県内の交通渋滞解消を目指し、9月の水曜と日曜に路線バスが無料で乗り放題となる県の「わった~バス利用促進乗車体験事業」が始まった。初日は利用者も多く、出だしは好調のようだ。
県民にバスの良さを知ってもらい、過度な自家用車の利用から適度なバス利用への転換を促進することが事業の目的だ。その結果、県内で慢性化する交通渋滞の解消につなげたいとの狙いがある。
車社会の沖縄。自動車の保有台数は右肩上がりで増えており、2022年は約120万台と、1985年の48万台の2・5倍。
渋滞に巻き込まれることで少しずつ奪われていく時間や経済的損失は、積み重なれば膨大なものだ。
沖縄総合事務局によると、県内の渋滞による損失は、年間約8144万時間、給与換算で約1455億円。県民1人当たりでみると約55時間、約9万8千円にも上る。
車線を増やしたり、新たな道路を開通したりしても劇的な渋滞緩和にはつながりにくい。一人一人が運転する時間を減らす工夫がなければ、根本的な解決は難しい。
国や県、企業が連携を密にしながら課題解決に向けた知恵を出し合い、議論を重ねていってほしい。
バス無料デーでは、県内450以上の商業施設や飲食店で使えるクーポンも配布されて喜ばれた。今回の新たな取り組みが公共交通を使う一つのきっかけとなり、利用者が少しでも増えることを期待したい。
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交通渋滞の緩和には、バスだけでなく、路面電車の導入やモノレール延伸など多方面からの施策が不可欠である。
那覇市では次世代型路面電車(LRT)導入に向けた議論が進む。県庁や県立病院など主要施設を結ぶ3路線で、2026年度にルートを決定、40年度をめどに運行開始を目指す。マイカー脱却に寄与し、県都・那覇での渋滞緩和が見込まれている。
昨年、開業20周年を迎えた沖縄都市モノレールは、電車のない沖縄での新たな公共交通としてすっかり定着した。通勤や通学時だけでなく観光客らの利用も多い。昨年8月に3両車両が導入され定員は1・5倍に増えたが、今後も利用者は増える見込みだ。
県は現在、普天間方面への延伸について、採算性を分析しながら可能性を探っている。人口の多い中南部で道路の混雑解消の助けとなるのは確実で、早期実現を目指してほしい。
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本島面積の約15%を占める広大な米軍基地の存在も、交通渋滞を引き起こす大きな要因の一つだ。
顕著なのは、市街地の真ん中に位置する普天間飛行場である。直線で行けばすぐの距離でも大きく迂回せざるを得ず、渋滞が発生しやすいのは当然だ。県民は不便を強いられている。
通勤通学や買い物など、日常生活で使う路線バスが通行できるよう、基地内道路の開放についての議論も俎上(そじょう)に載せる必要がある。