所要時間おなじ場合も!? 「特急列車vs高速バス」 東京‐安房鴨川で軍配はドッチに?

特急列車と高速バス。一般的には列車の方が速く、高速バスの方が安価と棲み分けされていますが、東京~安房鴨川間については所要時間に大差ありません。なぜなのか、乗り比べて検証してみました。
特急列車と高速バスは多くの場合、競合しています。東京~安房鴨川間を走るJR東日本の特急「わかしお」と、日東交通と京成バスが運行する高速バス「アクシー」も一例でしょう。
所要時間おなじ場合も!? 「特急列車vs高速バス」 東京‐安…の画像はこちら >>特急「わかしお」に使われるE257系電車500番台(2024年12月、安藤昌季撮影)
特急「わかしお」は12往復ありますが、勝浦駅や上総一ノ宮駅止まりの列車もあるため、安房鴨川までは下り6往復(1本は一部普通)、上り5往復です(土日祝は「新宿わかしお」1往復も運行)。なお、1972(昭和47)年の運行開始時は下り9本、上り8本+季節列車でした。
1993(平成5)年に新型255系電車が投入されると、1995(平成7)~1996(平成8)年にかけて最高速度の引き上げが行われ、当時は最速1時間44分で結びました。2004(平成16)年からはE257系電車500番台も投入されていますが、現在では速度・運行本数ともに縮小傾向にあり、最速は1時間52分。運賃+特急料金の合計は3890円です。
一方、「アクシー」は同区間で1日19往復あります。一部はパークウェルステイト鴨川、東京タワーまで足を伸ばすものの、基本的にはバスターミナル東京駅八重洲口から安房鴨川駅を経て、鴨川シーワールド、亀田病院までを結びます。最速は1時間50分ですが、停留所が最も多い便だと2時間25分程度かかります。運賃は2600円です。
特急列車と高速バスを比べた場合、一般的には前者は速達性で優れ、後者はコスパ(料金の安さ)で勝るというのが多いでしょうが、特急「わかしお」には顕著な優位点が見られません。今回のパターンで珍しいのは、ルートが始発の東京駅と終着の安房鴨川駅以外では被っていない点でしょう。
これは、「アクシー」が東京湾アクアラインでショートカットし、木更津、久留里などを経由して安房鴨川に入るのに対して、「わかしお」は京葉線で蘇我駅に行き、そこから大網駅、勝浦駅などを経由するからです。
1997(平成9)年に開通した東京湾アクアラインの効果は大きく、「わかしお」は本数を減らし、高速バスと直接競合した内房線特急「さざなみ」は、2015(平成27)年より競合しない東京~君津間の通勤特急に変わったほどです。
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徐々に海が近くなってくる(2024年12月、安藤昌季撮影)
筆者(安藤昌季:乗りものライター)は両者を2024年12月の土曜日に乗り比べました。まずは東京10時ちょうど発の特急「わかしお5号」から。京葉線の東京駅は、ほかの路線からは離れた場所に位置します。
「わかしお5号」は東京駅出発時で乗車率50%ほど。窓側がほぼ埋まっていました。E257系500番台の座席間隔は96cm、座席幅は49.5cmですが、肘掛けがあるので実質44cm。窓側肘掛け5cm、中間肘掛け7.2cm、背面テーブルは幅43.8cm、奥行き24.4cmです。
座席は座面スライド式リクライニングシートで座り心地は良好ですが、枕はありません。コンセントは窓側に備わりますが、後付けのため配線が肘掛けと干渉し、通路側の方が快適です。座席背面に網袋とドリンクホルダーもあります。
午前中の「わかしお」なので、筆者は直射日光が当たらないD席を予約しました。京葉線内の海側はA席ですが、そこだと直射日光が強く眩しいのです。
「わかしお5号」は10時24分、海浜幕張駅に停車。1号車から3人が降りました。乗車は1人だけでした。次の蘇我駅には10時33分に到着。ここでの下車客はわずかで、逆に20人以上が乗車してきました。
10時46分着の大網駅では乗降ともにわずか。この辺りから田園風景が増え、そしてD席側が海側となって、直射日光も差し始めます。
茂原駅着は10時54分。1号車だけで15人が降りました。11時2分、上総一ノ宮駅に到着。乗降はわずかでした。ここでは3分停車したのでその間に車内を回ると、5両編成に120人強が乗車していたので、盛況といえるでしょう。11時16分着の大原駅では、休止中のいすみ鉄道の気動車が見えました。ここでは10人ほどが下車しました。
窓から見える景色からは、リゾートマンションやヤシの木が目立つようになり、時折海も見えるようになりました。11時31分着の勝浦駅では20人、11時51分着の安房小湊駅では10人ほどが下車。列車は単線区間を進み、終点の安房鴨川駅には2分遅れの12時1分に着きました。
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日東交通と京成バスが運行する高速バス「アクシー」。筆者が乗車したのは京成便(2024年12月、安藤昌季撮影)
早速、東京駅を出て安房鴨川に12時35分着の日東交通バス「アクシー」を見に行きます。鴨川シーワールド、亀田病院へ向かう便のためか、20人が下車し、10人ほどが継続乗車していました。
筆者は安房鴨川駅16時13分発の京成バスに乗車します。PASMOなどの交通系ICカードに対応しており、乗車はスムーズ。こまめな乗車があり、所定16時49分着の久留里駅前の時点で3分遅れ、25人の乗車でした。
高速道路に入るのは木更津からで、そこまでは下道です。40km/h制限の山道もあるので、速度は出ません。座席は2+2列配置で、1人あたりの座席幅は43cm。肘掛け幅は進行方向左側の席が4cm、右側の席が8.5cmです。右側は補助椅子があるのでやや広くなっています。窓側には肘掛けはなく、座席は鉄道の方が快適です。ちなみに、トイレは車内に設置されています。
停車したのは、17時20分(1分遅れ)の暁星国際学園前で、学生3人を含む5人が乗車しました。周囲の道は街灯がなく真っ暗でした。
17時41分(3分遅れ)に着いた袖ケ浦バスターミナルでは、5人が乗車し1人が下車しました。ちなみに、安房鴨川~袖ケ浦間は下車不可で、区間利用はできません。
17時45分、袖ケ浦インターから高速道路に入り、そのまま東京湾アクアラインを通過しましたが、渋滞のため、バスターミナル東京八重洲へ到着したのは24分遅れの19時7分でした。バスターミナルは地下にあり東京駅からはやや離れているため、JRのホームへ向かうには20分ほどかかるでしょう。
「わかしお」を使うか「アクシー」を使うか。東京~安房鴨川間の移動ならば、運賃と渋滞のストレスとを天秤にかけて決めることになりそうです。

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