UCCから「ハワイコナコーヒー」限定発売 – 1袋5,000円超のコーヒーはどんな味? 危惧される”コーヒーの2050年問題”との関係性とは

UCC 上島珈琲は9月18日、希少なハワイコナコーヒー「UCC 直営農園 ハワイコナ アナエロビコ(豆) 100g」(5,600円)をUCC 公式オンラインストアで発売しました。

1袋(100g)5,000円超えの希少なコーヒーはどんな味なのか? UCC直営農園とはどのような場所なのか? 発売同日に開催された「UCCハワイコナコーヒー直営農園」メディアブリーフィングにて明かされた詳細をレポートしていきます。

○■希少なハワイコナコーヒー、発酵工程を経ることでより味わい豊かに

今回発売された「UCC 直営農園 ハワイコナ アナエロビコ」は、同社が1989年に開設したハワイの直営農園で栽培されたコーヒー豆を、精製過程に発酵プロセスを加えることで豊かな風味に仕上げたというハワイコナコーヒーです。直営農園で収穫されたコーヒーは収穫量が限られ、農園売店や現地ECでの販売がメインだったそうで、公式オンラインでの発売は初の試みだといいます。

ハワイのコナ地区で栽培するコーヒーは、現地の気候が生み出すフルーティーな酸味や甘味が味わいの魅力です。1袋(100g)5,600円という高価格ですが、生産量が少なく希少であることや、他の生産国に比べ土地代や人件費がかかることで価格は高騰し、一般に流通しているコーヒーの価格でみると世界一高値(!)といっても過言ではそう。その高値さ故、他品種とブレンドして販売されているものも少なくない中「UCC直営農園 ハワイコナ アナエロビコ」は100%なのでハワイコナコーヒーを存分に堪能できます。

さらに本商品は、収穫したコーヒー豆を精製(コーヒーの実の外側の部分を取り除き、焙煎前の生豆と呼ばれる状態にすること)する際、”アナエロビコ”と呼ばれる発酵の工程を経ることで、スパイスの香りや丸みのある柔らかな酸味を愉しめる豊かな味わいを実現。温度や湿度管理、熟成時間の管理が求められる発酵工程は手作業で行われているということからも、とても手の込んだ貴重なコーヒーであることがわかります。

販売はUCC公式オンラインストアのみで数量限定、商品はUCC ハワイのロゴがデザインされたオリジナルのジュートバッグに入れて届けられます。
○■UCCがハワイで直営農園を続ける理由

本品のコーヒー豆が栽培された「UCC ハワイコナコーヒー直営農園」は、ハワイ島西部のコナ地区にそびえ立つフアラライ山の裾野、標高460m付近に位置します。

農園では主にハワイの伝統品種でもあるティピカ品種を栽培していますが、病虫害に弱い品種な上、1本の木になる実の量も改良品種と比較すると多いとは言えず生産効率は高くありません。そのような状況の中、同社がこの農園の経営を続けるのはなぜなのか? 話を聞くと、コーヒーを取り巻く課題として近年危惧されている、”コーヒーの2050年問題”との関係性が見えてきました。
このままでは30年後、コーヒーが飲めなくなってしまう?
“コーヒーの2050年問題”とは、2050年には今までのようにコーヒーが飲めなくなるかもしれない、という予測を表した言葉です。その主な要因は「気候変動」と「コーヒー農家の脆弱性」にあると、UCCジャパン サスティナビリティ経営推進本部 EC推進室の小坂朋代氏は解説します。

日本においても今年の夏は連日の猛暑や線状降水帯といった異常気象に見舞われましたが、このまま気候変動が進行することで世界のコーヒーの生産適地は約半分に減少、さらに気温や湿度の上昇がコーヒーの病害虫を招き、コーヒーの生産性も低下します。一方で、世界のコーヒー生産者をみてみると、約80%が小規模農家。小規模農家は経済的な余裕がないケースが多く生産技術へのアクセスも脆弱、気候変動や価格変動の影響も受けやすく、将来的に生産性を維持できるのはわずか5%と言われているそうです。
○今ある生産地を守り、生産性を向上させることが重要

「生産地が減るならコーヒー農地を拡大すればいいのかというと、生物多様性の観点からその選択肢はありません。生物多様性の損失を止めながらコーヒーの生産性を上げるためには、今ある農地の保護、管理、再生、そして修復ということが必要になってくると私たちは考えています。そしてその上で重要になってくるのが直営農園なのです。我々は直営農園で実験的な農業を行いながら、そこで得られた知見や技術を農地に横展開していくことに取り組んでいます」(小坂氏)

長きに渡りコーヒーにこだわり向き合い続けた同社だからこそ取り組む、コーヒーの持続可能性向上に向けたアクションのひとつが「UCC ハワイコナコーヒー直営農園」であることがわかりました。
○直営農園では”サスティナブルな農業”を実験的にチャレンジ

同農園では、生産量向上に向けた木や土壌のリノベーションや、気候変動対策としての「シェード農法」(直射日光に弱い品種を守るためにシェードツリーを植え付ける方法)や「接木」(木の切断面に病虫害耐性のある接木苗を植え付ける方法)、さらには収穫したコーヒーチェリーの果肉除去工程で発生するチェリースキンなどを肥料に活用し再び土に戻すという循環型農園の取組みを行います。

そしてここで得られた知見を各農地に合う形で共有し、生産性の向上や運営コストの削減につなげているのです。
○UCCならではの強みを武器に農地との関係性を構築

年間の1/3を生産国で過ごしそれらの活動に従事しているUCC上島珈琲 農事調査室 室長の中平尚己氏は、「いくら有益な情報でも農地ではなかなか聞き受けられないケースが多い中、実際に直営農園で取り組んだ経験をベースにした情報として共有することで納得してもらいやすい」と実感を話します。

また、バリューチェーンで事業展開を行う同社ならではの強みとして、「コーヒーの生産サポートに留まらず栽培したコーヒー豆を購入・販売する部分まで担えること」があると述べました。「生産した豆を買って商品にすることで、ひとつの経済サイクルを作り上げられるので、生産地と信頼関係を築いて長くお付き合いができることが我々の強みだと思います」(中平氏)

イベントの最後に小坂氏は、「コーヒー消費国でコーヒーを愉しむ私たちが『このコーヒーはどこで栽培されたんだろう』『どのようなプロセスでどのような農家の方が作ったんだろう』『森林伐採されていない地域のものなのか』と思いを馳せることが、コーヒーの課題を解決するアクションではないかと考えています」と強調しました。

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