コロナ禍で注目された不織布 メーカーに聞いた!マスク以外の使い道

『不織布(ふしょくふ)』という素材をご存じでしょうか。コロナ禍により、マスクに使われていることを通じて不織布の存在を知った人は多いかもしれませんね。
実は、不織布は非常に有用な素材。マスクだけではなく、私たちの気付かないところで、さまざまな用途に使われています。
不織布の開発・生産を行っている『エム・エーライフマテリアルズ株式会社』(以下、『MAL』)に取材しました。
まず不織布とは何なのでしょうか。簡単にいえば、文字通り織らないで作った布です。
通常、布を作る時には、糸や繊維を織ったり編んだりしますが、不織布はそのような伝統的な手法を用いずに製造されます。
仮に、織ったものを「布」と呼ぶとしたら、不織布は「布」というより「シート」です。
『MAL』は、不織布について、こう表現しています。
不織布とは、英語の『Non Woven Fabric』を直訳した名称です。
JISの定義では「繊維シート、ウェブまたはパットで繊維が一方向またはランダムに配向しており、交絡、融着、接着によって繊維間が結合されたもの。ただし、紙、織物、編み物、タフトおよび縮絨フェルトを除く」となっています。
簡単にいうと、繊維をなんらかの方法で絡ませたり接着させたりして作った、繊維状のシートです。
ちなみに『交絡』とは絡み合わせることで、『融着』は溶かしてくっつけることを指します。
『タフト』は、毛房を植え付けるなどして作った布などのことで、『縮絨フェルト』はウールなどの繊維に圧力をかけ、組織を結合させ厚みや強度を増やしたものです。
画像提供:エム・エーライフマテリアルズ株式会社
この繊維のシートである、布状の素材には、非常に多くの使い道があります。
例えば、掃除に必要なぞうきんや、キッチンで使うふきんなどは、昔のように端布やぼろ布から作るのではなく、最初からその用途に特化した安価な製品があれば便利でしょう。
そのようなニーズに答えるのが不織布です。身近なものには『ペーパーふきん』などの商品があります。
不織布の特徴とは、ニーズに合わせて独自のものを作れることです。
『MAL』に、不織布の特徴について尋ねたところ、以下のような回答がありました。
不織布といっても多種多様な素材・製法があり、用途によって特徴は変わってきます。
逆にいえば用途によって、最適な素材・製法を選択し、求められる物性を発現できることが特徴ともいえます。
例えば赤ちゃんのオムツに使われる不織布であれば、柔軟性(肌触り)や通気性、マスクであればウイルスをブロックするフィルター性能が求められます。
産業用フィルターであれば、対象物を濾過するために適した目の細かさ、油吸着材であれば親油性や嵩高性が求められます。
これらの求められる物性を実現できるように、最適な素材、最適な製法を選択して作られているのです。
ニーズから逆算して作られるので、それぞれのニーズを満たす不織布となります。「不織布」とひと口にいっても、さまざまな製品で活用されているのはこのためです。
具体的にどんな製品で不織布が使われているのでしょうか。『MAL』に、不織布の用途についてうかがうと…。
衛生材料・生活資材関係として、一番多く使われているのはオムツです。
ほかにはマスクや生理用ナプキンや、衣料保護カバー、コーヒーフィルター、台所のゴミ取りネットなど、多岐に及びます。
産業資材関係では、自動車の内装材、産業用フィルター、農業用シート、油吸着シートなど、幅広く使われています。
コロナ禍で注目されたマスクだけでなく、不織布は実に多くの製品で使われているのです。
実際に不織布を生産している『MAL』から、最後にコメントをもらいました。
不織布は化学繊維なので環境にやさしくないのではと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、製造工程上のリサイクルや薄膜化による原料の使用量削減に努めたり、環境にやさしい生分解性プラスチックを使用したりと、環境への配慮にも積極的に取り組んでいます。
皆さんの生活・社会に幅広く使われる不織布だからこそ、環境に配慮しつつ、役立つ不織布を今後とも提供していきます。
不織布は非常に有用な素材で、さまざまな製品に使われ、私たちの生活に役立っています。皆さんの周りにも不織布を使った製品がたくさんありますよ。
[文/高橋モータース@dcp・構成/grape編集部]

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