悪質ホストによって多額の売掛を背負わされ、風俗へと流れる……昨今、よく耳にするこの手の女性客は10~20代が多い。だが、ホストにハマるのは若い女性ばかりではない。二児の母、麻美さん(31歳・仮名)は、学生時代の同級生の志村さん(仮名)と再婚した後、ホストの沼へと堕ちてしまった。子どもたちは「タイムマシーンに乗って、前のママに会いに行きたい」と嘆くのだが……。
「麻美は学生時代から不器用で、すぐバレる嘘をつくこともあったけど、とてもがんばり屋さん。子どもの面倒見もよかったし、前夫との子どもたちも素直で私にすぐなついてくれた。だから私もこの家族の一員になりたいと心から思ったんです」一昨年、志村さんは学生時代の同級生で、当時交際していた麻美さんとひょんなことから再会。元夫の浮気が原因で離婚した麻美さんの相談にのるうちに、母子ともども親密になり、昨年3月に結婚。しかし、期待に満ちた新婚生活は、早々に崩れ去る。
妻がホス狂だという志村さん(撮影/集英社オンライン)
「麻美が私に子どもの面倒を任せて、『肩がだるいから整体に行く』とか『ホストにハマってる女友達が自殺しそうだから阻止してくる』とか、何かと理由をつけて夜に外出するようになったのです」不審に思った志村さんが子供を寝かしつけた後に麻美さんの部屋を探ると、ホストクラブで空けたと思われるボトルや伝票などを大量に見つけてしまう。「妻がホストクラブに通っていることは確定的で、伝票を見ると週3~4日というハイペース、子供だけ家に置いて出かけることもあった。私は怒りに震え、空きボトルはすぐに捨ててしまいました」そしてボトルに書いてある店舗に向かうと、そこにはホストクラブに出入りしている妻の姿があった。
ホストと思われる男性と歩く麻美さん
病欠が長引いて3週間ほど欠勤したことから、それまで就いていた職場をクビになっていた麻美さん。そんな彼女に志村さんは週3万円の生活費を渡しており、それ以外にも新居の家具代やや病院代などとして数十万円単位の金額を複数回に渡って渡したこともあった。それがこのようなかたちで使われていたとは……。「しかし、これらの支払いは私が渡してたお金だけで到底足りる金額ではありません。テレビなどでホストにハマって風俗勤めをするようになった女性が多いという話を聞いたことがあったので、『もしかして麻美も……?』との疑念から風俗情報サイトを見あさるようになりました」
志村さん一家が住むのはとある地方都市近郊で、無職の麻美さんは子どもを保育園に送り届けた後、毎日のように車で外出していた。どこへ行っているのかを問いただすと隣県のあるエリアだという。志村さんはそのエリアの風俗店をかたっぱしから調べていった。「それで、あるデリバリーヘルスの店で麻美のプロフィールを見つけてしまったときは愕然としました。こんなことは絶対にしたくなかったのですが、私はラブホテルの一室で妻を指名して、その場で話し合いをすることにしました。麻美は私の顔を見てとても驚いていました。そして、何を聞いても無視で部屋から飛び出していったきり、家でもほとんど会話はなく、以降、コミュニケーションはLINEでのやりとりのみとなりました」
志村さんが風俗店のサイトで見つけてしまった妻のプロフィール
志村さんいわく、「仕事をクビになったとき、ショックから相当塞ぎこんでいて、『ホストクラブに行ってみたい』と漏らしていました。もしかしたらそのときに……」と振り返る。ホス狂になってしまえば、今まで大事に育ててきた子どものことすら、二の次、三の次だ。「私は出張の多い仕事で2~3日続けて、家を空けることもあります。そういうときに妻が夜ご飯に何を作ってくれたかを子どもたち聞くと、『ご飯の上にコロッケがのったやつ』とか『ご飯とウィンナー』などと言うのです。そして、『パパ(志村さんのこと)がいないときはママは夜どっかいっちゃうから寂しい』とも言っていました……」
麻美さんの子どものおもちゃ
さらに、志村さんはとんでもない事実を知る。「私がある日曜に3日間の出張から帰ってくると、あとから妻が娘を連れて帰宅しました。私がどこに行っていたのか聞くと親戚の家だというのですが、子どもに聞くと『お姉さんたちがいる部屋にずっと待たされててつまんなかった』と答えました。まさかと思い、妻が働く風俗サイトの日記を確認すると、どうやら妻は子連れで週末を利用して地方の風俗へと出稼ぎへ行っていたのです」
いくら注意してもこのような生活を続ける麻美さんに、いよいよ志村さんの堪忍袋の緒が切れる。そして、妻が通うホストクラブの前で待ち伏せし、妻と一緒に歩いてくる担当ホストに激高した。「私は『妻にもう構うな!』と言いました。相手は『はい』とも『いいえ』とも言わず冷静にいなされましたが、それ以降、妻は夜に出かけることはなくなりました。だからといって、子どもへの食事や寝かしつけを放棄している状況は変わらず、自室にこもって昼も夜もほとんど出てこない状況です」
麻美さんがホストクラブで入れたボトル。担当ホストと思われる字で「今日君がみせてくれた気持ちと勇気はまたこれから仲良くできそうでうれしかったです これからもよろしくな!」と書かれている
志村さんが担当ホストへ突撃した日のことは、ホス狂専門のインターネット掲示板でも目撃情報があげられ「ホストと客と、よくわからないけど喚く男の3人がヤバかった」という書き込みも見られた。麻美さんはこのホストにとってどんなお客なのか。筆者は夫の代わりに店に潜入し、担当ホストに聞いてみた。「月90万円ほど使ってくれる、僕のお客さまの中で最も太い方(金払いがいい客)でした。子持ち? それは僕がタッチできない領域のことなので。別にお母さんだからってホストクラブに来ちゃいけないってことはないと思います」
写真左が麻美さんの担当ホスト
そして、志村さんが激高したあの夜のことをこう振り返る。「お客さまの夫と名乗る男が詰め寄ってきたんですけど、あれは僕の8年のホスト人生の中でも一番のビッグニュースですよ! はっきり言って頭おかしいのかと思いました。お客さまが言うには“夫を名乗るストーカー”だそうです(笑)。今はその男とのイザコザで店に来られない状況みたいですけど、落ち着いたら来てくださるそうです」実の妻にストーカー扱いされている志村さん。結婚前は600万円あった貯金も、麻美さんのホスト遊びによってほとんどなくなってしまった。それでも、志村さんはお金のこと以上に、血のつながっていない子どもたちのことを思ってこう願う。「最近、娘たちは『タイムマシーンに乗って前のママに会いたい』とか『ママが作ったおいしいご飯が食べたい』とよく言ってます。娘たちのためにも、かつての母親としての気持ちをどうか取り戻してほしい……今はそう願ってやみません」
動画で「ママが、おかしくなかったころが、よかったです」と語る麻美さんの次女
ある日、志村さんは4歳の次女から「ママへの気持ち、伝えたいから動画を撮って」とせがまれて撮影したことがあった。その動画を見せてもらうと、次女は笑顔ながら悲痛な思いを訴えていた。「ママが、おかしくなかったころが、よかったです」
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班