全国の喧嘩自慢らが集まる人気の格闘技イベント「BreakingDown(ブレイキングダウン)」元代表の「YUGO」こと板垣雄吾容疑者らが、スマートフォンの売買事業に投資すれば利益を得られるとうそをつき、出資金計約6億3千万円をだまし取ったとして詐欺の疑いで逮捕された。逮捕したのは警視庁暴力団対策課で、改めて「BreakingDownと反社」の関係の有無がクローズアップされる事態になっている。
捜査関係者によると、板垣容疑者、会社役員・田丸隼也容疑者、会社員・堀川美貴容疑者の男女3人が共謀し、スマホを安く仕入れて海外の会社に高値で売るという架空の事業で会社役員らから出資金を搾取した疑いがある。警視庁は2022年に会社役員2人から計約5億5千万円をだまし取ったとして3人を逮捕し、同年に別の会社役員から約8千万円を詐取したとして3人を再逮捕した。
板垣容疑者が社長を務める携帯電話販売会社が2020年~2022年に高級車メーカー「フェラーリ」とスポンサー契約を締結していたことから、「スマホをフェラーリに高値で売る」などとかたっていたという。3人は少なくとも120人から計約80億円の金を集めていたとみられ、一部は返金されているものの、警視庁が被害額の確認を進めている。
板垣容疑者は「BreakingDown」の創設メンバーの一人で代表を務め、格闘家としてもバン仲村との対決で話題を集めた。昨年2月に代表取締役社長を退任し、大会の発案者でスペシャルアドバイザーだった格闘家の朝倉未来が後任として就任。板垣容疑者は役員として海外事業を担当していたが、同年7月に役員からも外れていた。
昨年2月には一部週刊誌メディアで、板垣容疑者の会社が複数の訴訟トラブルを抱えているとして「『損害額は10ケタ』転売ビジネスで契約者と大揉め」などと報じられており、ある意味で今回の逮捕はファンにとって驚きは少ない。
その一方、ファンや業界関係者にとって気がかりなのは、今回の事件は板垣容疑者が「BreakingDown」の代表を務めていた時期に起きた可能性があり、なおかつ逮捕に動いたのが「警視庁暴力団対策課」だったことだ。
「BreakingDown」は、昨年5月に元警察官僚や弁護士、警察OBらで構成された「反社対策アドバイザリーボード」を発足させ、反社会的勢力を排除したクリーンな団体を目指すと宣言。しかし、今月上旬に「BreakingDown」のCOO(最高執行責任者)である溝口勇児氏や人気選手と暴力団関係者が一緒に撮影したとされる写真が「反社対策どころかただの密接交際」などとして拡散された。
この写真については、溝口氏が「記念撮影を求められたので、会場に足を運んでくださったお客様の一人として対応した」と釈明し、同団体は「(反社とされる人物は)関係者入場口から無断で会場内に侵入した」と説明。今後は関係者のコンプライアンスチェックや受付での本人確認等をより厳重にするとして騒動は沈静化したはずだった。
だが、元代表が「代表就任中に起こした可能性がある事件で暴力団対策課に逮捕された」となると、どうしても世間の目は厳しくなってしまう。ただでさえ、「BreakingDown」は傷害や恐喝などでの出場選手の逮捕が相次いでイメージが悪化していただけに、追い打ちとなる恐れもありそうだ。
団体側は公式SNSで「(役員退任後の)板垣氏は当社の経営や事業運営に関与しておりません。当社は、現在も一切の資本関係や業務提携を板垣氏と保持しておらず、当社の経営や事業活動に板垣氏の影響はございません」とした上で、「板垣雄吾氏の逮捕報道につきましては、当社としても非常に遺憾であります」とする声明を出した。しかし、これだけで世間の印象を覆すのは難しく、よりクリーンな団体運営をアピールしていく必要がありそうだ。