踏切開いた→まさか電車来るとは! 教習所で習う「窓開け」は本当に“カビの生えた”教習なのか

南海電鉄の踏切で、遮断桿が上昇した後に列車が通過し、進入したクルマと衝突する事故が発生しました。原因は踏切装置の故障でしたが、もしここでクルマの運転手が、教習で教わる「窓開け」を実施していたら、事故は防げたでしょうか。
南海高野線の西天下茶屋1号踏切(西天下茶屋~岸里玉出:大阪市西成区)で2024年2月6日(火)午前6時20分過ぎ、踏切の遮断桿が上昇した後に列車が通過し、クルマと接触する事故が発生しました。原因について南海電鉄は、付近の架道橋のボルトが踏切を制御する信号回路に干渉し、正常な制御ができなかったためとしています。
踏切開いた→まさか電車来るとは! 教習所で習う「窓開け」は本…の画像はこちら >>踏切で列車の通過を待つクルマ。写真はイメージ(画像:写真AC)。
クルマの運転手は、「まさか遮断桿が上昇した踏切を列車が通過するとは……」と思ったかもしれません。今回の事故は踏切待ちの状態から遮断桿が上がり、クルマが発進した直後に発生。警報機も鳴っていなかったということです。
この事故をめぐり、SNSでは「これよ!踏切の故障でこういうこともあるから、必ず窓を開けて音を確認しろって教習所で言われた」「踏切進入前の窓開け音確認、目視左右確認って大事なんだな」と、踏切を通過する際の「窓開け」について、再認識する声が多く聞かれます。
ただ、踏切での通過方法を定めた道路交通法第33条には、「踏切の直前で停止し、かつ、安全であることを確認した後でなければ進行してはならない」とあります。安全確認については義務付けられているものの、窓を開けることについては言及されていません。
しかし東京都内のある自動車教習所の関係者は、「道路交通法には規定がない踏切での窓開けですが、同法律の内容に基づき公安委員会が作成した『交通の方法に関する教則』には記載があり、教習ではこれを手本に、窓を開けるよう教えます」と話します。
その「交通の方法に関する教則」には、次のように記載されています。
「踏切を通過しようとするときは、その直前(中略)で一時停止をし、窓を開けるなどして自分の目と耳で左右の安全を確かめなければなりません」「警報機が鳴つていないときや、遮断機が降りていないときでも、機械が故障している場合がありますから、必ず安全を確かめてから渡るようにしましよう」「エンストを防止するため、変速しないで、発進したときの低速ギアのまま一気に通過しましよう」(MT車の場合)
しかしながら、現在は多くの踏切に警報器がついており、列車が近づけばカンカンと音が鳴ります。窓を開けなくても聞こえる音量であり、前出の自動車教習所の関係者も「実際には、窓を開ける人は少ないでしょう」とも。ただし「教習や検定の際にこれを実践しないと減点」だといいます。
このように教え始めたのは昭和30年代だとし、当時、地方では遮断機も警報器もない踏切が今よりずっと多く、列車が来ないことを耳で確かめたうえで横断する必要があったとのこと。今でこそそのような踏切は少なくなっていますが、「教習は全国を網羅しないといけないので(窓開けの教習が)残っているのでしょう」と話します。
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遮断機も警報器もない「第四種踏切」。JR西日本は事故防止のため、手で押して開けるゲートの設置を進めている(画像:JR西日本)。
ちなみに遮断機も警報器もない踏切は「第四種踏切」といい、国土交通省の資料によると、2022年3月末時点で全国に2455か所あるそうです。
今回の事故をめぐりSNSでは、窓開けする人が少数派であることに驚く声も聞かれます。機械である以上、踏切装置であれ故障がゼロとは言い切れません。万が一の場合を考慮すると、忘れがちな教習にも意味があると再認識できるでしょう。

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