3月から韓国移籍の仲邑菫女流棋聖がタイトル失冠 「次は絶対勝てるように」世界戦でのリベンジ誓う

23年9月に韓国移籍を発表した囲碁の中学生棋士・仲邑菫女流棋聖の日本で最後となるタイトル防衛戦、第27期女流棋聖戦三番勝負第3局が5日、東京・千代田区「日本棋院」で打たれ、挑戦者の高校2年生・上野梨紗二段が233手までで黒番中押し勝ちし、初タイトルを手にした。仲邑は日本最後のタイトル戦で防衛を果たせず、19日の対局を最後に韓国へ渡る。
涙を止められなかった。終盤、鼻をすすり、頭を何度も振りながら、打ち続けた。「実力不足だった」。幼い頃は負けるとよく涙を見せていた仲邑。最近は涙を見せる姿も減っていたが、やはり、日本最後のタイトル戦での敗戦の悔しさは、大きかった。
上野が優勢を築くと、中盤以降、一方的な戦いになった。仲邑は「序盤から難しくて、途中は少しよくなったかなと思ったところもあったのですが、中盤まずい手を打ってしまって…全体的に難しかった」と振り返った。それでも、会見では、「この対局で自分の弱点も見つかったので、もちろん結果はあるのですが、強くなれるチャンスかなと思います」と強いまなざしで未来を見据えた。
仲邑は23年9月に韓国移籍の意向を発表。10月26日の韓国棋院理事会で、仲邑の客員棋士としての受け入れが承認され、移籍が決定した。日本棋院所属の日本人棋士の移籍は初めてのこと。仲邑がこの日の対局で勝利し、タイトル防衛を果たせば、今月22日の就位式後、3月1日に異例のタイトル返上を行い、韓国へ渡る予定だったが、防衛はかなわず。無冠で韓国へ渡ることになった。
プロ入り同期の梨紗にはこの番勝負第1局まで負けなしの7連勝だったが、ここで2連敗を喫し、タイトルを奪われた。次に2人が戦うとしたら、舞台は世界戦になる。梨紗は日本代表を、仲邑は韓国代表を目指す。「まずは世界戦で代表になれるような棋士になりたい。お互いもっと強くなって、次は絶対勝てるようにしたいです」とリベンジを誓った。
仲邑の日本での対局は残り3局。「いつもどおり、最後まで」と日本での勝負納めになる19日の第35期女流名人戦リーグ、牛栄子扇興杯戦まで戦いを続ける。「今回の経験をいかして、韓国ではもっともっと努力して、強くなりたいです。応援して下さってる方に恩返しできるように頑張りたい」。14歳の未来は長い。(瀬戸 花音)

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