ソープランド“摘発”続く背景に「悪質ホスト問題」も!? 警視庁「特別捜査本部」設置で問題“撲滅”への本気度とは

ソープランドの摘発事例が続いている。報道によれば、1月だけで警視庁による摘発が3件あったという。容疑は売春防止法違反だ。
ソープランドがこれほどのペースで摘発されるのはかなり異例といえる。警視庁の風俗営業等業種一覧では、ソープランドは性風俗関連特殊営業の区分で、「浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業」と定義されており、性交(本番行為)をしないことを前提としているからだ。
今回適用された売春防止法は「売春の防止を図ることを目的」とし、取り締まりの対象となる売春については「対償を受け、または受ける約束で、不特定の相手方と性交すること」と定義している(同法2条)。
この性交とは、男性器を女性器に挿入する行為のことをいう。罰則対象は女性の仲介やあっ旋などをした者で、2年以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられる。その目的を売春婦の保護と売春の拡大防止としているためか、当事者には罰則が定められていない。
さらに同法11条では本番行為がある事実を知ったうえで場所を提供した者には、3年以下の懲役または10万円以下の罰金、これを業とした者には7年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。
摘発される店舗になぜ差があるのか元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。
「ソープランドは個室付き浴場といって “本番行為”は禁止されています。ただ、それを守っている店はないでしょう。売春防止法は風俗嬢やお客を捕まえるための法律ではありません。売春の管理・あっ旋が違法であって、捕まるのは店のオーナーや店長。しかしこれで取り締まりされるのは1年に数件程度です。すべてを摘発するような考えはなかったし、私自身もそういう感覚でした」
そのうえで、小川氏は摘発される店舗に差があることを次のように補足する。
「たいていは別件がきっかけとなっています。たとえば、クスリをやっている、未成年者を雇っているなどの福祉犯罪と合わせて “1本”という感覚です。また、他店からの密告も多いですね」
つまり、警察もソープランドについては事実上黙認しており、摘発される場合は、密告や店とトラブルのあった客からの通報などが起点となることが多いのが実状ということだ。
あくまで “本番行為”をしないことを前提としているため、警察も店舗が “問題なく”営業されていれば、原則、摘発をすることはない。逆にいえば、ソープランドの摘発は警察のさじ加減でどうにでもなるともいえる。
一連の悪質ホスト問題を仕組みから根絶やしに…今回、ソープランドの摘発が短期間で相次いでいるのは決して偶然ではない。警察がいま、目を光らせている風俗のひとつが、ソープランドなのだ。背景には、社会問題化している「悪質ホスト問題」がある。
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「悪質ホストクラブ対策に関する報告書」より

収入をはるかに超える売り上げを客の女性に落とさせ借金漬けにし、ホストやスカウトが女性に短時間で大金を稼げるとして性風俗店を紹介。店舗は彼らに、スカウトバックとして手数料を支払う。そしてこれは女性が性風俗店で働き続ける限りホストやスカウトの懐に入る。
小川氏が補足する。
「警察が風俗店などを一斉摘発するのはたいてい、なにか社会的に注目される事案が発生した場合に、その解決を図るためであることがほとんどです。良くも悪くも場当たり的でいたちごっこといえます。ただ、今回は悪質ホスト問題を撲滅するということで、それらとは違うレベルの動きをしています。
ホストは客の支払い能力以上の売り上げをあげるため、稼げる場所として風俗店を紹介します。直接の紹介は違法になるので多くの場合、スカウトを利用。今回摘発されているソープは、このスカウトとつながりがある店舗ばかりです。
個々のスカウトの逮捕とあわせ、それぞれの関係性を徹底的にあぶり出し、ホスト、スカウト、性風俗店のトライアングルを断絶することで、反社へも資金が流れているとみられる一連の悪質ホスト問題を仕組みから根絶やしにするわけです」
警視庁は今回、風俗店を管轄する生活安全部(生安)に異例ともいえる約70人体制の特別捜査本部を設置し、その撲滅に全力を尽くしている。こうした状況を察知し、すでにスカウトとの関係を切る動きをみせるソープランドもあり、じわじわと効果も出始めているという。
風俗店で働かざるを得ない“奴隷状態”なホスト客の女性もホストースカウトのルートからソープランドなど風俗店への女性客のあっ旋。最大級のスカウトグループの場合、そのネットワークは全国46都道府県を網羅し、約350店舗におよぶといわれる。それにより店側から紹介料としてスカウトに支払われた金額は約70億円にものぼるという。
「スカウトとつながっているソープは大分県や石川県など地方も多いですが、そうしたエリアでは女性が『若い』というだけでも人気が出て店が繁盛します。だからこそ、スカウトに多額の紹介料を払っても成り立つわけです。
一方で、どう考えても返済不能な借金を背負わされ、それを口実に風俗店で働かざるを得ない状況にされているホスト客の女性は “奴隷状態”。たとえ返せないほどの借金があっても、弁護士に相談するなどしてやり直すことは可能です。一刻も早く、“支配”から抜け出し、元の生活を取り戻してほしいですね」(小川氏)

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