テレビカメラの前で首脳同士が批判し合う－。かつてない衝撃的な場面を世界中が見ることになった。この事態にどのような姿勢を示しどう行動するか。各国の対応が今後の世界秩序を大きく左右することになる。
ロシアとウクライナの戦争の終結に向け協議するはずだったトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が、ホワイトハウスで報道陣を前に激しい口論を繰り広げた。
会談は当初、和やかな雰囲気で始まった。
ただ、焦点となったウクライナ鉱物資源の権利の一部を米国に提供することについてトランプ氏が合意を強調したのに対し、ゼレンスキー氏は「署名には安全の保証が必要」と繰り返し平行線をたどった。
会談に同席していたバンス米副大統領が、ロシアのプーチン大統領に厳しく対応してきたバイデン前政権を批判。「米国が外交に関与することが必要」と述べると、会談の雰囲気が一変した。
ゼレンスキー氏はプーチン氏が過去に何度も停戦合意を破ってきたとし「どんな外交でこの状況を変えるのか」と問いかけたのである。
これに対しバンス氏は「米国への尊敬が欠けている」と反論。２人のやりとりにトランプ氏が割って入り「あなたは切り札を持っていない」「もっと感謝してもいいはずだ」などとまくしたてた。
会談は合意どころか停戦に対する両首脳の姿勢の違いを浮き彫りにした。
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トランプ氏は会談後「米国を侮辱した」と批判した。
しかし就任以来「戦争はウクライナが始めた」と虚偽の発言をし、ゼレンスキー氏を「独裁者」と侮辱してきたのはトランプ氏の方だ。
鉱物資源の権利を要求しながら、ウクライナが安全の保証を求めることに対して「話したくない」とするなど、大国の横暴としか言えない発言を繰り返している。
あの場面はゼレンスキー氏の堪忍袋の緒が切れた想定外の出来事だったのではないか。ウクライナ国民からは毅然とした態度を支持する声が高まっている。
欧州各国の首脳も相次いでウクライナへの連帯を表明した。
「公正な和平」を実現するには当事者であるウクライナを交渉に参加させるべきだ。米ロで決めた停戦案を押し付けてはならない。
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ミュンヘン安全保障会議や、国連総会、国連安全保障理事会などで表面化したのは「米ロ対欧州・ウクライナ」という新たな対立の構図だ。
テレビで放映された前代未聞の決裂劇を見て高笑いしているのはロシアである。
公正な和平を実現させなければ世界の混迷は深まるばかりだ。
ウクライナを支援してきた日本のスタンスも問われる。
世界の紛争解決に、日本も役割を果たすべきだ。