[社説]辺野古 膨らむ工費 財政面も破綻は明らか

名護市辺野古の新基地建設の工費が膨張の一途をたどっている。
沖縄防衛局が2023年度に発注した大浦湾側の護岸工事4件で変更契約が行われ、契約額が当初の計641億円から約170億円増の計811億円となっていたことが明らかになった。約1・26倍に当たる。
変更があったのは埋め立て地の外周4工事。このうち軟弱地盤の難工事を伴うC1護岸は、当初の261億円から約1・45倍の379億円に増額された。
国土交通省は通達により変更契約による増額幅を「3割まで」と定めている。予算の野放図な増額を食い止めるためで、それを超える場合は原則として別途契約しなければならない。
新基地建設ではルール違反が常態化しているのではないか。コストを抑え効率的な公共事業を実現する一般競争入札制度をゆがめかねない。
4工事のうち1件は先月着工された。一方、未着工の3件を含めいずれも3月下旬に変更が行われたことにも疑問符が付く。
通常、変更契約は着工後に当初想定よりも費用がかかることが判明した場合などに行われる。着工前の変更は異例のことだ。
木原稔防衛相は「準備段階で作業追加が判明した」とし、事例の一つとして台風対策を挙げている。
しかし、170億円もの増額の説明としてはあまりにも不十分と言わざるを得ない。
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新基地建設を巡ってはこれまでも変更契約が繰り返されてきた。
2014年度から19年1月末までの変更は58件に上り、契約額は当初より総額288億円増えた。
変更契約では発注者と業者が直接交渉する。そのため外部から見えにくく、多額の税金が何にどのくらい使われるのか判然としないことが多い。公共事業に必要な透明性が保てているとは言えない。
そもそも新基地の総工費は当初3500億円以上と見積もられていた。
防衛省は19年、軟弱地盤の改良工事などで再試算し約9300億円と大幅に引き上げた経緯がある。
ただ、その57%に当たる約5319億円がすでに支出済みだ。埋め立て面積全体の4分の3を占める大浦湾側は着工したばかり。それにもかかわらず、すでに半分以上を使ったことになる。
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県は国の承認願書に基づき、総事業費は最大で約2兆5500億円に上ると試算。建設工事費の上昇を踏まえると、さらに膨れ上がると見込む。
新基地は供用開始まで12年以上かかるとされる。米軍普天間飛行場を移設し、危険性除去を早期に図るという観点から計画は破綻していると言わざるを得ない。相次ぐ変更契約で予算面の失敗も明らかだ。
県民の反対が根強い計画に湯水のように税金を使うことが許されるのか。
国民の理解は得られるのか。国会でも正面から議論すべきだ。

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