【安藤優子の本音】 「申してきたこと」を翻す石破さんは残念

「納得と共感の内閣」か…。何度考えても石破茂新首相による解散・総選挙の大義が分からないのです。というか、納得ができないのです。石破さんが会見で「大義」としたのは「新しい内閣ができたから」。それを国民に審判してもらうのは当然だという理屈でした。まだ仕事もしていないのに、どうやって「審判」したらいいのか。これは国民へのかなりの「むちゃぶり」に思えます。
石破さんが党内野党のような立場でいらしたとき、ご自身のブログで「時の内閣の基盤を安定させるために行うといった発想は取るべきものではありません」と、「首相の専権事項ではあるが」とした上で解散についてこのようにクギを刺されているのです。そしてさらに踏み込んで、どの政権の為政者も権力を恣意(しい)的に行使してはいけないとまでつづっていました(2023年3月31日のブログより)。
たぶん内心ではこう思われていることは確かでしょうが(そう思いたいのですが)、党内をまとめていくためには一気呵成(かせい)に選挙をして勝たないとダメだという、自民党の党内戦略に乗らざるを得ない状況なのでしょう。でもそれで石破さんの「真心と勇気」の政権運営への気概が、果たして国民に通じるのでしょうか。
石破さんは、時の政権の政策に反対することも辞さないという、物申す存在でした。それゆえに「評論家」などと揶揄(やゆ)されてきたのです。でもその「物申すだけの政治家」が総裁になり、首相になったのですから「物申してきたことを実行する」絶好のチャンスなはずです。
おかしいことはおかしいと言ってくれる石破さんのはずが、さっそく「申してきたこと」を翻すのは、どう考えても納得いかないのです。今さらそんなことを言っても遅いかもしれませんが、ここは「勇気」の見せどころだったのに、残念です。(キャスター)

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