川勝平太知事の辞意表明で注目されるリニア中央新幹線への影響 着工の見通しが立たない静岡工区どうなる?

4月2日、自らの不適切発言で辞職の意向を表明した、静岡県の川勝平太知事。川勝知事と切っても切れない関係にあるのが「リニア中央新幹線」です。
川勝平太知事の辞意表明で注目されるリニア中央新幹線への影響 …の画像はこちら >>
リニア中央新幹線の静岡工区は2017年11月に工事契約が結ばれましたが、6年4か月が経った今も着工の目途は立っていません。東京、神奈川、山梨、静岡、長野、岐阜、愛知のうち、2024年4月時点で未着工は静岡工区だけです。品川ー名古屋間の全長286キロのうち、山梨、静岡、長野にまたがるのが総延長25キロの南アルプストンネル。標高3000メートル級の南アルプスを貫く、このトンネルは地表からトンネルまでの深さ(土かぶり)が、過去のトンネル工事では類を見ない最大1400メートルに達し、屈指の難工事といわれています。
南アルプストンネルの工事や完成したトンネルの存在によって、河川や地下水の水量の減少や水質の悪化、土地の汚染などが起きる可能性があります。また、動植物に対して影響を及ぼす可能性もあり、川勝知事は環境を巡る複数の課題をJR東海に解決するよう求め続けていました。中でも特に議論が重ねられてきたのが「水」を巡る問題です。静岡県の暮らしを支えている大井川。トンネルは大井川の下を掘る計画で、もし何も対策をしなければ工事によってトンネル周辺の山の中に蓄えられた地下水が減り、結果的に川の水の減少につながります。県は、この水を全て大井川に戻すよう求めていて、JR東海も対策案を講じ、水を戻す方法について議論を重ねてきました。
その対策案としてJR東海は去年4月、工事で県外に流出する量と同じ量の水を上流の田代ダムの取水を抑制することで維持する案を県に提示。去年12月、ダムを管理する東京電力リニューアブルパワーと合意しました。この「田代ダム案」については静岡県も容認し、ほかにも課題は残っていますが、着工に向けた大きな一歩となっています。しかし、そんな中でJR東海の丹羽俊介社長は3月29日、国のモニタリング会議で「2027年の開業は実現できない」と話し、当初の目標だった2027年の開業を正式に断念しました。
静岡工区が6年以上、着工の目処が立っていないうえに、南アルプストンネルが最難関の工事であることから、これまでも2027年は「困難」という表現をしていましたが、断定的な表現をしたのは初めてのことでした。静岡工区は2017年に工事契約が完了し、その後速やかに着工して10年で工事を終える計画だったため、開業は2034年以降になる可能性があります。2027年の開業断念に対して川勝知事は、「整備推進と大井川の水資源、南アルプスの環境保全の両立に向けて対話を速やかに進めていく」とコメントしていました。最高時速500キロ、品川ー名古屋を最短40分で結ぶ夢の超特急。今後、リニア中央新幹線の静岡工区に注目が集まります。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする