。
―― 谷本さん自身は、日々どのように運動しているのですか?
谷本 僕は、駅で堂々と筋トレしていますよ。周りを気にせず筋トレできる社会になってほしいと思っていますから。
―― そう言えば、ここに来る途中に公園のベンチで腹筋している方を見かけました。
谷本 公園や道端で運動したり、手すりを使って腕立て伏せする方なんかも増えましたね。信号待ちで足を上げる運動をする方もよく見かけます。年配の方が多いですが、一昔前には見なかった光景です。
それに現代は、スニーカーを履いてリュックを背負い、早足で通勤する人がたくさんいます。トレーニングウェアで肘を曲げてウォーキングをしている人も。これは「健康経営社会」に向かう兆しのひとつだと思っているんです。
社員の健康を守るために積極的に運動を行う「健康経営企業」がここ数年で増えてきました。血圧・歩数・体重をスマートフォンのアプリで管理したり、卒煙支援を強化したりする取り組みのほか、歩くのに推奨される歩幅のラインが引いてあるオフィスなんかもあるんですよ。
会社が社員の健康を考えて「健康経営」を推進するのは素晴らしいことですが、これが社会全体に広がってほしい。プライベートでも職場でも、みんなが当たり前のように健康のための行動が取れるようになり、お互いに高め合えるようになったら素晴らしいと思います。

取材に答える谷本氏
―― 健康経営社会になり、お互いの健康を意識しあえたら高齢者の孤独問題にも光が差すかもしれませんね。本日はありがとうございました!
取材/文:谷口友妃 撮影:熊坂勉

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