[社説]県内に米軍無人艇 強引な運用許されない

米海兵隊が来週にも、無人艇(ALPV)1隻を県内に展開する。
国内での無人艇運用は初。沖縄防衛局が4日、那覇軍港を拠点にレッドビーチ(金武町)、ホワイトビーチ(うるま市)、伊江島補助飛行場の西海岸区域なども活用して来年8月まで試験運用する計画を県に伝えた。
台湾有事を念頭に、海兵隊は小規模部隊を県内離島やグアムなどの島しょ部に分散させる「遠征前方基地作戦(EABO)」を掲げている。その後方支援活動として無人艇による物資補給などを想定しているという。
ALPVは全長約19メートル、幅2・5メートル、基準排水量約8・3トン。開発途中であり、米国でもまだ本格運用されていない軍用艇だ。
そうした無人艇の試験運用を、なぜ米国本国でもなく、日本本土でもなく、沖縄で実施しなければならないのか。
本島や周辺離島に点在する軍港を利用するとなれば、訓練水域外も航行することになる。漁船や定期船、観光船などの安全性が脅かされる恐れがある。
海兵隊は、無人艇の活動時には有人のボートが随伴し、通信が途絶した場合は自動的にエンジンが停止する措置などを講じるとするが懸念材料は多い。
航行計画などは示されておらず、肝心な点は不明である。
運用の直前になって県に一方的に説明するやり方は、あまりに安易で強引だ。到底納得できない。
■ ■
県内では広大な米軍訓練水域が設定され、日頃から民間航行が制限されている。無人艇の活動でこうした制限が拡大すれば、経済活動へ影響する可能性もある。
乗組員が不要で建造費が節約できる無人艇は近年、世界で軍事利用が広がっている。
海兵隊は今回一時展開する無人艇について「非武装」とするが、紛争が広がる中東では武装勢力が自爆型無人艇で原油タンカーを攻撃する事態も起きている。
米軍は海洋進出を強める中国軍への対抗としてこの間、無人艇の開発を加速させてきた。
兵士不足も解消されるとし、2030年代半ばには米艦隊の3分の1が無人艇になる、との見方もある。
配備計画について米軍は「検討中」とするものの、約11カ月に及ぶ試験運用が県内配備を前提としたものであることは明らかだ。
■ ■
12月からは在沖海兵隊のグアム移転が始まる。28年までに約4千人が移される予定だ。県外移転も含め計9千人の再編・移転計画がようやく動き出したのである。
しかし、その一方で無人艇が配備されるようなことがあれば、新たな負担となることは間違いない。
県内ではすでに嘉手納基地などに海兵隊や空軍の無人偵察機「MQ9」が配備されている。
基地負担の軽減に逆行するような運用・配備は認められない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする