放送作家の藤井青銅さん トーク力の高さに最も驚かされたのは松田聖子「すごくいいキャラクターが出る」

脚本家で放送作家の藤井青銅さんの著書「トークの教室」(河出書房新社、990円)が、「日常生活でもためになる!」と話題となっている。お笑い芸人や新人アイドルのトーク力を向上させるべく巧みな助言をしてきた藤井さんが、トークの構造について徹底解説している。(坂口 愛澄)
仕事の合間を縫って、昨年夏ごろから執筆にあたっていたという藤井さん。昨年、お笑いコンビ・オードリーが出演したマクドナルドのCMで共演したが「締め切りが本当に近かったので、(撮影日にも)本気で現場で仕事してました」と笑顔で明かした。
著書のタイトルは、仕事での付き合いが長いオードリー・若林正恭の発した一言から採用した。
「(藤井さんの)『トークの教室があればいいのにな~』と前から何度も何度も言われていて。若林さんとYоuTubeで対談をしていた時にも『青銅さんのトークの教室読みたいです!』といったコメントが視聴者からきて、発売することが決まりました」
そもそも、トークとは「話す」「聞く」の繰り返しであり、藤井さんは「難しいと捉えないほうがいい」と強調する。
「日常では『笑わせないといけない』という呪縛がすごく強いんですよ。オチがある話だけが面白い話ではない。もっと縛られずにトークをしていいと思っています」
SNSの発達が加速していることを受け、特に10代、20代といった若者世代のトーク力が落ちていると感じることがあるという。
「喫茶店に行くと、話をするしか手段がなかったのに、今はほとんどの人がスマホを触っていますよね。デート中のカップルも互いにスマホをいじっている光景をよく見ます。正直、しゃべっているのをあまり見たことがないくらい(笑い)。昔は『次は何を話し、会話を続けよう』と一生懸命に会話の内容を考えていたけれど、今はそれはやらないですもんね」
藤井さんは、1980年に本格的に女優復帰した伊藤蘭のラジオ番組「伊藤蘭 通り過ぎる夜に」の放送作家を担当していた。
「スーちゃん(故・田中好子さん)よりも早く復帰したから、注目度はかなり高かったです。今思い返しても、よく僕を使ってくれたなと思いますね。大スターなのにものすごく気さくで優しい方でしたよ」
著書で「しゃべりが巧みなアイドルは芸能界で長く生き残れる」と断言した藤井さん。特に、歌手・松田聖子のトーク力の高さには、驚かされたという。
「数年前も一緒に特番をやりましたが、すごくいいキャラクターが出て、しゃべりもいいんですよね。平気で大声で笑ってくれるし、とにかく勘がいい。質問が3項目あったら、1から3まで『これはここが怪しいから違う』とか全部の質問に触れてくれる。簡単に思えますが、意外とやらない人って多いんです。優れたパーソナリティであり、優れたアイドルです」
2008年の「M―1グランプリ」で準優勝した、お笑いコンビ・オードリーについてはブレイク前からともに仕事をしてきた。2月に行われた「オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム」では、開演前にお笑いコンビ・どきどきキャンプの佐藤満春と「サトミツ・青銅のオール前座ニッポン」を実施した。
「トークについては、仕事として人にダメ出しをしている立場なので、スタッフに自分のしゃべりを聞かれているのがすごくイヤでしたね(笑い)。でもたくさんの方が聞いてくれて、無事に終えることができた。本当によかったです」
著書を読んだ読者からは「青銅さんのアドバイスが、とてもありがたい」といった声が続々と届いている。
「思った以上に反響があり、うれしいですね。60代になって書いたからこそ、説得力があるんですかね? 『人生のアドバイスになった』とか、『最後ジーンときました』とか言ってもらえたり、感想を聞くと、書いてよかったなと思いました。若林さんも、ラジオで著書を紹介してくれたんです。読みやすいと思うので、皆さんに手にとっていただけるとと幸いです」
◆藤井青銅(ふじい・せいどう)1955年10月20日、山口県生まれ、68歳。79年の「第一回星新一ショートショートコンテスト」で入選。作家兼脚本家・放送作家としては、「オールナイトニッポン・スペシャル」「NHKFM青春アドベンチャー」などを担当。腹話術師いっこく堂の脚本・演出を担当してデビューもプロデュースを担当した。

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