[社説]能登半島地震 全力を挙げ捜索救助を

基礎部分から倒れ落ちたビル、隆起した道路、津波に流された街並み。テレビが映し出す惨状に目を覆った。 石川県能登地方を震源とするマグニチュード7・6、最大震度7の地震が発生した。 新たな決意で年明けを迎えた人もいるだろう。帰省し、家族との豊かな時間を過ごしていた人もいるかもしれない。そんな元日が一変した。 自然災害はいつ起きるか分からない。その怖さと脅威をまざまざと見せつけられた。 被害は広がっている。分かっているだけで、石川県で55人が死亡し、各地で多くのけが人が出ている。 いくつもの自治体にまたがり、建物の倒壊が起きた。閉じ込められ、寒さに耐え、救助を待つ人がいる。 発生から72時間で生存率は大幅に落ちるといわれる。 被害を最小限にとどめなければならない。過去の大地震などの教訓を生かし、まずは人命を最優先に、捜索、救助に全力を挙げてほしい。 日本海側の沿岸に、大津波警報、津波警報、津波注意報が発表され、全てが解除されるまで約18時間に及んだ。輪島港で1・2メートル以上など各地で津波を観測した。東日本大震災の記憶と重なり、胸が締め付けられる思いだった。 決壊や陥没、土砂崩れなどで、あちらこちらの道路が寸断されている。孤立した集落もあるとみられる。海路、空路も利用する必要がある。 被災自治体の要請を待つのではなく、被災者のニーズを捉え、物資を送り込む「プッシュ型支援」は不可欠だ。■ ■ 政府は岸田文雄首相を本部長とする非常災害対策本部を設置した。自衛隊員約千人が被災地で活動を始めた。全国の警察、消防、海上保安庁も向かっている。 石川と新潟の両県だけでも6万人近くが避難している。不安を抱える人たちに食料や日用品を届け、健康を守ってもらいたい。 断続的に余震も発生している。二次災害、三次災害への備えも必要になる。 輪島市の観光名所「輪島朝市」周辺で大規模な火災があり、約200棟が燃えるなど経済活動への影響も深刻である。避難が終われば、仮設住宅の開設など長期的な取り組みに移る。復興や生活再建には課題が山積する。 通常国会の開会は今月中旬以降の見通しだが、予備費の活用、2023年度補正、24年度補正など、被災自治体と協議し、切れ目のない支援策に乗り出してほしい。■ ■ 能登半島では約3年間、群発地震が続き、震度1以上の有感地震は500回を超している。21年9月に震度5弱、22年6月に震度6弱、23年5月に震度6強と、規模の大きい地震を観測している。そして今回の震度7である。逆断層型という特徴を持つ。 中長期的に大きな地震が予想された地域で、国や自治体の対策は十分だったか。 また、今回の地震で停止中の北陸電力志賀原発では変圧器の配管が破損し、油が計約7100リットル漏れたという。 原発のほか、住宅、建物などの耐震性はどうだったか。 検証が必要である。

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