[社説]自民新総裁に石破氏 地位協定の改定進めよ

自民党の新総裁に石破茂元幹事長が決まった。10月1日召集の臨時国会で首相に就く。
総裁選は5度目の挑戦だった。過去最多の9人が立候補し、上位2人による決選投票で高市早苗経済安全保障担当相を破った。
世論調査で人気が高く、次期衆院選での集票や論戦力が期待されての選出とみられる。派閥解消の流れによって派閥の影響力が低下したことも有利に働いた。
「防衛政策通」として知られ、防衛庁長官や防衛相を歴任した。自民党幹事長として、名護市辺野古の新基地建設を進めるなど、沖縄との関係も深い。
17日に那覇市で開かれた地方演説会では、日米地位協定について「運用の改善で事が済むとは思わない。見直しに着手する」と踏み込んだ。総裁選後の記者会見でも改定に取り組む考えを改めて示した。
米軍の法的な特権を認める日米地位協定は、事件・事故が起きても日本側が全面的に捜査や調査できないなど、不平等さの元凶となっている。県が長年、改定を要求しているが、政府は運用改善でかわしてきた。 石破氏には言葉通り、約束を確実に実現してほしい。
「米軍基地を自衛隊と共同管理する」考えも示している。
県内では事件や事故、環境汚染などが起こるたび、米軍基地に立ち入りできないことが問題になってきた。基地の共同管理が、国内法適用など、こうした問題の解決につながるのか。慎重に見極めたい。
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石破氏といえば県民には忘れられない光景がある。
幹事長だった2013年、米軍普天間飛行場の県外移設を訴えていた自民党の県関係国会議員5人と会談し「辺野古容認」に方針転換させた。うなだれる議員を横に座らせ会見する姿は「平成の琉球処分」と呼ばれ、批判を浴びた。
演説会で石破氏は「十分に沖縄の理解を得て決めたかというと必ずしもそうではなかった」と振り返った。
県民投票で7割が反対した新基地建設を進めるなど政府はこれまで県民の民意をないがしろにしてきた。
地位協定改定や共同管理が実現すれば沖縄の基地対応では大きな変化になる。県と対話しながら丁寧に進めてもらいたい。
県民が求めているのは目に見える形での負担軽減だ。
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早い時期の衆院解散・総選挙が取り沙汰されている。「ご祝儀相場」のうちにとの狙いが透けるが、石破氏は衆院解散前の国会論戦の必要性に言及していた。
派閥裏金事件をはじめとする「政治とカネ」の問題や旧統一教会との関係などをうやむやにすることは許されない。
地震後の豪雨被害に苦しむ能登半島の復旧へ向けた対応にも早急に取り組む必要がある。
立憲民主党の新代表も決まったばかりだ。解散前に党首討論や予算委員会を開くなど、論戦に応じ有権者に判断材料を示すべきだ。

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