「ルパン三世」が愛したフィアットはどれ?「全部同じじゃないですか!?」よく見ろ! 見分けるコツは

『ルパン三世 カリオストロの城』での活躍により「ルパン三世の愛車=バニライエローのフィアット500」のイメージが固まりました。ただ、同車には様々なモデルがあります。彼が乗り回したのは、一体どのモデルなのでしょうか。
長編アニメ映画『ルパン三世 カリオストロの城』の劇場公開45周年を記念して、2024年11月29日から同作の全国リバイバル上映が始まります。この作品は、アニメ界の巨匠・宮崎(大の部分が立の異体字) 駿さんの映画初監督作品であり、作画監督は当時すでにベテランの故・大塚康生さんが担当していることでも知られます。
アニメ界の金字塔として、今なお多くのファンから愛される名作であるとともに、「ルパン三世の愛車=バニライエローのフィアット500」というイメージを一般に広く浸透させた作品でもありました。
物語前半の見どころなのが、逃げるクラリスのシトロエン「2CV」とそれを追う黒服のハンバー「スナイプMK.I」、そしてシトロエンの女の子を助けるために横入りしたルパンと次元のフィアット「500」によるカーチェイスでしょう。
「ルパン三世」が愛したフィアットはどれ?「全部同じじゃないで…の画像はこちら >>『ルパン三世カリオストロの城』でルパン三世が使用したフィアット500と同じバニライエローでペイントされた実車。展示用ナンバーの「R33」はルパンの愛車と同じ番号(山崎 龍撮影)。
約3分間のカーアクションの原画を担当したのは、のちに『ルパン三世Part4』の総監督を務める友永和秀さんです。クルマに詳しくない友永さんは、まず宮崎さんに大まかなラフを描いてもらい、大塚さんからクルマの描き方や動かし方を教えてもらって作画に臨んだとか。その結果、この映画を見たスピルバーグが「これ以上の見事なカーアクションを自分は撮れない!」と、自身の映画でカーチェイスを封印したとの伝説があるほどの名シーンになりました。
そんな『カリオストロの城』のカーアクションの印象から、ルパンとフィアット「500」は、切っても切れない縁で結びつけられ、以降のシリーズで度々「ルパンの愛車」として登場することになります。
とはいえ、ルパン三世がフィアット「500」を愛車とするのは、本作が初めてのことではありません。じつは、1971年放送開始の『ルパン三世 Part1』のシリーズ後半で、同車はすでに登場しているのです。
そもそも、ルパン三世がフィアット「500」に乗るようになった理由は、それまで愛車として設定されていたメルセデス・ベンツ「SSK」の作画が手間かかるうえ、絵を動かせるアニメーターもごくわずかしかいなかったのが原因でした。こうした問題を解決するために、演出家として途中参加した宮崎さんの発案で、大塚さんの愛車であったフィアット「500」に白羽の矢が立ったのです。
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1971年に放送された『ルパン三世 Part1』のシリーズ前半で、ルパンが愛用したのと同じメルセデス・ベンツSSK。設定によるとルパンのSSKはフェラーリ製V12エンジンが搭載されている(画像:Thesupermat CC BY-SA 3.0、via Wikimedia Commons)。
意外な経緯でルパン三世の愛車となったフィアット「500」ですが、実はこのクルマは1957~1975年の生産期間に数回のマイナーチェンジとモデルの追加が行われています。古い順から挙げてゆくと、「プリマ・セリエ」「500D」「500F」「500R」の4モデルが存在し、さらにステーションワゴンの「ジャルディニエラ」とライトバンの「フルゴンチーノ」がありました。
これだけモデルがあると、ボディ形状が異なるワゴンとバンは除くとして、ルパン三世の愛車はどのモデルになるのでしょうか。
『ルパン三世』の映像を検証すると、まず1957年に登場した「プリマ・セリエ」ですが、このクルマは以降のシリーズとは異なり、フロントマスクのヘッドランプ下はエアインテークであるほか、ドアが逆ヒンジの前開きで、キャンバストップが後席頭上まで大きく開く形状(トランス・フォルマービレ)なので、ひと目で違うとわかります。
「プリマ・セリエ」の改良型として1960年に登場した「500D」はどうでしょうか。このモデルの改良点は主にメカニズムで、排気量が479ccから499.5ccへと拡大され、これに伴い最高出力も15psから17.5psへと向上しています。
ただ、外観上の違いはヘッドランプの下に小さなランプがつき、リアに大型コンビランプがつく程度で、他の特徴は「プリマ・セリエ」と同じ。なので、これも違います。
イタリアの法規改正に合わせて1965年に誕生した「500F」は、ドアが後ろヒンジの一般的な開き方となり、ボディパネルの構成が見直されたことで、フロントウィンドウが横方向に大型化され、キャンバストップは前席の頭上だけが開く構造(テッド・アプリービレ)なので、ルパンのフィアット「500」 と特徴が一致します。
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ルパン三世の愛車としてお馴染みのフィアット500は、1957~1975年の生産期間に数回のマイナーチェンジを施しており、細部の意匠は各々わずかに異なる(山崎 龍撮影)。
残るは1968年に追加された装備を充実させた上級仕様の「500L」と、1972年に登場した最終生産型の「500R」ですが、どちらもフロントマスクがルパンのフィアットとは異なるほか、「500L」は内装の意匠まで違うので、これらも除外できるでしょう。
実際にモチーフとなった大塚さんが所有していたフィアットは、当時の正規ディーラーだった西武自動車から購入した「500F」だったそうです。そう考えるとルパンの愛車は「500F」と考えて間違いありません。
『ルパン三世』ファンの中には、旧車のフィアット「500」を購入し、アニメと同じバニライエローに塗り替えて忠実なレプリカを作って楽しんでいる人もいます。
こうした観点から、もしルパン三世仕様のフィアット「500」に乗りたいのであれば、ベースとして選ぶのは「500F」、あるいはフロントマスクのエンブレムの交換を前提として、内外装のデザインが近い「500R」を選び、相応の改造を施すのが一番の近道といえそうです。

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