「北海道の翼」として知られる航空会社AIRDO(エア・ドゥ)の労働組合「ユニオンエア・ドゥ」が、今年の春闘で地上職員のスニーカー着用を認めるよう、会社側に求めていることが分かった(要求の提出は2月27日)。
昨年はカスハラ対策を求めていた 同社は1996年に現在の本社所在地でもある北海道札幌市で設立。2002年に一度、民事再生法の適用認可を申請したものの、その後は経営が安定。羽田ー新千歳、仙台ー新千歳間など、本州の主要空港と北海道を結ぶ航空便10路線を運航している。
同社によると、役員や短期間契約社員、アルバイト、派遣社員を除いた全従業員数は1095人で、そのうちグランドスタッフの割合は1%前後だという(2024年4月1日)。
ユニオンエア・ドゥは、昨年の春闘でも従業員への迷惑行為を指す「カスタマーハラスメント」(カスハラ)防止の対策を要求。
報道によれば、名札の廃止や人員計画書の開示、チェックインカウンターにボイスレコーダーと監視カメラを設置して利用者に注意喚起するよう求めていた。
「疲労が蓄積しやすい」スニーカー着用以外も要求 ユニオンエア・ドゥは前年に続き今年もスニーカー着用を認めるよう求めているが、要求の背景には何があるのか。
本稿記者の取材に、ユニオンエア・ドゥの担当者は「春闘で同社側に地上職員のスニーカー着用を求めたのは事実」と回答。
そのうえで、「旅客係員はかけ足で長距離を移動することが多い業務。(業務中に)革靴やパンプスでは動きづらく、疲労が(職員に)蓄積しやすいことに加え、転倒しけがをした事例も挙げられているため、改善に向けた取り組みの一環」と要求の理由を挙げた。
また、「(さまざまな)制度拡大そのものは健康的な経営を進めるためにも必要なことだと考えており、春闘で制度化できなかったとしても、継続的に会社と検討できたら」とユニオンエア・ドゥ側の考えも明らかにした。
なお、ユニオンエア・ドゥ側はスニーカー着用のほか、運航・客室乗務員の懐妊時の地上勤務制度の整備、出張宿泊料の上限改訂、私服勤務導入などを求めるとしている。
一方、この件について同社は、本稿記者の取材に対して「特に対応などは何も決まっていない。この場で回答することは差し控えたい」(広報担当者)としている。
大手航空会社もヒール規定を過去に見直し 2020年には日本航空(JAL)が制服のデザインを刷新した際、それまで3~4センチとしていたヒールの高さ下限を撤廃して0~4センチとしたことが話題となった。
また全日本空輸(ANA)もその翌月、地上係員らの靴の規定を「3~5センチ程度」から「5センチ程度以下」へと変更している。
さらに海外の航空会社では、オーストラリアのカンタス航空が従業員のヒール着用を「本人の判断に任せる」としているケースがある。
これらの動きは、「靴」と「苦痛」を組み合わせた「#KuToo運動」から話題が広がった。職場で女性が快適に働くための運動は、一定の成果を得られたといっても良いかもしれない。
最近の国内の航空業界では、格安航空会社(LCC)のジェットスター・ジャパンで労使が対立するなどの労働問題が表面化。
客室乗務員2名の出勤停止処分をめぐり、ジェットスター・ジャパンの労働組合「ジェットスタークルーアソシエーション」(JCA、原告)側が処分の無効確認を請求したところ、昨年12月にジェットスター・ジャパン側が控訴せずに判決が確定した。1審判決を言い渡した東京地裁は、出勤停止期間中の賃金を支払うことなどを命じていた。
厚生労働省によると、23年度の総合労働相談件数は121万412件。「4年連続で120万件を超え、高止まり」しているという。