社員研修なのに楽しそう! NTTe-Sportsが『eスポーツ×研修パッケージ』提供へ

NTTe-Sports、エイジェックは6月3日より『eスポーツ×研修パッケージ』の提供をスタートする。社員研修にeスポーツの要素を取り入れることで、チームビルディングを楽しく学べるパッケージになっている。サービスの予約システムはNTT東日本 東京東支店が担当する。提供価格は50万円から(別途会場費が必要)。本稿では、メディアに公開されたトライアルの模様をお伝えする。

○■eスポーツ研修、会場をのぞいてきた

NTTe-Sportsが運営するeスポーツ施設「eXeField Akiba」(東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDX)で開催されたトライアルには、NTT東日本の社員約20名が参加。4名ずつ5つのチームに分かれて対抗戦を行った。用意されたゲームタイトルは、いわゆるMOBAと呼ばれるジャンルのもの。個人のスキルではなく、チームの戦略性が問われる内容になっている。

はじめに、担当者から簡単なチュートリアルがあった。その後、チームごとに第1試合に向けた戦略を練る。各テーブルから、控えめな小声で「左、右、真ん中に分かれて中央のスターを取りに行きましょう」、あるいは「相手が奪いに来たところを、全員で攻撃してはどうでしょう」など楽しげな議論が聞こえてくる。ちなみに運営側の説明によれば、普段は交流のない部署の人間同士でチームを組んだ、とのこと。

ほどなくして第1試合が開始。参加者はスマホのディスプレイに目線を落としつつも、お互いに声をかけ合ってゲームを円滑に進めていく。自らのステータスをリアルタイムで報告し、余裕がない人はヘルプを求め、タスクを完了した人は仲間の応援に駆けつける――。数時間前までお互い話したこともない間柄だったのに、ゲームを通じてその距離が縮み、チームに連帯感が生まれていくように見えた。

試合を終えるとミニ反省会。どこが良かったか、どこで失敗したか、意見交換を行った。そしてチームの方針を軌道修正し、次の試合に備える。”戦略”と”対戦”を短いサイクルで繰り返しながら、つまりはPlan(計画)Do(実行)Check(評価)Action(改善)を高速で回しながらチームビルディングしていく。

試合を2つ終えたところで、まだ勝てていないチームがあった。そこで運営側は、ゲームを有利にするヒントが書かれているカードをひくチャンスを与えた。代表者はそのカードをひき、テーブルに持ち帰る。ゲーム攻略のための虎の巻は、果たしてチームに初勝利をもたらすだろうか。このあたり、脱落チームを出さないための運営側の工夫が感じられる。

白熱した対戦も、いよいよ終盤戦。第3試合を終え、少しのインターバルを置いて第4試合が始まる。なお、通常であれば『eスポーツ×研修パッケージ』は8試合を行う(3時間ほどの所要時間を見込む)が、この日はトライアルということで第4試合がラストゲームとなった。勝利すると倍のポイントがもらえるということで、負けているチームにも逆転の可能性が出てきた。各テーブルのモチベーションが高まる。

そして全試合が終了。テーブルごとに反省点を話し合った後、各チームの代表者が感想を発表した。あるチームの代表者は「どこに相手がいるか、次はどうするか、お互いに声をかけ合えたのが良かった」「事前に『こうなった場合はこうする』と対応を決めたら、以後は混乱がなくなった」とコメントした。

NTTe-Sports 担当課長の伊田英正氏は「eスポーツは没入感を得られるコンテンツです。そのため、社内のあらゆる世代の方にも前向きに取り組んでもらえます」とメリットを強調する。PDCAを回す、チームで協力する、他者とコミュニケーションをとる、といった実際の業務に直結するような社会人基礎力が自然と身につく。従来型の研修と違い、社員がネガティブな反応を示すようなこともなくなる。

伊田氏によれば『eスポーツ×研修パッケージ』で鍛えられる能力は「ストレス環境下でのコミュニケーションの取り方を学ぶ」「チーム内での役割分担・結論への導き方を養う」「自己評価と他者評価の違いに気づく」の3つだという。

ちなみに経済産業省では「社会人基礎力」を定義している。このうち『eスポーツ×研修パッケージ』では、「チームで働く力(チームワーク)」の能力、「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「情況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」の能力要素を養えるとのこと。

では企業が『eスポーツ×研修パッケージ』を利用する場合は、どうしたら良いのだろうか。伊田氏は「ご連絡をいただいてから1カ月間ほどで準備できます。お客様には負担をかけません。参加者リストを送ってもらい、こちらでチームの割り振りを決めることも可能です。参加者の皆さんには、こちらで用意するマニュアルに従って、ゲームタイトルを事前にダウンロードしてもらうだけです」と説明する。

ちなみに過去2回のトライアルを実施しているが、参加者からは「コミュニケーションが苦手と思われていた50代の男性社員が、eスポーツをきっかけにチームの若い社員と交流できるようになった」「普段は大人しい女性社員がeスポーツ対戦で分析能力を発揮してチームを引っ張ってくれた」「研修後のアンケートで自己評価と他者評価の違いに気が付き、今後の人材配置の参考になった」といった声が寄せられたそう。

最後に、いくつか質問してみた。まず『eスポーツ×研修パッケージ』では、どんなゲームタイトルが選ばれているのだろうか? そんな問いかけに、伊田氏は「ゲームの得意・不得意で差が出ないような、そして複雑すぎない(できれば単純明快な)ゲームを選んでいます。理想を言えば、誰もやったことのないゲームが望ましいですね。残虐性がない、人を傷つけないところもポイントです」と回答した。

また、チーム分けするときに気を付けることについて聞くと「これは研修の目的に応じて、総務人事のかたと話し合って決めていきます。『部署の垣根を超えて交流したい』というケースもあれば、『同じ営業でチームを組ませて結束を固くしたい』ということもあるでしょう。お客様のニーズに合わせて対応します」と話していた。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら

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