3年前、新潟市の自宅で29歳の妻と1歳の娘を殺害した罪などに問われている男の裁判員裁判。11月22日判決公判が開かれ、新潟地裁は「有期刑を選択すべきとは到底言えない」として男に無期懲役の判決を言い渡しました。
新潟地裁 小林謙介裁判長：「主文、被告人を無期懲役に処する」11月22日に開かれた裁判で無期懲役の判決を、前を見つめて聞いていたのは、新潟市南区の元看護師・渡辺健被告（31）だ。起訴状などによると、渡辺被告は2021年9月当時、勤務していた病院から妻を殺害する目的で塩化カリウム10本を盗んだほか、11月には自宅で妻の春香さん（29）と娘の純ちゃん（1）の首をロープで絞め付け自殺を装い殺害。殺害事件を起こす8カ月前には春香さんに睡眠薬入りの飲料を提供し、交通事故を起こして殺害しようとした罪など4つの罪に問われていた。事件の背景にあったのは、渡辺被告の不倫だ。検察側は裁判で、「渡辺被告が不倫関係を継続するため、障害となる2人を排除するために殺害した」と指摘し、無期懲役を求刑。一方の弁護側は、殺人未遂事件などでの殺意はなかったとして有期刑を求めていた。
そして、迎えた11月22日の判決公判で新潟地裁の小林謙介裁判長は…新潟地裁 小林謙介裁判長：「２人の尊い生命が奪われたという結果は誠に重大である。妻は婚姻後、間もなくして被告人による不倫や預金の使い込みがありながらも、代わらず夫婦であり続けようとし、長女の誕生後はひたむきに育児に励みつつ、新居で被告人と共に新生活を始めた矢先、被告人に裏切られ、最期は長女の目の前で命を奪われた。愛する我が子を育てることも、その成長を見届けることもできないまま命を奪われた無念さは察するに余りある。長女は、１歳になったばかりで周囲から愛され、本来父親である被告人に庇護されるべき立場にあったのに、その被告人から突然殺害されたものである。妻の悔しさ、無念さ、悲しさ、絶望は筆舌に尽くし難いものといえるし、長女の死も痛ましいというほかない」こう断罪した上で…新潟地裁 小林謙介 裁判長：「被害者らには何の落ち度もない。経緯や動機に汲むべき点は皆無である。また、看護師である被告人がその知識・技術および立場を悪用し、各犯行に及んだことも強い非難に値する。本件に関しては、有期刑を選択すべきとは到底言えない」こう話した上で、殺人未遂事件・殺人予備事件についての殺意を認め、検察側の求刑通り、無期懲役を言い渡した。
廷内には、遺族の泣く声が響いていた。まっすぐ前を向いて判決を聞いていた渡辺被告に対し、小林裁判長は判決理由を説明した後…新潟地裁 小林謙介裁判長：「あなたが奪った2人の命に一生をかけて償いをしてください。守るべき2人の命を奪ったことを忘れずに向き合い、亡くなった2人だけでなく、関係者の無念さも考えてください」証言台に立つ渡辺被告にこう諭した。弁護側は控訴するかについては「被告人と面会してから検討する」としている。また、渡辺被告は弁護士との接見で「2人の命を奪ったことについては申し訳ない」と話しているという。