エアバスの大ヒット旅客機シリーズに「胴体激短の異色機」が…イマイチ売れなかったワケ ただ“スゴイ使われ方”も!?

エアバス社のベストセラー機「A320」シリーズには、胴体短縮がやけに短い派生型「A318」が存在します。この機はA320シリーズのなかではイマイチな売れ行きでしたが、ユニークな使用法がありました。
ヨーロッパの航空機メーカー、エアバスのベストセラー機「A320」シリーズにはさまざまな派生型が存在します。そのなかで、国内の航空会社での導入がなく、かつ異彩を放つルックスを持つモデルが、胴体短縮タイプの「A318」です。A320や、ANA(全日空)が導入している胴体延長タイプのA321に見慣れた日本人には異様に短く見えるでしょう。
エアバスの大ヒット旅客機シリーズに「胴体激短の異色機」が…イ…の画像はこちら >>エールフランス航空のエアバスA318(乗りものニュース編集部撮影)。
A318のベースデザインは基本形のA320とほとんど同じながら、標準座席数は90~110席です。胴体はA320より約6m短い約31.4mで、それまでA320の短縮型と位置づけられてきたA319から、さらに胴体が約2.5m短くなっています。そのためA318は、エアバス機としては著しくコンパクトなサイズ感から、「ベビーバス」「ミニバス」といった愛称をもちます。
エアバス社は1990年代後半、中国およびシンガポールとパートナーシップを結び、100席クラスの新設計機の開発を計画していました。この計画はとん挫したものの、既存機A319のさらなる短縮という形で、そのコンセプトが引き継がれます。この機は“A319からマイナス5フレーム短縮したモデル”ということで、「A319M5」の仮モデル名が与えられました。これがのちのA318です。
このようにエアバスは、大小さまざまな派生型を生み出すことで、航空会社側が乗員繰りやパーツなどの共通化を図りながら、A320シリーズひとつで100席~200席の旅客機が必要な市場を一気にカバーできるようにする狙いもあったと見られます。
しかし、ほかのA320派生型は堅調なセールスを獲得したのに対し、A318の製造機数はわずか80機に留まっています。
A318がヒット機とならなかった要因のひとつとしては、1990年代から2000年代に、地方間輸送を担う100席以下のジェット旅客機「リージョナル・ジェット」が次々と出現したためと見られます。「リージョナル・ジェット」は新設計が採用されたゆえ、既存設計で大型の旅客機を縮めたA318よりも機体価格や運航コスト、重量などを抑えることができました。
たとえばA318よりわずかに少ない標準座席数をもつエンブラエル190の最大着陸重量は44t。これはA318より13tも軽い値です。重量が軽ければ着陸料も安く済み、航空会社側からすると、運用コストが低い旅客機ということになります。そうした経緯でライバル機に市場を奪われてしまったのです。
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ロンドンシティ空港(乗りものニュース編集部撮影)。
とはいうものの、このA318のなかには、とてもユニークな使われ方をした機体も。この機には通常3度の降下角のところを5.5度まで対応できる「Steep approach(急角度アプローチ)」機能が備わる機体が存在しました。エアバスはA318を「この機能を備えた最大サイズの旅客機である」と紹介しています。
この機能を用いてかつて運航されたのが、イギリスのブリティッシュ・エアウェイズのロンドン~ニューヨーク線。便名はかつて超音速旅客機「コンコルド」運航便で用いられた「1便」「2便」で、32席仕様のオールビジネスクラス仕様機とした裕福層向けの便でした。
この路線でのロンドンの発着空港は、国際線の玄関口であるヒースロー空港ではなく、ロンドンシティ空港を使用。ロンドンシティは市街地へのアクセスに優れているものの、滑走路が短く降下角度が急であることから、就航できるジェット機は限られていました。そこで急角度アプローチを備えたA318が用いられたというわけです。

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