【多良間】縦糸に苧麻(ちょま)、横糸に芭蕉(ばしょう)を使った織物「芭蕉交布(ぐんぼう)」を多良間村で一人、制作する女性がいる。東京都出身で、織物を勉強するため約20年前に移住してきた浜川史江さん(46)。多良間の男性と結婚し、子育てをしながら交布を織り続けている。(長岡秀則通信員)
交布は八重山地方の伝統織物。人頭税として納められた苧麻だけの上布とは違って、絹や木綿、芭蕉などを織り交ぜ、庶民が普段着として使っていた。苧麻の強さと芭蕉の軽さ、乾きやすさを備えているという。
多良間では、戦前から宮古上布などを織っていた西筋(いりすじ)ヒデさん(享年97)が数十年前に始めた。大宜味村に出向いて喜如嘉の芭蕉布の作り方を学び、さらに糸に結び目のない宮古上布の手法を取り入れた。
西筋さんに弟子入りした浜川さんは、原材料の栽培から糸績み、織り、草木染まで手仕事の全工程を一つ一つ教えてもらった。
1人で制作するには時間がかかり、特に繊維2本をねじり合わせて1本にする糸作りが大変だという。「たくさん失敗をしながらも続けてこられたのは、やはり機織りが好きだったからでしょう」とほほ笑む。
「ヒデさんはとても手が早かった。絹織物なら1週間に1反織り上げた名人といわれた伝説の人です」と師匠に敬意を払う。
2021年に西筋さんが死去した後、多良間で芭蕉交布を織るのは浜川さんだけになった。
「私はヒデさんみたいにはなれないが、私のペースで楽しんでやっていきたい。これからもこつこつと制作を続けていきます」と話していた。