クラシックカーの天国? いいえ「クルマの養老院」すんごい台数! それは冗談から始まった!?

福島県の海沿い、いわゆる浜通り地域に東北随一の自動車博物館があるそう。ここには100台近くの様々なクラシックカーが収蔵・展示されていますが、ここまで増えたのはオーナーの思いつきが始まりだとか。行ってハナシを聞いてきました。
福島県双葉郡楢葉町にある「オールドカーセンター・クダン」は、主に国内外のクラシックカーを展示する博物館です。
この博物館のスゴイところは収容している車両の数。その規模は80台以上を数えるほか、屋外には退役した自衛隊の戦闘機やヘリコプター、さらには館内の一角で軍艦の精密モデルまで展示しています。
筆者(石津祐介:ライター/写真家)が同館の存在を知ったのは、つい最近のこと。友人のカーショップオーナーから「ファントム(航空自衛隊の戦闘機)の機首を展示している面白い博物館があるから行ってみない?」と誘われたのがきっかけでした。
クラシックカーの天国? いいえ「クルマの養老院」すんごい台数…の画像はこちら >>福島県楢葉町にある「オールドカーセンター・クダン」で展示されている1958年式のフォード「サンダーバード」(石津裕介撮影)。
都内から福島県の楢葉町までは常磐道で約3時間程度。誘ってくれた友人らとともに天気に恵まれた2024年4月、ドライブがてら訪れてみることにしました。
博物館は、サッカーのトレーニング施設「Jビレッジ」からほど近く、楢葉南工場団地の一角にありました。オープンはいまから四半世紀ほど前の1997(平成9)年9月ですが、2011年3月に起きた東日本大震災と、その地震に起因する東京電力福島第1原発事故の避難指示で休館を余儀なくされたため、ようやく2016年4月に再オープンを果たしています。
ここ「オールドカーセンター・クダン」は、「クルマの養老院」というユニークなコンセプトを掲げています。
博物館のオーナーがクルマをコレクションするなかで、「好きで買ったんだが、自分のところでは埃まみれでね。君のところなら磨いてもらえるから」といった理由で、時には捨て子同然に置いていかれるなど、さまざまな事情で預けられたクルマが集まったそう。それならいっそ「クルマの養老院」を作るかと、冗談交じりに言ったのがきっかけで形になったとのことでした。
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オールドカーセンター・クダンの館内には80台以上の展示車両が並ぶ(石津裕介撮影)。
そんな事情もあってかオープン以来さまざまな車両が持ち込まれたそうで、持ち込みが困難な車両は館長自ら引き取りに行くこともあるのだとか。現在も「手塩にかけた愛車を引き取って欲しい」と問い合わせも多くあるそうです。なお、館内の展示車両以外にも、展示待ちで整備中の車両が数多く控えています。
館内で目を引いたのが、1950年代から60年代にかけてのアメリカ車。GM(ゼネラル・モータース)の「キャデラック」や、フォードの「マーキュリー」、そして「サンダーバード」など、いわゆる「デカくて強いアメ車」がズラリと並んでいるのは、さすがに壮観でした。
5000~6000ccを超えるような大排気量エンジンを搭載した車両に、筆者は当時のアメリカの勢いを感じました。一方、ヨーロッパ車は質実剛健とも言えるベンツのコレクションを始めとして、冷戦時代の東西ドイツの個性的なメーカーや、イギリスのジャガー、そしてロールスロイスの歴代モデルなどが並んでいます。
日本車に目を転じると、トヨタ「クラウン」や日産「グロリア」などの高級車、「フェアレディZ」や「スカイライン」といったスポーツカー、4輪駆動車の雄でもあるトヨタ「ランドクルーザー」なども各種モデルがいたるところに展示されていました。
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オールドカーセンター・クダンのエントランス付近に展示されているRF-4EJの機首。ファントム無頼にちなんだ塗装と、マンガに出てくる主人公らの搭乗機の機番「680」が描かれていた(石津裕介撮影)。
豊富なラインナップから博物館にはカーマニアの来場者が多く、またオールドカーマニアのグループがオフ会で訪れることもあるそうです。とはいえ館長によると、意外なことに航空ファンなどにも人気なんだとか。
その理由は、屋外に展示された戦闘機やヘリコプター。博物館の敷地の外からも展示機が見えるため、興味を持って入場する人も多いのだとか。航空機ファンの間でも、博物館の入り口にファントムの機首が置いてあると話題になっており、退役した戦闘機を懐かしんで訪ねて来るとのこと。なお、館内展示の戦艦や戦闘機の模型を目当てに訪れる来場者も多いそうです。
知る人ぞ知るといった感の強い「オールドカーセンター・クダン」ですが、収容台数の規模としては東北地方では最大規模なのだとか。戦闘機やヘリコプターも見られる個性的な福島のクラシックカーミュージアム、いちど足を運んでみてはいかがでしょうか。ほかの博物館とは違う新たな発見があるかもしれません。

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