北陸の冬 ラニーニャか平常年かは50対50 北極振動 海水温やJPCZの動向が鍵

北陸の冬 ラニーニャか平常年かは50対50 北極振動 海水温…の画像はこちら >>
今冬は、ラニーニャ現象の特徴が現れつつあるものの、発生には至らない可能性も出ています。12月~2025年4月の期間では、ラニーニャ現象が発生する確率と平常の状態が続く確率はともに50%と予想されています。ラニーニャ現象下の冬は、寒冬多雪の傾向があるとされていますが、あくまでも一般論。顕著な例外もあるのです。地球温暖化により、日本海の海面水温は気温以上に上昇傾向となっています。今冬もシーズン始めから大雪の可能性もあるものとして、ラニーニャ現象発生の有無にかかわらず大雪への備えを万全にして下さい。
気象台の3か月(11月~翌1月)予報

22日に新潟地方気象台から発表された3か月予報のポイントは、①11月は、寒気の影響が弱く、3か月では平均気温は平年並みか高い。②冬型の気圧配置が強まる時期があり、3か月の降水量は平年並みか多い。の2点です。12月から急に季節が進み冬らしい冬となりそうです。師走に入ると気温は急降下、冬型の気圧配置が強まると、平地でも降雪や積雪となることもありそうです。冬支度は早めに計画的に行うようにしましょう。
ラニーニャ現象下 平均すれば寒冬多雪傾向となるも 顕著な例外も

それでは、ラニーニャ現象発生時の北陸地方への影響を過去の実況から確認しましょう。北陸4地点の福井・金沢・富山・高田の冬(12月~翌2月)の平均気温や合計降雪量の実況を、1952年度~2023年度までの約70年分に関して、エルニーニョ現象発生年、平常年、ラニーニャ現象発生年のカテゴリー毎に分類し、それぞれの平均気温と平均降雪量を計算しました。まず、気温に関して、グレーの折れ線グラフで示す富山の期間平均気温を見てみましょう。エルニーニョ年が4.0度、平常年が3.6度、ラニーニャ年が3.3度となり、ラニーニャ年が最も低くなっています。その他の福井・金沢・高田も同様にラニーニャ年が最も低くなっています。次に、降雪量に関して、青色の棒グラフで示す福井を例にとると、期間平均の合計降雪量は、エルニーニョ年が177cm、平常年が215cm、ラニーニャ年が250cmとなり、ラニーニャ年が最も多くなっています。その他の、金沢・富山・高田に関しても同様の傾向で、ラニーニャ年は、平均降雪量は最も多くなっています。以上より、4地点ともに、ラニーニャ現象発生年は、平均気温は低く、降雪量は多く、平均すれば寒冬多雪傾向になりやすいとは言えそうです。
顕著な例外をもたらす予測が難しい北極振動

但し、どんなものにも例外は付き物です。エルニーニョ現象やラニーニャ現象とは別に、北半球の冬の天候を大きく左右する一因として、北極振動があります。これには、日本への影響という観点で平たく言えば、北極圏からの寒気が日本に流れ込みにくく、日本は高温傾向になりやすい「正の北極振動」と、北極圏からの寒気放出パターンとなり寒気が日本に流れ込みやすく低温傾向になりやすい「負の北極振動」があります。1976年度は、エルニーニョ現象下となっていましたが、期間平均気温は平年よりかなり低く、期間降雪量は平年よりかなり多くなりました。負の北極振動が強化されたことが、寒冬多雪をもたらす一因となった可能性があります。冬の期間(12~翌2月)の降雪量の多いランキングを見ると、北陸4市のいずれもトップ5に入る大雪となり、富山では歴代2位となる、724センチもの期間降雪量を観測しました。一方、1988年度は、ラニーニャ現象下となっていましたが、期間平均気温は平年より高く、期間降雪量は平年よりかなり少なくなりました。正の北極振動が強化されたことが、暖冬少雪をもたらす一因となった可能性があります。冬の期間の降雪量を前項と同様にして見ると、北陸4市はいずれも少ない方からトップ5に入り、金沢では歴代3位の少なさとなる、53センチの期間降雪量にとどまりました。この他、記録的な豪雪として後世に語り継がれている1980年度(56豪雪)は、福井・富山で歴代1位、1962年度(38豪雪)は金沢で歴代2位の降雪量を観測していますが、これらは、エルニーニョ現象やラニーニャ現象も発生していないまさかの「平常年」だったのです。
シーズン最初の短時間強雪 局地的な大雪に注意・警戒

「気温が平年より高いのに降雪量も平年より多い」。一見矛盾するかのような文言ですが、これは、昨冬2023年の12月の北陸平均の実況です。2023年は、クリスマス前の12月17日~23日頃にかけて寒波が襲来、北陸上空には1週間にわたり強い寒気が居座りました。期間中の最深積雪は、福井で38センチ、金沢で39センチ、富山で47センチ、新潟で42センチを観測、平地でも各地でまとまった降雪となりました。また、22日には北陸西部の福井・石川・富山の3県で「顕著な大雪に関する気象情報」が相次いで発表され、輪島では24時間の降雪量が53センチと12月の観測史上1位を更新する短時間強雪となりました。グラフは、5日毎の降雪量平年比(水色の棒グラフ)と平均気温平年差(緑の折れ線)の実況を示したものです。平均気温は、上旬から中旬を中心に4度以上とかなり高い期間があり、1月でも平年より高い階級となりました。一方、降雪量は、寒波が襲来した12月17日以降に急増し、12/21~25の5日間では1000%を超える大雪となりました。この影響で、降雪量も12月の1か月としては平年より多くなったのです。初冬期に海面水温が相対的に高い中、冬型の気圧配置が強まり、強い寒気が南下すると、活発な上昇気流が発生、雪雲が急激に発達することが予想されます。シーズン最初の12月から局地的な短時間強雪には注意・警戒が必要です。
降雪量を決めるもう一つの重要なファクター JPCZの動向にも注目

大陸からの冷たい風は、朝鮮半島の付け根付近に位置する長白山脈で二分されます。その後は、風下側の日本海上で再合流、日本海からの大量の水蒸気を含んだ気流は行き場を失い激しい上昇気流をおこします。ここで形成される発達した帯状の雪雲を「日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)」と呼びます。JPCZが北陸地方のどこを指向するかは、直前まで見極めが必要となります。西まわりの西よりの風と北まわりの北よりの風とのせめぎあいで強雪の予想される地域が刻一刻と変わるためです。降雪は強い寒気と降水の産物。強い寒気があっても降雪のもととなる降水域が該当エリアにあまりかからなければ、降雪量は多くはなりません。その一方、強烈な寒気ではなくても、JPCZを中心とした、風の挙動によっては、強雪エリアがかかり続ければ、平野部でも短時間のドカ雪となる可能性もあります。「強い寒気必ずしも大雪とはならず」であり、「そこそこの寒気とJPCZの合わせ技でも大雪にはなる」ということもあるのです。現実には、どこでどのくらいの降雪量になるかは、季節予報の段階では分からず直前まで見極めをしなければなりません。今冬も、12月のシーズン初めから短時間強雪の可能性もあるものとして、雪への備えは早めに計画的に進めるようにして下さい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする