[社説]宿泊税「定率制」へ 使途の明確化不可欠だ

県が2026年度に導入を目指す観光目的税(宿泊税)を巡り、難航していた議論がようやく動き出した。
有識者や観光団体、自治体などが参加する第2回検討委員会が開かれ、宿泊料金の一定割合を納める「定率制」の採用で一致した。
課税方式について県は当初、宿泊料金1人1泊2万円未満は200円、2万円以上なら500円とする「定額制」の方針を示していた。
19年に開かれた検討委の提言に基づく形で制度設計案を取りまとめたものの、独自で宿泊税導入を予定する5市町村と観光団体がそれぞれ2~3%の定率制を主張し平行線だった。
物価上昇で宿泊費が値上がりする中、税収増への期待や税負担の公平性を担保することなどが背景にある。一方、県は高額宿泊者の税負担が過重となるなどとして慎重な姿勢を取っていた。今回、税額に上限額を設定することで折り合いをつけた形だ。
県と市町村の課税方式が異なれば徴収する宿泊業者の負担が大きくなるほか、宿泊客の混乱も招きかねない。この点で一致を見たことは一定の前進と言える。
定率制が導入されれば都道府県では初めてとなる。
ただ、税率や市町村との配分の在り方など課題は山積している。
出張をはじめ仕事での長期滞在や帰省など観光以外の宿泊客は、課税による受益をほとんど受けない可能性もある。減免措置や低額の宿泊を対象外とする検討も必要だ。
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県は税の使い道についてサンゴ礁の保全再生活動や観光施設の多言語化などを挙げる。市町村への調査を基にそれぞれに必要な額を需要額として積算。県分と合わせ総額78億円と見込んできた。
それが今回、県分を約30億円積み増し約108億円とした。県は増額分について観光ガイド研修への支援などを挙げるが、税の使途に関わる内容であり、より明確な説明が必要だ。
税の配分を巡っても溝がある。県は市町村との配分割合を「1対1」とする案を提示するが、本部、恩納、北谷、宮古島、石垣の5市町村は「1対3」として市町村分を多くするよう求めている。
宿泊税は市町村にとっても貴重な独自財源だ。県は減免なしで定率3%の課税を導入すれば、最大116・8億円の税収が見込まれると試算する。使途の透明性を確保する仕組み作りも重要になろう。
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何より観光客をはじめ徴税対象となる宿泊客の納得が欠かせない。税金がどこにどういう目的で使われているのか。導入後は目に見える形で還元することも重要だ。
コロナ禍では「県民割」で観光需要を喚起してきたことを考えれば、県民負担の軽減策の検討も必要ではないか。
観光振興を目的とした新たな財源を確保する制度だ。より丁寧な説明と合意形成が求められる。

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