まもなく発足! 自衛隊の「異色の運び屋」母港は衝撃の2か所「え、拠点そこ!?」

自衛隊向けの新たな輸送艦がこのたび広島県尾道市で進水しました。「にほんばれ」と名付けられたこの艦は、海上自衛官ではなく陸上自衛官が主体となって運用されるとのこと。また、部隊もこれから新編される予定です。
広島県尾道市の内海造船瀬戸田工場で2024年10月29日、防衛省が発注した輸送艦「にほんばれ」の命名・進水式が行われました。同艦は陸上自衛官が主体となって運用を行う初めての自衛艦として、2025年3月に広島県の呉地区に新編される「自衛隊海上輸送群(仮称)」へ配備されます。なお、同型艦2隻の竣工後は、呉地区から海上自衛隊阪神基地に移る予定です。
異例だったのは、「にほんばれ」の進水で演奏されていたのが、定番の行進曲『軍艦』ではなく、陸自の中部方面音楽隊が演奏する車両行進曲『陽光を背に』だったこと。なお、艦名の由来について陸上幕僚監部広報室の吾妻英明2等陸佐は「任務の完遂と航海の安全への願いを込め、太陽にちなんだ名称から選定した。一点の曇りもなく、晴れ渡った空を表し、日本国を想起させるものとなっている」と説明しています。
まもなく発足! 自衛隊の「異色の運び屋」母港は衝撃の2か所「…の画像はこちら >>2024年10月29日、内海造船瀬戸田工場で命名・進水した新型輸送艦「にほんばれ」(深水千翔撮影)。
「にほんばれ」の全長は約80mで喫水は約3m、基準排水量は約2400トンです。公表されている輸送性能は数百トンで、車両十数両または20フィートコンテナ十数本程度の積載が可能です。速力は15ノット(27.4km/h)以上。岸壁や砂地の生地に離着岸し、艦首のランプから車両や補給品などの積載と陸揚げを直接行うことが可能なビーチング能力を持ちます。乗員数は陸上自衛官を中心に約30人。固有武装はありませんが、12.7mm重機関銃を設置するための銃架を装備しています。
吾妻2佐は「この小型級船舶は、水深の浅い島嶼部にも輸送が可能な船舶として運用されることが期待されている。大小多くの島々が点在する南西諸島において、迅速かつ確実な輸送が可能になることにで、南西防衛体制の強化につながる」と同艦を整備する意義を語っています。
「にほんばれ」が配備される自衛隊海上輸送群は、2018年に策定された「中期防衛力整備計画(中期防)」に基づいて、島嶼部の輸送機能を強化するために新設が決まった陸海空共同の部隊です。
同群は、今回進水した小型級船舶(LCU)「にほんばれ」と11月下旬の命名・進水が予定されている基準排水量約3500トンの中型級船舶(LSV)、この2隻と人員100人規模をもって2024年度末に発足する予定です。当初は両艦共に呉地区へ配備されますが、2025年度に竣工予定の小型級船舶2隻が引き渡されたのち部隊の改編を行い、海自阪神基地へ「にほんばれ」をはじめとした小型級船舶3隻が移る見込みです。
Large 241114 nihonbare 02
2024年10月29日、内海造船瀬戸田工場で命名・進水した新型輸送艦「にほんばれ」(深水千翔撮影)。
吾妻2佐は「今決まっているのは船の種類ごとに海上輸送隊(仮称)を編成することだ」と話します。
自衛隊海上輸送群の隷下に、中型級船舶を運用する海上輸送隊と小型級船舶を運用する海上輸送隊の2コ海上輸送隊を新編。部隊名に関しては第1海上輸送隊、第2海上輸送隊のような形になると思われます。
部隊規模は自衛隊海上輸送群の司令部に10人、輸送隊の本部に各10人ずつ配置されるため、輸送艦が4隻になる2025年度末には160人規模へと拡充される予定です。陸海空共同の部隊であることから職種部隊としての規定はなく、幅広い職種から要員を確保・育成していますが、陸上自衛官は輸送科が主体に配置される模様です。
なお、小型級船舶では接岸できない小島嶼への輸送を担う輸送艇(機動舟艇)4隻の取得が2027年末までに計画されているため、最終的な自衛隊海上輸送群の規模は輸送艦6隻(LSV2隻、LCU4隻)、輸送艇4隻の計10隻まで拡大する予定です。
すでに機動舟艇3隻は2024年度の予算で建造が決定しており、2025年度の概算要求では中型級船舶1隻(80億円)、小型級船舶1隻(64億円)、機動舟艇1隻(58億円)の取得費用が計上されています。
Large 241114 nihonbare 03
2024年10月29日、内海造船瀬戸田工場で命名・進水した新型輸送艦「にほんばれ」(深水千翔撮影)。
なお、「にほんばれ」などに乗艦する陸上自衛官の育成は2019年から始まっており、それぞれ所定の課程を経た後、運航要員は広島県江田島市の第1術科学校、機関要員は神奈川県横須賀市の第2術科学校に入校し教育を受けています。また現在では、海自のおおすみ型輸送艦に乗り組み、操艦や見張り、ディーゼル機関の運転・整備といった勤務に従事中です。
島嶼防衛に万全を期すためには、全国各地から島へ陸海空各自衛隊の部隊や装備品を継続的に輸送することが必須でしょう。この中で航空機の輸送に適さない重装備や、一度に大量の物資を輸送できる海上輸送能力の強化が求められており、その観点から海自の輸送艦やPFI 船舶を含む民間船舶に加えて、自衛隊海上輸送群に配備される輸送艦が活用されていく模様です。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする