[社説][2024 衆院選]基地・安保政策 国政の場に沖縄の声を

米軍統治下の沖縄で、戦後最初の国政参加選挙が行われたのは1970年11月、主席公選(知事に当たる行政主席を選ぶ選挙)が実現したのは68年11月のことである。
それまで県民は衆院選で代表を国会に送ることも、主席を選挙で選ぶこともできなかった。米軍統治下の沖縄に憲法は適用されていなかった。
沖縄に集中する米軍基地は、そのような植民地的状況の下で形成されたものである。
施政権が返還されてから今年で52年になるというのに、国土面積の0・6%しかない沖縄県に今なお、米軍専用施設の約7割が集中する。
基地・安保政策は復帰以来、国政選挙や県知事選の最も重要な争点であり続けてきた。
生活への影響が深刻で、事件・事故によってしばしば人権が脅かされてきたからだ。
だが、ここに来て政府の基地・安保政策に、これまでにない大きな変化が見られるようになった。
日米の軍事一体化、県内離島のミサイル基地化、日米共同訓練の活発化、弾薬庫の共同使用、新基地建設のための代執行による大浦湾埋め立てなど社会の軍事化が急速に進んでいる。
米軍統治下の冷戦時代と異なるのは、沖縄の戦場化が想定され、住民や観光客の離島からの避難計画まで作られていることだ。
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この変化をどう見るか。どうすれば戦争を防ぎ、負担軽減を実現することができるのか。それが基地・安保政策の争点である。
例えば辺野古の新基地建設問題。認めるか認めないかの違いだけでなく、候補者は南部激戦地の土砂使用を認めるかどうかも、選挙戦で明らかにすべきである。
大浦湾の軟弱地盤の埋め立てには途方もない時間と経費がかかる。それをどう判断するか。
新基地が完成するまでの十数年間、米軍普天間飛行場の危険性除去をどのように実現するのか。
地位協定の改定問題も争点として浮上している。 県が要請してきた見直しと石破茂首相が強調する改定は、かなり内容が異なる。いかなる地位協定改定を目指すのか、候補者にはそれを語ってもらいたい。
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岡本喜八監督の映画「激動の昭和史 沖縄決戦」に、第9師団の沖縄からの転出を巡って、作戦部長の宮崎周一中将が発した印象的な言葉がある。
「沖縄は本土のためにある。それを忘れるな」
戦史研究家で編集者でもあった半藤一利さんは、生前、全国紙のインタビューに答え、沖縄に米軍基地の重い負担を背負わせても仕方がないと考える「防波堤」の発想が今もある、と指摘した。
どのような声を「沖縄の声」として国政に届けるべきか。それを判断するのは有権者である。

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