介護職の労働組合「NCCU」が最新の給与動向を公表。待遇改善の必要性が改めて浮き彫りに

介護職の労働組合組織である「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン」(NCCU)が、1月31日、組合員の平均月収、平均年収に関する最新の調査結果を発表しました(2023年8月30日~10月20日にかけて実施、月給制組合員1,811名、時給制組合員1,136名から回答)。
それによると、月給制組合員の介護職の平均月給は2023年7月において26万2,660円。前年同月よりも3,676円アップしています。時給制組合員の一月あたりの給与額は14万4,372円で、こちらは同4,052円のアップでした。
年収換算では、月給制組合員の平均年収は392万4,161円(2022年・税込)。前年(2021年)より11万6,000円アップしていました。
おおむね給与額自体はアップしていますが、全産業平均に比べると未だ低いのが現状です。厚生労働省の「令和4年度賃金構造基本統計調査」によると、2022年時点における全産業の平均賃金は31万8,000円。介護職の平均月給はそれよりも約5万円も低いです。介護職の給与額の低さが改めて浮き彫りになった結果だと言えるでしょう。
NCCUの調査では、介護職内の勤務先別にも平均月給が算出されています。
それによると、2023年7月時点の月給制組合員の場合、訪問系介護員は23万7,154円、入所系介護員は24万7,192円、デイサービスなど通所系介護員は21万8,708円、生活相談員は26万6,691円、ケアマネージャーは27万6,497円でした。
管理職クラスだと、訪問系の管理者は32万9,546円、入所系の施設の管理者は37万7,622円、通所系の管理者は33万2,843円です。
一般職員は軒並み全産業平均よりも大幅に低いです。全産業平均に比べて、訪問系介護員は約8万円、入所系介護員は約7万円、通所系介護員は約9万円も低い額。訪問系と通所系は、管理職クラスになってようやく全産業平均を上回ります。
NCCUの調査では、組合員である介護職に対して、賃金に対する満足度を尋ねるアンケートも実施しています。
それによると、介護職の全職種で見た場合の回答割合は「満足している」が6.3%、「まあまあ満足している」が25.0%。一方、「少し不満である」は44.1%、「大いに不満である」は22.5%に上っていました。不満を持つ人の合計は、7割近くに達しています。
回答内容を勤務先別にみると、特に不満が大きくなっているのは、老人ホームなどで勤務する入所系介護員。「満足している」と「大いに満足している」の合計で25%程度。「少し不満である」「大いに不満である」の合計は8割を超えています。
あくまで組合員を対象としたアンケートではありますが、老人ホームの介護職にとっての賃金面の不満は大きいのが実情と言えます。入所系施設は高齢化にともなう要介護者の増加により、今後さらに重要度が増すのは間違いありません。効果的な待遇改善策が求められます。
さらに「少し不満である」「大いに不満である」と回答した介護職に、なぜそのように思ったのかを尋ねるアンケートも実施(複数回答可)しています。
月給制組合員で最多回答だったのは「社会的な平均賃金よりも低いと思うから」で43.1%。それとほぼ同じ割合で「今の業務量に見合っていないから」の42.3%が続いています。「今の業務内容に見合っていない」は31.8%であり、「内容」ではなく「量」に見合っていないと考えている人の割合が10ポイント以上も高い結果でした。
介護職は夜勤や排泄の介助など、きつい仕事とよく言われます。しかし賃金の不満要因としてより大きいのは、そうした「内容のきつさに見合っていない」ことではなく、仕事の「量に見合っていない」こと。人手不足により、既存職員への負担が増えていることも影響していると考えられます。
また、月給制組合員に対して賃金改善に向けて必要なことを尋ねるアンケートでは、「介護報酬の引き上げ」が57.3%と最多回答でした。「介護従事者の働き方の創意・工夫」が31.3%、「事業者の経営努力」が26.7%と続いています。最近では東京都や大阪府が介護職の待遇改善に独自に取り組んでいますが、「公費(税金)の投入」も14.3%を占めました。
介護保険サービスを提供する事業所の場合、その収益はほとんどが介護報酬。介護報酬は利用者の自己負担と、介護保険財源(介護保険料・公費)で構成されます。保険外サービスも提供できますが、やはり収入の柱となるのは介護報酬の額であり、そこから介護職の人件費も賄われます。
介護報酬を上げてそれを給与アップにつなげて欲しいというのが、介護職に共通する希望と言えます。
NCCUの調査における注目すべきポイントの一つが、処遇改善の加算対象者なのに、その支給を受けているのかわからないと考えている介護職が多いという実態です。
「あなたは介護職員処遇改善加算の対象者ですか」との質問に対し、「はい」との回答割合は62.1%。そして「はい」と回答した人に、「介護職員処遇改善加算が支給されたのか」と尋ねたところ、「わからない」が14.3%、「いいえ」が2.3%に上っていました。
同様の状況は、ベテラン介護職を対象とした「介護職員等特定処遇改善加算」でも起こっています。加算の支給状況がきちんと説明されていない実態があると考えられ、この点は制度改定もしくは事業所の対応により改善されるべきポイントと言えます。
2024年度の介護報酬では、処遇改善加算の拡大が行われる予定です。しかし今回のNCCUの調査結果を見る限り、多少処遇改善を改善しても、それで全産業との格差を十分に埋められるのかというと、疑問が残ります。大胆な賃金改善策を取らない限り、介護職の他産業への人材流出に歯止めがかかりません。
今回はNCCUの調査結果をもとに、介護職の賃金状況をめぐる現状について考えてきました。賃金の額自体を多少アップさせても、他産業との格差が縮まらない限り、介護職の不満は解消しにくいでしょう。若い人に介護職を目指そうと思ってもらうためにも、他産業との差に配慮した待遇改善策が求められます。

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