終わらないコメ高騰「40年で初めての高値」備蓄米放出も効果は不透明 価格安定はいつ?【大石が聞く】

物事の核心に迫る「大石が聞く」。先日、国が備蓄米の放出に踏み切りましたが、まだまだ続くコメの高値、なぜコメが高いのか、そして足りないのか、現場を回ってきました。
(大石アンカーマン:以下大石)「愛知県岡崎市にあるこちら渡辺米穀店。張り紙が出ています。『2月より仕入価格高騰のため価格改定しております。1家族10キロまででお願いします』」。
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「お店にはずらりと袋に入ったお米が並んでいますが、全部で何種類並んでいる?」(渡辺米穀店 渡邊正明さん)「いまだと60種類弱ぐらい。例年はもう1列出して、80種類ぐらいは並べていた」(業界に入って)40年弱になるが、初めてこんな値段の仕入れ価格を見ました」
CBC
この米穀店では仕入れ価格のあまりの高騰で、ほとんどもうけが出ない状況だと言います。
(大石)「例えば魚沼産コシヒカリ。いま1キロ890円です」(渡辺米穀店 渡邊正明さん)「去年の安いときで610円だった」
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(大石)「有名ブランドの北海道産『ゆめぴりか』、玄米1キロ890円です」(渡辺米穀店 渡邊正明さん)「(去年の)最初の頃は売値470円ぐらい。令和6年産(新米)になって、740円ぐらいになった」(大石)「去年の秋ぐらいですか?」
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(渡辺米穀店 渡邊正明さん)「そうですね。これよりも本当は値段をつけないと(採算が)合わない。仕入れ価格になっている。元々コメは(価格の)統制が厳しかったから利益の幅が少ない。その体質のままずっときているのでなかなか厳しいですね」
値上がりが続くコメ。原因は仕入れ値の高騰と市場に出回るコメの不足です。去年の夏にもスーパーなどから一斉にコメが消えた「令和のコメ騒動」がありましたが、その時よりコメはあるものの、何より仕入れ価格が異常だといいます。
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(大石)「令和のコメ騒動の時は品薄だったが、価格はそこまで高くなかった?」(渡辺米穀店 渡邊正明さん)「いまの相場価格の半額ぐらいですかね。そういう意味では(去年も)すごく高かったがいまはもっとひどい」
渡邊さんもこの状況が続く場合、店の存続に不安を抱えます。
(渡辺米穀店 渡邊正明さん)「アメリカのコメなど外米を触らなきゃいけない状況になりそうだと思っています」
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(大石)「いま円安ですが・・・」(渡辺米穀店 渡邊正明さん)「厳しいですけど、売る物がないわけにはいかないので・・・」
一体なぜ、仕入れ値がそれほどまでに上がり続けているのか。愛知県安城市の農家を訪ねました。
(農家 稲垣巨樹さん)「経営面積は、稲を30ヘクタールぐらい、麦・大豆を35ヘクタールぐらいやっています」
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65ヘクタールの農地を持つ稲垣さん。去年の収穫が終わった後、これまでなかった動きが起きたといいます。(農家 稲垣巨樹さん)「いままで付き合いがない業者などから問い合わせがあった。『このぐらいの値段で買うけどどう?』という話は色んなところで聞きました」
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(大石)「いままで取引がなかった業者からですか?」(農家 稲垣巨樹さん)「はい」(大石)「その業者はどんな提示をしてきた?」(農家 稲垣巨樹さん)「“農協の仮渡し金”よりも少し高い金額を提示してきました」
農協の仮渡し金とはJAがコメを卸してくれる農家に支払う一時金。しかし新規の買い付け業者は、この仮渡し金よりも遥かに高い買い取り金額を提示してきたと言います。(農家 稲垣巨樹さん)「知らない業者に売っても、どう流れていくのか、どこに売られていくのかが見えなかった。私も『地元のコメは地元の人に食べてほしい』と思っているので、JAに出荷しました」
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(大石)「普通の農家さんは高く買ってくれる業者に売ってしまう?」(農家 稲垣巨樹さん)「(そのような農家は)増えたと思います」
稲垣さんはJAへの全量の出荷が決まっていたため新規業者には売りませんでしたが、周辺の農家には売ったところもありました。米の高値を期待する買い付け業者の買い占めが、高値につながっていると国は見ています。
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(江藤拓 農林水産大臣)「流通がスタック(滞留)していて、消費者の方々に高い値段でしか提供できていない。流通に問題がある」
しかし単なる投機目的が高値を招いているわけではないとJAはいいます。
(大石)「政府が備蓄米を放出するほどコメがないということですが、なぜですか?」(JAあいち三河 園芸農産課 伊吹滋郎課長)「(去年)猛暑だったので夏場の暑さに耐えたコメに”割れ”などが多く、玄米を白米にしたときの”歩留まり”が、例年だと約87%だったのが、ことしは80%前後の歩留まりに落ちてしまっている」
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コメの収穫量自体は昨シーズンと比べ増えていますが、去年の猛暑でコメの発育不足が起きていて、JAあいち三河の場合、玄米から白米に精米できた量は減っていると言います。
(大石)「政府が備蓄米を放出するといっていますが足りますか?」(JAあいち三河 伊吹滋郎課長)「7月、8月に売るものがだいぶ厳しくなると思います」
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(大石)「それはそもそもの供給量が少ないから?」(JAあいち三河 伊吹滋郎課長)「そうですね。一定の効果はあるかと思うが、足りない量が20万トンで補えるのかというところ。厳しいと思います」
(大石)「コメが足りない問題がこの先も続く?」(JAあいち三河 伊吹滋郎課長)「“次の作”が取れるまで、つまり新米ができる9月まで続くと思います。」
ではなぜもっとコメを作らないのか。再び安城の米農家、稲垣さんに尋ねると・・・。
(大石)「いまコメが足りないと言われているので、農地を麦や大豆ではなくコメにしたらどうか?」
(農家 稲垣巨樹さん)「コメばかりにしてしまうと、4月の田植えシーズンから稲刈りの時までがすごく忙しくなって、作業分散ができない状態になってしまう」
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稲垣さんの農地65ヘクタールの内、コメを作っているのは30ヘクタール。残りは麦や大豆を作っていますが、全てを稲作にすると人手が足りず、収穫は不可能だと話します。国は価格維持などのため長年コメの生産を抑制する、いわゆる「減反」を続け、今も年間およそ3000億円の税金をコメの生産調整に使っています。
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(農家 稲垣巨樹さん)「高くなりすぎて消費者に手に取ってもらえない。コメじゃなくてパンにしようかな、麺にしようかなとなってしまうのはすごく残念なことかなと思うので、少しでも安定した金額で安定供給できるよう、国になんとかしてもらいたいという思いがある」
備蓄米の一部放出はあくまで一時しのぎで、日本のコメ作りは根本から見直す必要があるのかもしれません。

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