英国のとある博物館に、世界で1機とされる旧日本陸軍と海軍機が1機ずつと、特攻機「桜花」の3機が並んで展示されています。これらの機体はどうして英国に残っているのでしょうか。
第2次世界大戦で活躍し、敗戦で接収された日本の旧陸海軍機は多くが米国に残りますが、その他の国も所蔵しています。このうち、英国には世界で1機とされる激レア機が2種類も現存。それに加え、2024年現在は特攻機「桜花」を加えて3機が並んで展示されています。これらの機体はどうして英国に残っているのでしょうか。
世界で1機だけの「激レア旧日本陸海軍機たち」なぜココに? 意…の画像はこちら >> 旧日本陸軍の五式戦闘機(キ100)(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館)。
第2次世界大戦中に旧日本軍に使われ、敗戦により接収された航空機は調査のため多くが米国に運ばれました。もっともよく知られているのが、スミソニアン博物館などで展示されている「零式艦上戦闘機(ゼロ戦)」でしょう。
しかし、米国以外にも激レアの日本軍機を残している国があります。
英国では、旧陸軍の五式戦闘機一型「キ100-I」と、一〇〇式司令部偵察機三型甲「キ46-III甲」(以下、五式戦と一〇〇司偵)、そして旧海軍の特別攻撃機桜花一一型が残されているのです。なぜ英国にこれらがあるのでしょうか。
第2次世界大戦中、英国は連合国軍の中心として米国とともに日本や独・伊と戦い、当時南方とも呼ばれた東南アジア戦線で直接日本軍と戦闘を繰り広げました。
しかし、終戦後に進駐し日本の統治の中心を担ったのは米国でした。米国は太平洋戦線で多くの兵力を動員していたため、性能や技術力を調べるために接収した旧陸海軍機を、戦後、空母に載せて本国へ運ぶことも出来ました。
これに対して、英国に残る五式戦と一〇〇司偵は、終戦時に南方へ展開していたため、各々今のベトナム・ホーチミンとマレーシアで現地の英軍に接収されて本国へ運ばれたのです。そして、性能の調査などが行われた後に英国内の空軍基地に保管された末、修復・復元作業が行われました。特に五式戦については、1986年にエンジンの地上運転にも成功しています。
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英国空軍博物館の館内(加賀幸雄撮影)。
3機を所蔵する英国空軍博物館は、ロンドン館のほか、ロンドンから北西に約200km離れたコスフォード館もあります。3機は一時期、この2つの施設にバラけるような形で展示されていましたが、現在はロンドン館の第5ハンガーに集約されています。博物館によると2019年に展示の配置換えを行った結果ということです。
ただ、3機を一度に見ることができるようになった反面、配置の間隔は非常に窮屈になり、写真撮影のアングルは限られるようになりました。五式戦の左主車輪のタイヤゴムこそ劣化が目立ってもいますが、いずれもおおむね良好な保存状態に保たれているとみられます。
同じハンガーにはこのほか、英軍のランカスター重爆撃機やハリファックス重爆撃機、独軍のJu87スツーカ急降下爆撃など、同じ時代に現役だった英独米の機体も置かれています。各国の機体を見比べることで、それぞれの国がどのような考えで航空機設計へ臨んだのか想像が膨らみます。同時に、かつては敵だった機体が並ぶ姿に平和の大切さを感じることもできるでしょう。