「車中泊」と「キャンピングカー」の“壁”とは? 実は明確な違い 流行ってるからってコスパで選ぶと後悔する!?

キャンプブームを背景に盛り上がるキャンピングカー市場ですが、実は「キャンピングカー」と「車中泊カー」には明確な違いが存在。自分が何をしたいのか、よく考えて選ばないと後悔するかもしれません。
コロナ禍の自由な移動手段としてクルマが見直されたこともあり、車中泊に最適なキャンピングカーの人気が高まっています。2024年2月に開催された日本最大のキャンピングカー展示会「ジャパンキャンピングカーショー2024」は、過去最多となる171社と392台が出展、来場者数も4万6459人と盛り上がりをみせました。
それは販売と製造の数字にも反映されており、日本RV協会の調査では、2023年の新車と中古車を合わせたキャンピングカー市場の販売総額が、前年比138%となる1054.5億円に。さらに国内での生産台数も、1万90台を記録し、いずれも新たな大台を突破する勢いを見せています。
「車中泊」と「キャンピングカー」の“壁”とは? 実は明確な違…の画像はこちら >>ジャパンキャンピングカーショー2024に出品されたトイファクトリーによるランドクルーザー70の車中泊仕様(大音安弘撮影)。
ただ、“車中泊を楽しむクルマ”は、「キャンピングカー」と「車中泊車」とで、大きく2つに分かれ、それぞれニーズなども異なります。両者のあいだには明確な違いがあるのです。
キャンピングカーは、簡単に言えば、快適な車中泊を行えるように、ベッドとキッチンなど充実した機能が備わるクルマです。クルマをベースとした自走可能なものに加え、牽引するトレーラータイプのものもあります。サイズや機能は様々ですが、専用車として作られているため、車内で家電が使える電気設備や快適な就寝のための断熱機能など居住空間としての機能性も強化されています。このため価格も、自走タイプでは、ベースとなる車種に100万円以上の上乗せとなり、“贅沢品”や“憧れ”の存在と捉えられています。
一方の車中泊車は、一言でいえば、通常のクルマに就寝機能を備えたもの。ですから、広義には愛車に就寝用具を積み込んだものも、車中泊車といえます。もちろん、専用装備を備えるものも、市販のベッドキットを愛車に搭載したDIYの車中泊車から自動車メーカー製の本格派仕様まで幅広い選択肢があります。
車中泊車の最大の魅力は、そのコスパでしょう。メーカー製のベッドキットでも10万円以下から購入可能で、機能性の高いものでも数十万円ほどですから、キャンピングカーと比べるとずっと身近な存在です。またベッドキットの折り畳みによる収納や取外しを行うと、ベース車と同様の使い勝手ができるのも強みといえます。このため、横になって休めることから、釣りやサーフィンといった趣味のベースキャンプとして車中泊車を使う人も多いようです。
車中泊が増える背景には、日本の環境の良さが挙げられます。まずは休憩スポットとして、高速道路のSA・PAや、一般道の道の駅などの道路休憩施設、そして温泉などの入浴施設が充実していること。このため、旅に必要なトイレと入浴については困りません。
ただ近年、道の駅などの公共駐車場での車中泊の増加が問題となっているため、車中泊の場所選びも重要です。その流れを受け、車中泊を新たなビジネスチャンスと捉え、有料の車中泊専用施設もじわじわと増加中。また旅の疲れを癒す入浴施設の中には、駐車場での車中泊を許可しているところもあります。
その人気の高まりには、ペット連れも問題なく自由気ままな旅が楽しめることなどのポジティブな理由がある一方で、切実な事情があることも。最大の要因は、インバウンド拡大による「宿泊費の高騰」です。
Large 240304 camping 02
ダイハツ・アトレーをベースにしたルートシックスの軽キャンピングカー(大音安弘撮影)。
一人や二人の旅であれば、そのコスト増を許容できるかもしれませんが、家族旅行となると、その負担は、家計に重くのしかかります。旅はしたい、でもできる限り出費を抑えたいという切実なお財布事情から、結果的に低コスト旅のひとつとして車中泊が重宝されているのです。その結果、観光地によっては、集客の割に潤っていないという現実もあるようです。
クルマ旅ならば、車中泊車でも十分というイメージがありますが、そこには季節も関係してきます。キャンピングカーオーナーの友人によれば、「キャンピングカーの最大の魅力は冬の旅にある」といいます。
キャンピングカーは断熱性能が強化されることに加え、エンジンOFFで使えるガスヒーターを装備しているものも多いです。寒い中、断熱性能が低い普通のクルマでは、エンジンOFFでの就寝は厳しいことを認識していくべきでしょう。
実際、冬の車中泊では、寒くて一睡もできなかったということも多々あると聞きます。しかし、エンジンONでの就寝は、環境負荷や騒音の発生などの問題に加え、降雪地では、就寝中の降雪でマフラーが埋まってしまうと、一酸化炭素中毒の危険も生じます。車中泊と言えど、冬のキャンプを想定した防寒対策が必要なことを意識しましょう。
とはいえ、気候が良い時期や涼しい場所など、快適なキャンプ環境ならば、車中泊車でもゆっくりと眠ることができます。そして、快適さと機能を追求したキャンピングカーであっても、装備内容は様々であることも忘れてはなりません。
近年では、ソーラーパネルやリチウムイオンバッテリーの普及もあり、車内の電装が強化され、車載用クーラーが人気に。その結果、機能性が向上するととともに、キャンピングカーの価格も上昇傾向にあり、そこに資材高騰による製造コスト増も相まって、価格を押し上げています。
価格では有利な車中泊車ですが、高価なキャンピングカーは中古車にも安定したニーズがあるため、リセールバリューが良いという強みもあります。だからこそ予算だけでなく、自身が想定する使い方を考慮した上で、車中泊車かキャンピングカーか、どこまでの装備を揃えるべきなのか、しっかりと検討する必要があるのです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする