「ホストクラブは一種のカルト商法」かつてカツアゲや車上荒らしに明け暮れた支援団体代表が悪質ホスト一掃に意気込む理由

昨年、世間から大きな注目を集めたのがホスト売掛問題。この社会問題にいち早く声を上げ、専用の支援団体で一般社団法人「青少年を守る父母の連絡協議会」(略称:青母連/せいぼれん)を設立した玄秀盛(げん・ひでもり)氏。しかし昨年11月、あるインフルエンサーが玄氏の自伝本を引用し、「カツアゲ」や「レイプ」といった犯罪行為を日常的に行っていた過去をSNSで紹介したことで炎上騒ぎに。そんな荒れた中学時代を送っていた玄氏はなぜ今、女性を助ける立場になっているのか。波乱万丈の生い立ちとともに聞いた。
悪質なホストクラブによって借金を背負わされた女性客やその両親を支援し、売掛禁止の立法化のための活動をする一般社団法人「青少年を守る父母の連絡協議会」を玄氏が立ち上げたのは2023年7月。以来、全国から200件以上の問い合わせがあり、その相談に無償で応じている。それだけでなく、玄氏は家庭問題や金銭面など、さまざまなトラブルを抱える人々の相談窓口である公益社団法人「日本駆け込み寺」の前身団体を2002年に設立し、現在は同団体の理事を務めるなど、社会的弱者のために身を粉にして働いている。
「一般社団法人 青少年を守る父母の連絡協議会」代表・玄秀盛氏(撮影/集英社オンライン)
しかし、大阪・西成で在日韓国人として生まれた玄氏は非常に荒れた中学時代を過ごしており、著書『新宿歌舞伎町駆けこみ寺―解決できへんもんはない』(角川春樹事務所/2003年)では、「カツアゲ」や「レイプ」など、過去に自分が犯した犯罪について告白している。昨年11月、アウトロー系インフルエンサー、Z李氏が「ホスト規制の第一人者、玄秀盛さんの著書を読んでみたら結構面白かった。中出しコーラ洗浄レイプやビニール袋コンドーム、女子中学生集団レイプなどまさに外道って感じで前半はかなり気分悪い」とX(旧Twitter)に投稿。これによりちょっとした炎上騒ぎとなったが、著書の記述は本当なのか。本人に聞いてみると、玄氏は隠す様子もなく答えた。「紛れもなく事実です。初めてタバコを吸ったのは小5でシンナーは中1のとき。カツアゲや車上荒らしは日常茶飯事だったし、レイプというか一緒にラリってた女を仲間内で……なんてこともしょっちゅう。そこで吸ってたシンナーのビニール袋をコンドーム代わりにしたり、“コーラで洗えば避妊できる”なんて噂を聞けばそれを試したり。そんな悪事はたくさんしてきたよ。でも過去は消せんし、隠しもしませんよ。
少年時代の玄氏(玄氏提供)
言い訳するつもりはないですが、母を含めた数々の女と父との営みを目の前で見せつけられたり、継母の妹から性的虐待を受けたりとか、そういった経験が女への激しい憎悪になって、そういう行動をしてたんやと思います」
「振り返れば、乱暴をした女性たちには申し訳ないことをしたと思ってる」としながらも、女性をモノにように扱ってきた過去を持つのは事実。それなのに、なぜ今は悪質ホストクラブにハマった女性を支援するのか。「単純に俺みたいなやつをもう二度と生み出したくない、弱い立場の女性や子ども、それに苦しまされている親御さんの助けになりたい、その一心だけです」そもそも玄氏が2002年に公益社団法人「日本駆け込み寺」の前身NPO法人「日本ソーシャル・マイノリティ協会」を立ち上げたのにはこんなきっかけがあった。
建設会社の代表だった30代の玄氏。職安法違反である建設現場への労働者の派遣で荒稼ぎするも、当時、これらの行為の多くはヤクザの生業だったため、組との争いが絶えなかった。公益社団法人「日本駆け込み寺」設立前の2000年には不起訴処分ながら逮捕監禁致傷で逮捕されたこともある(玄氏提供)
「42歳のとき、献血で白血病ウィルス保菌者だとわかり、発症したら余命一年だと聞かされました。そのときにさんざん悪さをしてきた生き方を180度変えて、世のため人のために生きようと決めたんです。余命宣告されたような自分の、残りどれだけあるかわからない命で、その生きた証を残したかった。社会の表と裏を知り尽くした自分だからこそ、救える命もあるのではないかと」現在の活動を「これまでの自分の贖罪、失敗から学ぶ救い方がある」と玄氏は言う。そして、何より人を救うことが天職だと感じるようになったとも。「ここ(青母連)にくる相談者の話なら何時間も付き合えるし、こっちも自分をさらけ出せる。自分の子どもや孫とは2時間一緒にいるのが限界だし、両親やふたりの元嫁にも自分をさらけ出すことなんてできなかったのに。不思議なもんです」
昨年9月ごろから悪質なホストクラブの売掛金問題がメディアで大きく取り上げられ、岸田文雄首相もその対策強化を明言するほどの社会的関心事となった。しかし、年明け以降、この件ではさほど大きな進展はない。玄氏は現状をこう説明する。
「青母連」の相談者から聞いた経緯を弁護士へLINEで報告(撮影/集英社オンライン)
「昨年12月には新宿区長とホストクラブ代表らのまるで茶番のような連絡会が行われて『来年4月をめどに売掛をなくす』としてたけど、今、ホストクラブはさらに悪質化しています。売掛を店内では行わないだけで、ホストが客に借用書を書かせて店外で酒を提供しているケースもあります。それに初回は3000円ほどだった料金を無料にするなどして、女性客をさらに入りやすくしている。こんな状態では被害者はさらに増えるし、売掛禁止なんて甘っちょろいことを言ってる場合ではなくなっているんです」そんな玄氏が目指しているのはホストクラブの一掃だ。その糸口として25歳未満の入店禁止、そして、ホストの業務委託を禁止して社員雇用化などを求める署名活動をしている。そのなかで、同時に英字署名もホームページ上で発信しているが、その狙いは?
玄氏が集めている「ホスト新法」立法化への署名(撮影/集英社オンライン)
「海外メディアに取り上げてもらうためです。英BBCがジャニー喜多川の性加害の実態を取り上げたことで、これまでの“ジャニーズ神話”に終止符が打たれました。私が狙っているのはそれ。もはやホストクラブは全国展開するカルト商法ともいえるものですが、日本でいくら叫んでもどうにもならない。だから海外メディアにホストクラブというカルト商法をぶっ叩いてもらい、対策しなければいけないほどの社会問題に発展させる。現に今、欧米の主要テレビ局など数社からの取材を受けているんです」
(撮影/集英社オンライン)
果たしてホスト問題が世界の人にどう映るのか。札付きのワルだった男の社会貢献はまだまだ終わらない。取材・文/河合桃子集英社オンライン編集部ニュース班

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