独特な外観と、数々の逸話から日本でも高い人気を誇るアメリカ空軍のA-10「サンダーボルトII」攻撃機ですが、その公式デモチームが2024年で活動を終えることが明らかになりました。アメリカ空軍はいつまでA-10を飛ばし続ける予定なのでしょうか。
アメリカ空軍の「A-10CサンダーボルトII・デモンストレーション・チーム」(以下、A-10デモチーム)は、2024年3月21日に公式SNSにおいて、今年(2024年)その活動を終えると発表しました。
A-10デモチームは、アメリカ本土アリゾナ州のデイビス・モンサン空軍基地にある広報活動のための飛行隊です。同チームは全米のエアショーで活躍しており、これらイベントではA-10の機体展示だけでなく、派手なアクロバット飛行や模擬対地攻撃などを来場者に対して披露しています。
活動は約40年にもわたり、今年も20か所のイベントに参加する予定ですが、こうした活動も今年で最後になるようです。
「解散します!」米空軍公式「A-10飛行隊」電撃発表が意味す…の画像はこちら >>デモチームが運用するA-10Cは、通常とは異なる特別塗装機が使われている(画像:アメリカ空軍)。
アメリカ空軍には、エアショーなどで広報活動を行うため、機種ごとに専任のデモンストレーション・チームが組織されています。今回、活動終了を発表したA-10攻撃機以外にも、F-22「ラプター」やF-35A「ライトニングII」、F-16「ファイティングファルコン」といった戦闘機から、C-17「グローブマスターIII」輸送機のチームまでも存在しています。
これらチームはアメリカのエアショーでは高い人気を誇っており、軍へのリクルートにおいて大いに貢献しているそうです。他のチームは今後も引き続き活動を続けていくようですが、なぜA-10デモチームだけが終了するのでしょうか。
A-10「サンダーボルトII」攻撃機は、その特徴ある外見と、対地攻撃専門の攻撃機という種別から、現役の軍用機のなかでも屈指の知名度と高い人気を誇ります。しかし、そんな世間の評判とは裏腹に、アメリカ空軍はこの機体を2030年頃までに完全退役させる予定です。
じつはA-10攻撃機は、対空兵器が発達した現代の戦場では、その能力に疑問符が付いていました。飛行速度が遅くステルス性もないA-10は、対空ミサイルに対して脆弱な存在だといえるでしょう。
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活動停止に合わせてSNSに投稿された画像。最後の活動の年を「FAREWELL TOUR(さよならツアー)」と表現している(画像:アメリカ空軍)。
そこで、アメリカ空軍はこの機体を退役させ、それで浮いた予算や人員を最新のステルス戦闘機F-35AやUAV(無人航空機)といった新たな装備品に割り当てることを決めています。これを受け、A-10デモチームが所属するデイビス・モンサン空軍基地でも、今年(2024年)2月から段階的にA-10の退役が始まっています。
今回のA-10デモチームの活動停止も、ホームベースであるデイビス・モンサン基地における機体と人員、双方が削減された影響の結果だと思われます。
逆にいえば、A-10にとって象徴ともいえるチームがなくなるということは、人気ある同機の退役が目前に迫っていることの現れともいえるでしょう。