子どもでも「ブルーインパルス」の一員になれる? 誰でも体験できる採算度外視の入魂マシンがスゴイ! “パイロット目指す端緒に”

愛知県にある県営名古屋空港に期間限定で「ブルーインパルス操縦体験シミュレーター」が設置されています。つくりは簡素ながら中身は本格的、一方で子供も楽しめる内容にしたとか。担当者に開発の裏側を聞きました。
愛知県の県営名古屋空港に隣接した航空博物館「あいち航空ミュージアム」では、2024年ゴールデンウィークの特別イベントとして「ブルーインパルス操縦体験シミュレーター」を4月27日~5月6日の期間中に実施しています。
この「ブルーインパルス操縦体験シミュレーター」は、航空自衛隊のアクロバット飛行隊「ブルーインパルス」の飛行が再現されており、プレイヤーはT-4練習機によるダイヤモンド編隊の4番機パイロットとして、離陸から密集編隊での旋回やループといった曲技飛行を体験できます。飛行中はダイヤモンド編隊を維持するために機体を操縦し、アクロバット飛行では定番といえるスモークのオン・オフ操作まで行えます。
子どもでも「ブルーインパルス」の一員になれる? 誰でも体験で…の画像はこちら >>航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」(画像:航空自衛隊)。
シミュレーターと聞くと、扱った経験の少ない人からすると「難しそう……」と感じるかもしれませんが、本作は一般の人々でも楽しめるようにチューニングされており、大人だけでなく、パイロットに憧れる子供たちでも楽しめるようになっています。なお、操縦はフライト後に5つ星判定で評価されるため、ゲームセンターなどにあるアーケードゲームをプレイする感覚で楽しむことができます。
とはいえ、このシミュレーターは見た目とは裏腹にかなり本格的なもの。開発には、本物のブルーインパルスのパイロット(第6代飛行班長)だった吉田信也氏や、元航空自衛隊でF-4「ファントム」パイロットで同ミュージアムの職員である土屋昭人氏が監修で携わっており、実際に彼らが複数回テストプレイすることで、そこで感じた意見を開発に反映させ、何度も修正を重ねて完成に至ったそうです。
ちなみに、プレイ中のT-4の動きについても1番機は吉田氏、2番と3番機は土屋氏の操縦データが使われており、機体の動きについても実際のブルーインパルスと同様、微妙なブレ具合まで再現されています。
開発したのは京都のソフトウェアメーカーであるテクノブレイン。同社は、航空管制をテーマにした「ぼくは航空管制官」シリーズなどを手掛けており、業界内では比較的知られたメーカーです。一方で、フライトシミュレーター作品の「パイロットストーリー」シリーズも発売しています。
もっとも、「ブルーインパルス操縦体験シミュレーター」は、通常の商業ベースのフライトシミュレーター作品とは異なり、その開発にもいろいろな苦労があったといいます。
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「ブルーインパルス操縦体験シミュレーター」の会場の様子。2台のシミュレーターが用意され、説明スタッフがプレイ前に説明をしてくれるのでフライトシム未経験の方でも楽しめる(布留川 司撮影)。
フライトシミュレーターといえば実機と同じような操縦ができるリアルさがウリのひとつですが、本ソフトの開発はそこからワンステップ上のブラッシュアップが必要だったといいます。というのも、博物館のような場所にイベントとして置く場合、プレイするユーザーはさまざまな人々が対象となります。特に年齢層的には子供も多く、そのようなプレイヤーでも楽しめるようにする改良する必要があったそうです。
本シミュレーターをプロデュースしたテクノブレインの盛岡隆司氏は、開発の苦労について次のように説明してくれました。
「本作は一般向けとして開発しましたが、だからといって最初から簡単に作れるワケではありませんでした。最初にシミュレーターとしてしっかりとリアルに作り上げ、そこからフライトシム未経験の一般の人向けに必要な部分以外を削ぎ落としていった感じです」。
たとえば本作では操作に関して尾翼を動かすためのラダーペダルが省略されているのですが、これは小さい子供の場合は脚がペダルに届かないという判断から決めたものだとか。また、操縦する機体が編隊から大きく離れた場合のリポジション(位置復元)機能があるのも、子供を含めた一般人が飽きずに最後まで楽しめるようにした結果だといいます。
一方で、単に簡素化するだけでなく「実機のような操縦を楽しむ」という観点からこだわった箇所もあります。特に操縦桿の入力に対する機体の挙動はリアルに作られており、速度域ごとでの機体の操縦感覚の変化は、テストプレイをした土屋氏も納得のクオリティーだったそうです。
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ブルーインパルス操縦体験シミュレーター」のオープニング画面(テクノブレイン提供)。
「開発時はOBの方にテストプレイをしてもらうなどしてもらい、会社的にはある意味で採算度外視な部分もありますね(笑)。しかし、このシミュレーターをきっかけに本物のブルーインパルスを目指す子どもたちが出てきてくれたら……、という思いで作りました」と前出の盛岡氏は話してくれました。
「ブルーインパルス操縦体験シミュレーター」は、冒頭に記した期間中に「あいち航空ミュージアム」へ来場(ミュージアムへの入場料は必要)すれば誰でも楽しむことができます。ただし、小学生3年生以下の方は保護者の付き添いが必要となります。
普段は遠目にしか見ることができないブルーインパルスですが、この機会にシミュレーターとはいえ操ってみてはいかがでしょうか。見る目が変わるきっかけになるかもしれません。

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