受験生や選挙候補者の縁起スポット「ゴトゴト石」を崖から落とそうとした大学生6人に罰金刑! 地元住民は怒り心頭「店の売上が下がった」「石には念があるから下手に動かしちゃならん」

崖っぷちに鎮座し、手で押すとゴトゴトと揺れ動くが絶対に落ちない巨石として高知市土佐山地区の観光名所だった「ゴトゴト石」。「落ちない」という評判が全国的に広がり受験生や選挙候補者の間では縁起スポットとして親しまれていたが、2022年11月、関東の大学生6人のイタズラにより、揺れ動かなくなってしまった。高知簡易裁判所は大学生6人に器物損壊の罪で罰金刑を命じたという。
「ゴトゴト石」は高知市中心部から車で40分ほどの土佐山桑尾地区にある。車1台しか通れない道をしばらく進むと、しめ縄を巻かれた巨石が林の中に鎮座しており「不思議な石」「受験生の聖地」として、これまでに新聞やテレビで紹介され、過疎化が進む人口880人あまりの同地区の観光名所として親しまれていた。高知市土佐山桑尾の佐藤嘉一地区長は言う。「石は重さ6トンと言われていて、それがどういう仕組みで下に落ちることなくゴトゴトと動いていたのかはわからないが、私の親父が若い頃から毎年、新年に向けてしめ縄を新品に交換して大事にしてきたんです。地区の古株ですらその起源は定かではないこの行事ですが、しめ縄をみんなで手作りすることで大事に保存していく意識を共有してきた。それを、どこの者とも知らない若者たちに乱暴に扱われ、動かなくされたんです」
被害にあう以前の「ゴトゴト石」(土佐山地域振興課提供)
“事件”が起きたのは2022年11月26日のことだった。「関東の大学に通う6人の学生が『ゴトゴト石を俺たちで落としてやろう』と企て、東京でレンタカーを借りてその日の晩に現地に到着したようです。一旦は素手で押したものの全く落ちる気配がなく、ノミやハンマーを購入して使ったり、翌27日はジャッキを購入し持ち上げようにもジャッキが壊れたところで諦めたようです。結局は石が90度ほど水平方向に回転した状態で諦めて帰ったといいます」(地元メディア関係者)第一発見者は観光客だった。高知市役所農林水産部の担当者は言う。「大学生たちが帰った後の翌28日に現地を訪れた男性の観光客の方から『石が動かない』とこちらに通報がありました。それで職員が確認したところ、周辺に工具や軍手が散乱していたのを発見したようです。その後、市役所の横の駐在所に職員が相談し、高知東警察署にも相談をしたのですが…」
被害にあった直後の「ゴトゴト石」の写真。石は傾き周辺にジャッキ、軍手、ゴミが放置されていたという(土佐山地域振興課提供)
地元住民が大切にしてきた“石”への冒涜… 前出の佐藤区長は「腹の底が煮え繰り返る思いだ」と語る。「警察や弁護士に相談しましたが、『自然石を割ったわけではなく動かしただけで罪に問えるか』と言われ、埒があかなかった。自分一人では限界があると、昨年春先に親しい者同士5人で告訴委員会を結成しました。同時に告訴を支持する住民ら500人分の署名集めにも奔走しました。この地区の14集落の皆さんに手渡しで配って回り、石のある山林を所有する神社が、2023年6月に高知東警察署に刑事告訴をしたところ、昨年末に高知地検が『観光資源となっていた巨石を固定させて使用不能にした』として学生6人に対して、器物損壊罪で略式起訴を下しました」
署名は2ヶ月ほどですぐ集まったという。署名に参加した、生まれも育ちも土佐山エリアの2人の娘を持つ主婦は言う。「うちの子どもは地域にある市立義務教育学校・土佐山学舎に通っていますが、小学2年生頃に総合的学習でゴトゴト石を見に行くんです。また、数年前には9年生(中学3年生)が石のキャラクター『ゴトゴトくん』をデザインし、合格祈願のキーホルダーを作って受験生に送ったり、お土産店に卸していました。地域起こしを真剣に考える子供たちの気持ちさえ傷つけたんです」「ゴトゴト石」の近くでお土産屋とお食事処を営む店は、大打撃をうけていた。「石が動かなくなってから、売り上げも下がってます。以前は、石を見に行く前や後に立ち寄ってくれた方がいましたが、今年は訪れる受験生らの姿も皆無でした。この山には『山姥の滝』と『ゴトゴト石』くらいしか観光スポットがありませんでしたから、経済的にも大きく影響を受けています」(店舗スタッフ)
地元中学生がデザインした「ゴトゴトくん」(土産物店提供)
動かなくなった「ゴトゴト石」だが、事件後もしめ縄の交換は例年どおり、おこなわれた。参加した住民有志の一人は言う。「子供の頃から山で遊ぶ際は行きしなや帰りしなに押したり揺すったりして遊ぶ、思い出の場所だった。お爺やお婆も、400年以上も前からあそこでゴトゴト揺れてる石だと言っていた。石には念があるから、下手に動かしちゃならんてこともよく聞いていた。そんな言い伝えすらわからない、理解しようともしない“バカ大学生”によるおこないは本当に腹立たしい」
被害にあった直後の「ゴトゴト石」の写真(土佐山地域振興課提供)
石が再びゴトゴトと動く日は来るのだろうか。前出の佐藤地区長は肩を落としていた。「石がある場所は道が狭く大型の重機は入れない山中です。庭師や石工や建設会社の方に頼めばなんとかなるのかどうかわかりませんが、それにしても莫大な費用がかかります。元に戻すのは至難の業です。学生らに処分は下ったとしても、これからは石をいかにして復旧できるかが課題です」学生たちからは今も(3月14日現在)謝罪の言葉はないという取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班

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