ゴーヤーやヘチマなどウリ類を食い荒らす、外来種のセグロウリミバエが、今年に入って相次いで見つかっている。
県農林水産部は「家庭菜園でのウリ科野菜の栽培を控えるように」と、異例の呼びかけを行った。かつて農家を苦しめたウリミバエ根絶までの歴史を思い返し、危機感を強め、具体的な行動につなげたい。
今年3月、名護市羽地でトラップ(わな)にかかったセグロウリミバエが見つかった。県内では21年ぶりの確認だ。
当初は北部が中心だったが、11月にはうるま市で確認され、その範囲は9市町村に広がっている。
まん延の危機が、ひたひたと迫りつつあると認識したい。
アジア地域に広く分布するセグロウリミバエは、ゴーヤーやヘチマのほか、カボチャ、スイカ、トウガンなど主にウリ類に産卵し、ふ化した幼虫が作物を食い荒らしたり、腐らせたりする深刻な被害をもたらしている。
ウリミバエの近縁種に当たるが、現時点では寄主である植物の移動は規制されていない。
ただ今後、まん延すれば「規制対象となる可能性は否定できない」(県病害虫防除技術センター)とする。
県は防除に向けてウリミバエ根絶に使われた「不妊虫放飼法」を来年6月にも用いる方針だ。
初期防除を徹底し、何としても拡大を食い止めなければならない。
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約30年前まで沖縄はウリミバエの生息地で、県外へのウリ類などの出荷は植物防疫法で制限されていた。
不妊虫放飼法は、放射線を当て人工的に不妊化させた大量のウリミバエを野外に放ち、繁殖を抑えるというものだ。不妊虫と交尾した野生虫の子孫は育たず、次第に絶滅に向かう。
復帰の年の1972年に根絶事業が始まり、20年余の歳月をかけて93年に根絶が宣言された。
「虫を放して虫を滅ぼす」と例えられる事業で放たれた不妊虫は530億匹といわれる。
根絶を伝える93年10月30日の社説の見出しは「さあ出番だ!県産果菜」。大害虫退治という画期的な成果を、今後の農業生産につなげていきたい、と書く。
ゴーヤーチャンプルーが全国区の食べ物となり、贈答品として喜ばれるマンゴー人気も、ウリミバエが根絶された後のことである。
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県はセグロウリミバエ対策として、農家に対しては防虫ネットのメンテナンスや適切な農薬散布などを指導している。
一方、家庭菜園を楽しむ県民向けには、地域外への持ち出しを控えることや、栽培そのものの自粛協力を求めている。農家に比べ対策が手薄になりがちで、拡大の一因となっているからだ。
仮にまん延した場合、農家への打撃は計り知れない。沖縄の農業を守るためにも、協力への理解が進むよう、今以上に周知を徹底する必要がある。