生活の様々なシーンで、物価上昇の影響をヒシヒシと感じる今日この頃。もはや、ここ数年で「値上げをしていない商品やサービス」のほうが、珍しいのかもしれない。
そんな中、X上では中華料理チェーン「餃子の王将」店頭に掲出された価格改定の張り紙が「素晴らしい」「見ててワクワクする」といった好意的な声が寄せられているのをご存知だろうか。
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ことの発端は、Xユーザー・JETさんが投稿した1件のポスト。こちらの投稿には、王将店頭で撮影された張り紙の写真が添えられており、「一部商品の価格改定のお知らせ」と確認できる。
餃子の王将、21日からの値上げに何故かユーザー大歓喜 最高の…の画像はこちら >>
王将も値上げか…とショックを受けた人もいるかと思うが、「改定価格」の横には「価格改定に伴う商品の改良点」が記されており、単なる値上げに留まらない辺りに、王将の真摯な姿勢が感じられた思いだ。しかしこのリスト、なぜか強烈な見覚えがあるような…。
その正体についてJETさんは、ポスト本文で「餃子の王将の価格改定のお知らせ、格ゲーの調整みたい」と表現していたのだった。
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家庭用ゲームでバグが発見され、「バカゲー」や「クソゲー」の烙印を押されてしまうのは、もはや過去の話。現在のゲームではプログラムの一部アップデート、修正を行う「パッチプログラム」(通称、パッチ)を使用し、スピーディー且つストレスフリーな対応が可能なのだ。
格闘ゲームではバグの対応以外にも、新規キャラクター追加や、ゲームバランスの見直しのため、全体システムや各キャラの性能を調整する際に使用される。
格ゲー未経験者の中には「格ゲー=大雑把で大味」というイメージを持つ人もいるかと思うが、実際はその逆。キャラ調整で技の発生が1フレーム(1/60秒)遅くなっただけで強キャラが中堅キャラに落ち着いてしまったり、技が空振りした際の硬直時間が数フレーム伸びただけでキャラのランクが大きく変動するのはよくある話である。
そのため各タイトルの調整が発表されると、アッパー調整を受けたキャラの使用者からは歓喜の声が、弱体化調整(ナーフ)を受けたキャラ使いからは怨嗟と絶望の声が上がり、ネット上は混沌とした事態に見舞われるのだ。
ほんの少しの調整がゲームバランスを大きく変え、ユーザーの操作に多大なる影響を与えるため、キャラ調整発表の際は「具体的にどのような行動が可能・不可能となったか」「なぜこの調整を施したか」といった内容が併せて説明される。
では実際に、ゲーム『ストリートファイター6』の調整リストと、王将の価格改定リストを比較してみることに。その結果、衝撃の事実が明らかになったのだ…。
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餃子の王将の価格改定のお知らせ、格ゲーの調整みたい pic.twitter.com/xQqzPRkTuN
JET (@JETggsl) June 18, 2024
去る5月22日に実施された『スト6』のキャラ調整で、カプコンは主人公・ルークについて「優秀なけん制技と対空技から来る手堅い立ち回りはルークの持ち味ではありますが、付け入る隙が少なく試合が膠着しやすい傾向にあったため、迎撃用の技に弱体化を行いました」「一方でルークの攻め手を増やすために、立ち強K等の前進する攻撃の使い勝手を良くしています」と、説明。
ナーフされた箇所とのその理由、そして新たなる武器として加えられたアッパー調整について紹介する、百点満点の説明である。
そして王将の商品は、いずれも「値上げ」というナーフを受けているものの、「餃子」は「生姜の調理方法を改良し、よりクリアな風味が味わえる餃子になりました。ニンニクと生姜をベストバランスに」というアッパー調整を受けている。
「炒飯」は「炒飯工程を改良。焦がしネギ油を使用し、白ネギを足す事で、香味が格段にアップ」とのことで、牽制で焦がしネギ油を振りつつ、白ネギでの差し返しを狙う、中距離戦が強いキャラへと生まれ変わった。
また「餃子の王将ラーメン」は「半熟煮卵と海苔を追加。背脂とニンニクを丁寧に煮込み、リッチで深みのある味わいに」なり、今シーズンの強キャラ筆頭と目されている。
…予想以上に格ゲーの調整リストそっくりで、驚いた人も多いのではないだろうか。
実際、前出のポストは投稿から1日足らずで1万件以上ものリポストを叩き出し、格ゲーマーからは「全体的にアッパー調整ですね」「書き方がまんま格ゲーで笑う」「ラーメン使いのワイ、大歓喜」「完全にパッチノートじゃねぇか!」「価格がフレームにしか見えない」といった声が続出する事態に。
他にも「無言で値上げするところが多い中、できることを探してアピールする姿はすごい真摯な対応だな」「こういうの説明されると、イメージできて美味しそうに感じるよね」「どこかどう美味しくなったか分かるのは良い」など、好意的な声が多数上がっていた。
なお『スト6』のマリーザ使いにしてポスト投稿主・JETさんは、王将の発表について「消費者目線としては価格が上がるのでナーフ調整なのですが、格ゲーマーの目線ではテキスト全体がアッパー調整っぽく見えるため、良調整に感じました」とコメント。
とくに「ライス(大・中・小)」の説明文は、『ストリートファイター』の代名詞「波動拳(弱・中・強)」に見えてしまい、クスリとしてしまったそう。
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やはり、王将内部に「根っからの格ゲーマー」が存在するのだろうか。
話題の調整リストについて、王将を運営する「株式会社 王将フードサービス」に取材を打診したところ、残念ながら価格調整に関する個別の質問については「辞退している」とのこと。
担当者は「当社としましては、開示資料に記載通り、今回の価格改定に伴い、お客様に引き続き安心・安全で美味しい料理をお楽しみ頂けるよう、調理法の改良、従業員の調理技術の向上、商品品質の更なる向上に努めており、また接客サービスと店舗のクレンリネスを一段と高める取り組みも行っております」「当社のスローガン『おいしい力が、未来を変える。』を胸に、お客様のご期待に応えるべく、全社一丸となって取り組んでおり、その一環として種々応対しております」とも語ってくれた。
反応を見るに、今回大きな話題となった件について担当者も驚いている印象を受けたため、格ゲーの調整リストそっくりになったのは、ガチで単なる偶然の可能性が高い。
王将の価格改定が行われるのは21日から。アッパー調整で生まれ変わったメニューの味を、その舌で確かみてみろ!
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秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力と機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。