去年に続き、全国的にサケの不漁が心配される中、新潟県村上市にサケの増殖・加工・販売を一手に担う施設が完成した。おととしの豪雨で受けた被害からも立ち上がり、今年の大漁を祈願している。
去年11月、村上市にあるサケの博物館「イヨボヤ会館」がSNSに投稿し、話題となった投稿がある。『すみません!ただ今サケが一匹もおりません!」サケの不漁から、サケの博物館にも関わらず展示用のサケが調達できない事態に陥っていたのだ。今年はどうだろうか…10月、再び「イヨボヤ会館」を訪ねてみると、水槽には…2匹のサケが泳いでいた。「イヨボヤ会館」の奥村芳人館長は、「サケは今朝入ったばかり。夏の猛暑によって海水温が下がらない状態が続いていて、時期も遅いしかなり少ないと思う」と、去年に続く不漁を心配していた。
こうした中、今年の豊漁に大きな期待を寄せる場所がある。サケが遡上する村上市三面川沿いに新設された、サケの「増殖加工販売施設」だ。屋根はモザイク板でグラデーションされたデザインとなっていて、三面川を遡上するサケをイメージしている。おととし8月の県北豪雨で、水害に見舞われた村上市。かねてから三面川沿いでは、水害に備えて県道を高くする工事が計画されていたが、県北豪雨を受けて工事が早められた。それにより、「増殖加工販売施設」も、すぐ近くに移転・新設されることになった。
三面川で捕れたサケの採卵・加工を行うのに加え、直売所も兼ねている新施設。さらに期待されるのは、観光スポットとしての役割だ。2階テラスからは三面川を一望できるほか、塩引きザケを加工するためにサケを干すスペースを一般に公開。約300匹のサケが干せるとあって、その光景は見所の一つとなりそうだ。
「今年に掛ける思いはいっぱいある」と意気込むのは、三面川鮭産漁業協同組合の平田茂伸副組合長だ。三面川では、川を遡上してきたサケを捕らえる「ウライ」と呼ばれる施設の半分ほどが、県北豪雨で被災。例年、2万匹ほど捕れるサケは、去年、施設が壊れた上に夏の猛暑が影響したことで、わずか3500匹に減少してしまった。平田副組合長は、「今年はウライが全面改修され、川幅いっぱいの180メートル、本来の長さで漁ができる」と気合い十分だ。捕獲施設も、加工・販売施設も新しくなり、万全の体制で迎えるサケ漁の季節。平田副組合長は、「ダブルで良いことが重なったが、サケが上がってこなければこの施設も活躍しない」と、今年の豊漁を心から祈っている。三面川のサケ漁は、10月21日から12月15日まで。新しい施設での加工品などの販売も10月21日に始まる。三面のサケ文化に新たな風が吹きそうだ。