南房総への観光需要掘り起こしへ、鴨川市の観光旅館事業者がヘリコプターを使った期間限定の特別宿泊プランを始めた。都内を離陸し、わずか30分程度で同市内に到着する“時短”が売り。インバウンド(訪日客)などの富裕層を主なターゲットに上空からの景色とともに、同市内外の観光地にも足を運んでもらおうと企画した。観光庁の補助金を活用し、千葉銀行が補助金の手続きや効果測定などで協力している。
同プランは東京ヘリポート(江東区)を4人乗りの観光ヘリで出発。ビルが林立する都市部や豊かな自然が残る房総丘陵などの絶景を上空から堪能し、鴨川市内の城西国際大学安房キャンパス跡地に着陸する。
宿泊は同事業者が経営する旅館「鴨川温泉 璃庵(りあん)」。太海海岸を間近に望め、近くに里山も広がる。食事は地場の海産物などを提供しており、女将(おかみ)の久根崎育代さん(49)は「海と山が両方あるのが房総の魅力」。滞在中、地元を回ってもらうことで地域の観光業全体に効果をもたらしたいという。
同旅館の客層が国内の富裕層や、香港や台湾などアジアからの訪日客が多いこともあり、特別宿泊プランは2人1組、2泊3日が最大約33万円など料金を高めに設定。しかし、29日までの実施期間中、ほぼ売り切れという人気ぶりだ。
同プランを購入した会社社長の風間凪(なぎ)さん(33)は「飛行機よりも山が近く、エキサイティングな冒険だった。遊園地に行った気分。東京では仕事ばかりで、自然を満喫できる場所もないので、30分で着くのはありがたい。今回は自分へのご褒美」と空の旅を満喫した様子だった。
同プランは試験的な実施で、宿泊日数や滞在中の目的地の選定などが課題。ヘリは悪天候時に飛べないため、代替手段も必要となる。企画段階から連携してきた千葉銀行はテスト結果を踏まえ、同事業者と通常プランへの組み込みを検討していくとした。