ハリス絶賛報道へのモヤモヤ感

植草一秀[経済評論家]

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米国の大統領選情勢が変わり、全体の支持率ではハリスがトランプを上回っている。6月27日のバイデンVSトランプテレビ討論から2ヵ月半しか経っていない。バイデンの高齢不安が鮮明になり、「もしトラ」は「ほぼトラ」に転換した。ハリス絶賛報道へのモヤモヤ感の画像はこちら >>そのトランプが7月13日に暗殺されかけた。狙撃の直前にトランプが顔を真右に振っていなければ、この日にトランプは死去していた。狙撃から生還したトランプは「神」と称された。

ところが、ここでバイデンが撤退を表明する。後継の大統領候補選出は難航すると見られたが、あっさりハリスに決まった。ハリスは民主党大統領指名レースに加わっていた。しかし、メディアはハリスを酷評。副大統領の3年間で何もできなかったと批評した。ところが、大統領候補指名が確実視されると手のひらを返した。理想の大統領候補として絶賛を始めた。

9月0日のテレビ討論でトランプは失敗した。有効なテレビ討論戦術構築に失敗した。トランプの準備不足も影響したと見られる。しかし、ハリスがテレビ討論の勝者になった、もう一つの大きな理由がある。それはABCがハリス支援の演出を施したこと。バイデン撤退以降、主要メディアが全面的にハリス支援の姿勢を貫く。ABCのテレビ討論仕切りは、この流れに沿っている。

2016年大統領選でメディアはクリントンを全面支援した。トランプが当選すればドルとNYダウは暴落すると決めつけた。現実にはトランプが勝利し、その後、米ドルとNYダウは暴騰した。

メディアにとってトランプは「招かざる客」である。私はトランプのすべてを支持するわけでないが、メディアがトランプ排除を一貫して貫いていることに強い関心を有する。現代社会、現代政治の構造を考察する際の最重要キーワードは「メディア」。メディアのミッションは「多数による専制」である。

メディアの本質は「巨大資本のツール」。人々をコントロール=洗脳する根源が「情報」。この「情報」を支配しているのが「メディア」である。人々が「メディア」を情報源とする以上、「洗脳」から解き放たれることはない。ごく限られた少数が、この構造に気付いている。

「反ジャーナリスト」の高橋清隆氏が新著を刊行される。タイトルは『メディア廃棄宣言』。副題は「テレビを捨て、新聞を解約し、ネットを切れば、人類廃止は止められる!!」。高橋清隆氏はこれまでに多くの著書を刊行され、自身のブログでも精力的な情報発信を続けられてきた。

本書は高橋氏の言論活動の集大成とも言える渾身の労作である。高橋氏が「反ジャーナリスト」の肩書を使用しているのは高橋氏のメディア観に基づく。高橋氏は、記者を含め「ジャーナリスト」は、記事を通して権力の片棒を担ぐことを生業とする人を指すとみなす。「メディア」そのものの本質が権力の「手段」であることを看破している。

高橋氏は本書を執筆した最も消極的な動機を、氏の見解、考察をいちいち説明するのが面倒であることにあると記述する。「メディア廃棄論」を説くと「無理だよ」と反論する者が必ず現れるから、一読すれば、それで事足りるものを用意し、ブツブツ言われたらこれを渡そうと思ったと書いている。

全360頁の大作だが、記述の巧みさと指摘の鋭さ、多彩極まる多くの貴重なエビデンスの提示によって、一気に読了してしまう読者が続出すると思われる。出版予定日は10月3日。日本の現実、そして、いま世界で進行している現実=知られざる真実を知る、あるいは考えるための全国民必読の書と言える。

一人でも多くの市民に読んでもらいたい良書である。

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