1月1日に発生した、能登の地震は揺れだけではなく、あらゆる種類の地震災害を引き起こしました。
耐震化されていない家は 「平行四辺形になろうとする」 壁が外…の画像はこちら >>
【2月3日】(名古屋大学・福和伸夫名誉教授)「ここはすごいですね。階段が…全部が斜めになってしまった」
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ここ、石川県内灘町(うちなだまち)では「液状化」。
1月1日の地震発生時の様子を捉えた映像。歩道は割れて浮き上がり、あっという間に泥水が道路を覆っていきます。
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(名大・福和名誉教授)「傾斜がある砂丘のような地形なので、この傾斜を平らにしようと砂とともに液状化した土が横に移動することで、高いところが下がり、低いところが少し移動する、そんなことがこんな規模で起きたことはなかなかないです」
玄関の階段も、生け垣も、塀も、押し出されるように倒れています。
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元々、砂丘の上に築かれた内灘の街。斜面の下へ向かって液状化した地盤そのものが押し流され、上に載っている道路や家を破壊しました。
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(住民)「ここは全部コンクリートだったんですが、全部割れて吹き出して砂が出てきた。最初は怖くて踏み込めなかった」
(大石アンカーマン)「砂って柔らかいものじゃないですか。この柔らかいものが、コンクリートで強固な物をぶち破るんですね?」(名大・福和名誉教授)「泥水の濁流のようになったんじゃないですか。速度がある泥水がくれば、コンクリートも破壊してしまうのでは」
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長い間にこの土地がどのような場所であるのかの記憶も薄れていた中、液状化への対策もほとんど行われていなかった上の被害と言えます。
(大石アンカーマン)「ここに住むことはなかなか難しいですか」(名大・福和名誉教授)「建物の中がどれくらい傷んでいるか、基礎がどのくらい傷んでいるかによって、ジャッキアップして平らにもってこられるかが決まると思う」
(大石アンカーマン)「まだまだ時間がかかりそうですね」(名大・福和名誉教授)「ずいぶん時間がかかるでしょうね」
【2月4日】次に訪れたのは輪島市。
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(大石アンカーマン)「危険の張り紙、ここも危険の張り紙が。そして、ここは1階がつぶれている」(名大・福和名誉教授)「梁(はり)の様子がよく分かりますよね」
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ここでは「建物の倒壊」と「火災」。最大震度7の揺れによって、3300棟以上の建物が全壊。そして、地震後の漏電が原因とみられる大規模火災で200棟以上が焼けました。
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(大石アンカーマン)「これだけ広範囲で火災が起きた理由は?」(名大・福和名誉教授)「建物がたくさん壊れたこと。さらに断水、そして大津波警報で、住民は逃げざるを得ない。道を建物が塞いだり、地盤が隆起していて消防車両も入りにくい。倒れ込んできた建物が延焼しやすくもしている。不幸がたくさん重なってしまった」
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地震の前、ここには人で賑わい、奥能登の観光名所でもあった「輪島朝市」がありました。
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ことごとく倒壊した木造の住宅。柱や梁が抜けていたり、柱を固定する金具もなかったりと、古い耐震基準や耐震化されていない建物だったと見られています。
(名大・福和名誉教授)「横の揺れに対して抵抗する硬い壁が外れると、柱だけになるので、平行四辺形になろうとする」
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背景にあるのが“耐震化の遅れ”。能登は特に遅れていた地域で、全国平均の87%に比べ、半分ほどしか進んでおらず、このことも被害の大きさにつながりました。耐震化の重要性を改めて物語っています。
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そして、大きな衝撃を与えたのが、鉄筋コンクリートビルの倒壊。
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(大石アンカーマン)「7階建てのビルが道路側に倒れてきています」(名大・福和名誉教授)「柱の上、柱頭(ちゅうとう)が折れています。この柱がポイント」
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地上7階建てのビルは完全に横倒しになり、「フーチング」と呼ばれるビルの土台まであらわに。裏側に4つから5つの穴が見えています。これは…
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(名大・福和名誉教授)「杭(くい)があったところなんです。横に建物が倒れようとすると、昔の杭は建物の重さを支えているだけで、くっついていないのでとれてしまった」建物を地盤に固定している杭が折れたか、土台から抜けたと見られます。
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現場には、国土交通省の現地対策責任者も訪れていました。(大石アンカーマン)「国として、これをどう復旧、復興させていこうという道筋は」(国土交通省 政府現地対策本部 森本励総括)「国も自治体の支援をしながら、一刻も早く復旧できるようにしっかり対応していこうと思っている」
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このビルは1972年完成で、いわゆる「旧耐震基準」で建てられた建物。同様の地震があった場合、全国どこでも、古いビルは同じように倒壊しないのか、そんな心配も。
【2月5日】そして、輪島市と並んで大きな被害が出た能登半島の先端、珠洲市。
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(大石アンカーマン)「2階建てのお宅で、1階がつぶれてしまって」(名大・福和名誉教授)「見てみると、柱が梁(はり)から抜け出している。ここは残念ながら(現行耐震の)2000年以降の家がほとんどない。それは多分、高齢化して、過疎化して、新しく住む人がいないので、ほとんど立て替えが進んでいない」
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輪島市同様、耐震化が遅れていた住宅がことごとく倒壊しています。液状化でマンホールが地表から突き出た場所も。そしてしばらく行くと…
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(大石アンカーマン)「海藻がついている」(名大・福和名誉教授)「全体的に向こうに(津波の)力がかかった様子がよく分かる」
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津波による破壊も起きていました。海水浴の砂浜が広がっていたこの辺りには防波堤もなく、高さ4.7メートルの津波が襲いました。
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(大石アンカーマン)「揺れてすぐ来たわけでしょ、1分で。逃げられないですよね…こうなっちゃうんですね、町が。普通に暮らしていたでしょうに…」
あらゆる地震災害に見舞われた能登。全力で復興を支援しつつも、来る南海トラフ地震に備え、何を教訓とするかが大きな課題です。
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2024年3月11日放送 CBCテレビ「チャント!」より