陸上自衛隊はきょう、うるま市の勝連分屯地で、地対艦ミサイル(SSM)の連隊本部と、1個中隊の新編に伴う式典を開く。
南西諸島で12式地対艦誘導弾を扱う中隊の配備は、鹿児島県の奄美大島、宮古島、昨年3月の石垣島に次いで、沖縄本島では勝連分屯地が初めてとなる。
SSM連隊は、上部部隊としてこの4個中隊を指揮する「司令塔」だ。北海道の3個と、青森、熊本にあり、沖縄で6個目になった。
日米の対中戦略の中で、沖縄の「要塞(ようさい)化」へのピースが急ピッチで埋まっていく。
地対艦ミサイルは日本に侵攻する相手国の艦艇を陸上から迎撃する能力を持つ。
中隊には発射機と弾薬運搬車を各4基、予備を含むミサイルを30発など、それぞれ配備するといわれる。
ミサイルやレーダーを車に搭載し、移動展開でき、防衛省は戦争を未然に防ぐ「抑止力」と強調する。
ただ、ひとたび発射すれば相手国の航空機や偵察衛星で位置を割り出され、攻撃対象になるリスクを抱える。
周辺地域の安全に関する説明は圧倒的に足りない。
来年は沖縄戦から80年の節目を迎える。当時とミサイルの機能などに違いはあるが、「軍隊のいる場所が狙われる」という教訓は、今も生きている。
防衛省、自衛隊は「新たな戦前に立っているのではないか」といった県民の不安や懸念に向き合わなければならない。
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勝連分屯地の定員は200人増の計290人となる。機能や役割を含め、明らかな負担の増加だ。
防衛省は12式地対艦誘導弾を改良し、射程を200キロから1千キロ程度に延ばす「能力向上型」を開発している。
他国領域のミサイル基地などを破壊する敵基地攻撃能力として使う想定だ。
配備時期を2026年度から25年度に前倒しする。配備先は決まっていないと繰り返すが、沖縄を検討しているのは間違いない。
岸田文雄首相は22年の沖縄の日本復帰50年記念式典で、「基地負担軽減を着実に積み上げる」とした。
その目玉だった米軍キャンプ瑞慶覧の住宅地区を返還に先立ち、日米で共同使用する「緑地ひろば」の開所式も、きょう開かれる。しかしもともと返還予定で、ほとんど使われていなかった土地だ。負担軽減とは程遠い。
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外務省がまとめた24年版外交青書の原案では、対中国で、日本、米国、フィリピンの3カ国連携を強化する重要性を明記している。
中国を「共通の敵」とする動きが強まっている。
日米両政府は4月の首脳会談で、在日米軍司令部(東京・横田基地)の機能強化など指揮統制の見直しに合意し、共同文書に盛り込む方向で調整している。中国や北朝鮮をにらみ、自衛隊と米軍の相互運用性を高める狙いがある。
在日米軍の7割以上が集中する沖縄でさらなる負担増は避けられない。頭ごなしの押し付けは許されない。