新型「ホンダジェット」、なぜ一回り“大きく”なった? 「単なるシリーズ化」を超えた狙いとは

テスト機の製造が始まった「ホンダジェット」の新型機「ホンダジェット・エシュロン」。この機の開発の狙いは、どうやら単に大型化だけではないようです。
ホンダの航空機事業子会社の米国ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)が、ビジネスジェット「ホンダジェット」の新型機「ホンダジェット・エシュロン(Honda Jet Echelon)」の型式認定用テスト機の製造を始めました。「エシュロン」は、機体の異なるサイズを展開しシリーズ化することで販売数を増やす、航空業界の販売戦略のセオリーに倣っていますが、狙いはそれだけではないようです。
新型「ホンダジェット」、なぜ一回り“大きく”なった? 「単な…の画像はこちら >> 「HondaJet」の新型機「ホンダジェット・エシュロン」のイメージ(画像:ホンダ エアクラフト カンパニー)。
初代の「ホンダジェット」は、既に250機以上が売れています。この機体はビジネスジェット機として最も小型の「VLJ(ベリー・ライト・ジェット)」(最大離陸重量が4.54t未満)に分類されます。
対し、現在開発が進められている「エシュロン」は大型化が図られており、大きさのカテゴリも一つ上の「LJ(ライト・ジェット)」クラスとなり、11人を乗せることができます。さらに、約4860kmを飛び北米大陸を横断できる性能も備えています。
HACIへ2025年3月上旬に聞いたところ、「エシュロン」は2023年の機体コンセプトの発表以来、500件弱のLOI(購入意向表明書)を得て、現在もその数は増えているといいます。
HACIによると、これまでの「ホンダジェット」は7年間でモデルチェンジを3回行い、現行の「エリート」と呼ばれるモデルへ進化していますが、「一つの完成形に近づくことができた」と判断されています。そのために次のステップへ向けて「エシュロン」が発表されたと考えられます。
こうした大小の機体サイズを揃えるのは、航空機メーカーの販売戦略として一般的です。ただ、同機の開発には、もう一つ狙いが存在します。
HACIは「エシュロン」で機体を1つ上のクラスに大きくするだけでなく、燃費の向上により二酸化炭素(CO2)の排出削減にも寄与する次世代のビジネスジェットを狙っているとしてもいます。燃費も、同じクラスのビジネスジェット機より20%の削減し、さらに1つ上の中型ビジネスジェット機(最大離陸重量約9t)と呼ばれるクラスより40%の削減することを、それぞれ狙っています。
このことは、環境意識の高い顧客の取り込みや、運航コストの削減によるライバル機との優位性の確保につながります。
その狙いは、「エシュロン」というモデル名にも込められています。この言葉は、斜め一列になって複数の航空機が飛ぶ「梯形編隊飛行」を意味し、この形は編隊各機の燃費を抑えCO2排出削減に寄与するとのこと。同社は、こうしたことから「エシュロン」と名付けたとしています。
HACIの公式サイトにある「ホンダエアクラフトカンパニーの経営戦略」によると、HACIは、これまで自動車やオートバイの生産で名を上げたホンダの中でも事業の詳細はさほど知られていなかったとのことですが、現在は「1つのホンダ」としてグループの相乗効果を上げていくための「第2の創業期」に入っているとしています。新型機「エシュロン」がHACIにとっての「第2の創業期」を担うのは間違いないでしょう。
「エシュロン」は2026年の初飛行を目指し、2028年に、商用運航に欠かせない米国連邦航空局の型式証明を取得する計画です。「エシュロン」の実用化、セールスがどのように展開するかが、「ホンダジェット」シリーズの次の新型機の登場をも占うものになると予想できます。

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